魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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合体獣戦士ジュウオウガー⑤

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 町民たちに拘束され、町長室まで連行された。
 アキセの異臭があまりにも放っていたので、体を洗わせてくれたようだ。
「悪いが、このままにしてくれ」
 長椅子に机を挟んでお互い向かい合うように座る40代くらいの男は町長だった。
 ジャンヌの隣にアキセも座っている。
 何気に座るな。
「知っていたんですね。魔女のこと」
 足を組んで、町長に睨みつける。
「はい。私たちも戸惑いました。ジュウオウガ―が現れたあの日、私の前に魔女様が現れました」
 ルシアか。
「魔女様は、見物だけしたいから町には何もしないと」
 趣味に堪能するためか。
「確かに魔女様からは手を出していません。このまま魔女様が力を与えてくださるのであれば、受け入れようと思います。この街を守れるのであれば、魔女の力であろうとも手段を選びません」
――名物にしようとするジジがよく言うわ。
「聖女は魔女を狩る者なのは、存じています。私たちの為なら尚更やめてください。あなた方は、魔女を倒した後何をしてくれますか。責任を取ってくれますか。本当に人の為に魔女を退治するなら、私たちから生きる手段を奪わないでほしい」
 町長は真剣な眼差しで見つめる。
「と言っていますけど」
アキセが言う。
 確かに町長の話も一理ある。魔女を狩った後は何もしない。とはいえ、責任を取れって言っても、この街は変わらないと思う。また聖女に頼るだけ。
「そうですね。あなたたちの意見を聞かずに行動したのは、見勝手でした」
「では・・・」
「一つ確認したいんですけど」
 町長の言葉を遮って質問する。
「そのカイジュウが現れる前からこの街は襲われていたんですか」
図星を突かれたようで町長は視線をそらす。
「ないはずです。日が当たるこの街は『呪い』の濃度は低い。魔族に誘惑にさせるものがない限り、襲われることはない。その目的があってわざわざこの地形に街を作られたと思いますけど」
「確かにカイジュウが現れるまで、この街の襲撃はありません・・・ですが、ジュウオウガ―がいれば、より安全に平和にこの街は暮らせます」
「そうですね。大人たちは楽に暮らせていいですね」
 子供にやらせておいて。
「でも、長くは続かないですよ」
 町長に断言していう。
「魔女はきまぐれよ。いつか飽きて、あのロボットと一緒に消えます。それにあんな派手に戦っていれば、いずれ噂が広まる。あのロボットを狙って国、いやそれ以上の勢力が現れる可能性も捨てきれません。それも視野に入れているのであれば、私からは何も言いません」
「それは・・・」
「そんな恐怖や不安の隣り合わせで暮らせるなら、私は魔女を退治せずにこの街から去ります」
 ジャンヌは立ち上がり、アキセもつられ、部屋の前まで歩く。
「後言っておきますけど」
 町長に振り返る。
「聖女は人の為に動いていません。秩序の為に魔女を狩っているだけです。人間の為の存在と思っているのは、あなたたちがそう見えただけでしょ」
 ジャンヌとアキセは町長室から出る。


 眠い。
ジャンヌとアキセは、外門に向かって歩いていた。
もうすぐ日が昇る。休むつもりが、徹夜になってしまった。
 もう魔女狩りする気が出ない。町長の思惑に呆れて。そちらの事情はこれ以上入りませんので、ご勝手にどうぞ。
「今回は仕事放棄か?」
 アキセが話かけてきた。
「仕事放棄じゃない。次の聖女が来るまで保留よ」
「仕事放棄と変わらないじゃないか」
 そういえば、今のところアキセは約束を破っていない。どこかで裏切るかと思っていたが。いやまだ油断はできない。
 それに背後から人が後をついている。
「つけられているな」
 街の外までの監視だろう。
「何よ。出るって言ったのに」
 襲って来ないとは思うが、今は機嫌が悪いから手加減ができない。殺しまでとはいかないけど、骨一本折るだけで済むかなと思った矢先だった。
「なんだあれ?」
 アキセの発言に思わず、アキセの視線の先を見る。
 小道から少年が顔を出す。必死に手を招いている。
 少年と目が合ってしまった。
 少年は、カバンから何かを取り出した。
 それは、見たことのない文字とジュウオウガ―が描いている本だった。ルシアが持っていたものとは少し違っていたが、間違いなく同じものだろう。
 なぜ少年が持っている。1冊だけじゃなかったのか。
 少年は本をカバンに入れ、小道の中に入る。
 後を追いかける。
「たく」
 アキセも走ってくる。
 小道に入っても少年が逃げることなく、立ち止まっていた。
「あなた、どうして・・・」
 後からアキセが追い付いてきた。
「おっと!」
 アキセは、指飾りを召喚し、瞬時に記号を描く。記号は光り、魔術を発動する。
 その時、人影が通り過ぎた。おそらく後をつけてきた者だろう。
「人避けの術だ。急に走って止まるなよ」
「で、君はどうしてその本を持っているの?」
 アキセを無視して少年に視線を向ける。
「あの~聖女様ですよね」
 聞くよりも先に少年が口を出す。
「だったら?」
「僕は、エドです。ジュウオウガ―のパイロットの1人です。この本を燃やしてください」
 
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