魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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温泉街④

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 宿の裏口から飛び出し、扉を思いっきり閉める。
「やばい、あいつだけは・・・」
 必死に逃げたため、息が乱れる。
 いつの間にかレオンは逃げている。もしかしたら、ジャンヌに一番に知らせるに違いない。絶対にこの状態で会いたくない。確実に笑われる。バカにされる。ネタにされる。
「どうしたのかな~」
 もう今度は誰だ。これ以上に厄介な相手に会いたくない。
「げ。ウィム・・・」
 風鳴の魔女ウィむ・シルフだった。空中に寝そべり、頬杖を立てながら言う。
 くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお。
「とても困っているね。どうしたのかな~」
 ウィムはイタズラな笑みをする。
「まさか。ユーベルを呼んだのは・・・」
「何のことかな~」
――惚けやがって。
「私悩んでいるの。ここで鈴を鳴らしてお知らせするのと~助けるのとどっちかいいのかなってね」
 とても悪意のある顔だった。
「助けてほしいなら、私としばらく付き合ってくれないかしら」
 確実にこの間のやり返しをするつもりだ。遊ばれる。
 その時、「ち」と急に不機嫌なウィムは舌打ちして消える。
「なんだ?」と首をかしげる。
「おいおい」
「うっ」
 紅孩児の声がした。
 声を向けば、紅孩児が槍を担いでいた。様子を見に来たのだろう。
「まだまだ3件目だぞ。この街の下着泥棒王になるんじゃなかったのか」と罵る。
「そんな異名はいらない。赤ハゲ」
 紅孩児が不機嫌な顔になる。
「喋るな」と紅孩児が言った途端に口が糸で縫ったように閉じる。
 『奴隷首輪』の力で口が開かなくなる。
「おまえなんか。この指輪がなければ、ただの人間と変わらないんだもんな」
 紅孩児が指輪を見せびらかす。
――やっぱ、こいつバカだ。
 つま先を立て、靴底から伸縮用の杖を飛び出す。背後で杖を受け取り、文字を描き、地面に叩きつける。文字から発光が起きる。
「まぶ!」
 光が止めば、紅孩児が目を眩んでいる。
 その隙に杖から『呪い』と気で編んだ鞭を生み出し、大きく前に伸ばす。鞭は想い通りに動き、紅孩児が指輪を持っていた手に当てる。
「イタッ!」
 紅孩児は後ろへ倒れる。
 鞭を伸ばす。鞭の先端が手に変化し、落ちていく指輪を掴む。鞭を引き、急いで手元に引く。
「させるが!」
 復活した紅孩児は、槍で炎を飛ばす。
 鞭で軽やかに避ける。鞭は縮み、杖へと戻った。指輪はアキセの指へとすんなりハマる。
 これさえ戻れば。
「指輪が戻ってもいい気になるなよ。俺の命令ですぐに・・・」
「解放する」
 紅孩児の言葉を遮ったのは、紅孩児の声だった。
 紅孩児は、目が点になった。それは、紅孩児自身が声を出していないからだ。
 そして、首輪が自動に外れ、地面に落ちる。
 これで首輪から解放された。
「何をした!」
 紅孩児が訊いてきた。
 コルンの発明品『声操作録音機』。小さなボタンがいくつかあり、鉄で作られたような長方形。
 相手の声を録音し、発したい言葉を打ち込めば、その言葉を話すというシンプルな発明品。
 瞬時に召喚し、紅孩児の声を録音し、「解放する」を打ち込んだ。それが奴隷首輪から解放される唯一の手段だからだ。
「ちっぽけなおまえなんかに教えるか!バーカが!」
 アキセは瞬時に銃を撃つが、紅孩児は槍で弾く。
 紅孩児という獣並みに知能が低い生物に首輪を使わされ、下着を盗むにしてもしかも男物を盗ませる。しかもその現場をレオンに見られるというこれまでにないほどの屈辱からやっと解放された。
思わず笑ってしまう。
「よっしゃあああああああああああああああああああ!形勢逆転!今までの屈辱を晴らしてやる!」
 心の底から声を上げてしまった。さて復讐を始めようとした時だった。
「み~つけた~」
 別の声がした。
「「え?」」
 声をした方へ向けば、浴衣を着たユーベルがいた。
「やっと見つけた」と上目遣いで言うユーベルだった。


 どうにか、オカマから逃げられた。 
 オカマは、淫魔の中でもかなりの危険な人種。捕まってしまっては、淫魔以上よりも生気を絞られるかもしれない。だからすぐに逃げた。
レオンは、早速ジャンヌに知らせようと部屋に戻るが、部屋にはいなかった。
「風呂でもいったのか」
 ふと精霊(スピリット)が耳に囁く。
「え!?」
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