魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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温泉街③

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 3時間前。
 もう夕方になっていた。

――ジャンヌめ。目潰ししやがって。しかもジミーに『光』まで注ぎやがった。おかげで治るまで時間かかった。
 アキセはジャンヌを追いかけていた。
 あっという間に指輪の範囲外までジャンヌは行ってしまった。指輪に登録した道具が範囲外まで行ってしまっては仕舞えない。あの時、指輪に仕舞える余裕がなかった。
 おそらく、服を変えるために街に入るはず。近くにある町はあの温泉街しかない。
 早く服を買うまでに追い付かなければ、服を脅して嫌がる顔を見られないじゃないか。
 その時だった。
 背後から熱気が感じる。
 後ろを振り向けば、火の玉が飛んできた。
「うわ!」
 すぐに横へ飛ぶ。体勢を戻しながら、銃を召喚し構える。
「誰かと思えば・・・」
「それはさっき聞いた!」
 頭に布を巻いた紅孩児だった。たった1時間前に会ったばかりで、同じ日に何度も会いたくない。
「そういえば、さっきジャンヌにまた頭焼かれたけど、髪は残っているのか~」と罵倒しようとしたが、首に違和感がした。
「あれ?」
 触れば、いつの間にか首輪が付いていた。しかも首輪は見覚えがある。
「これって!」
「跪け!」
 その時、顔から思いっきり、地割れするほど地面に叩きつけられる。骨が折れるかって思うえるほどのかなりの衝撃だった。
 体が勝手に動いた。原因は分かっている。首輪だということ。
「てめえ!」
 土の汚れをついた顔でコウガイジを睨みつける。
 以前見たことのあるコルンの発明品。『奴隷首輪』。行方不明だったモノがなぜここに。
「こんなもの!」
 奪う魔力で使えば、首輪を奪える。
手を首輪に触ろうとしたが、「魔力を使うな!」と首輪に触っても何も起きらない。
「げ!?」
 命令で魔力が使えなくなってしまった。
――そんなのありかよ。
「あと、指輪を寄こせ」と紅孩児は悪い顔でさらに命令を出す。
 手が勝手に動く。指輪を外そうとする。抵抗しようにも手が言うことがきかない。
 なんという屈辱。知能が低い紅孩児に命令されるがままになるとは。このまま渡す気もないので、指輪を紅孩児の顔に投げる。
「おま!」とコウガイジは、弾けた指輪を掴む。
「指示した通りにしただけだ!」
 よく考えれば、この首輪を誰がつけさせたんだ。紅孩児はずっとここにいた。首輪を投げる余裕がない。他に誰かがいる。
「作戦はいきましたね」
 赤目。銀髪の長髪で縛っている。白い騎士のような格好の男。吸血鬼(ヴァンパイア)のイーグス・フォードだった。
「おまえが持っていたのか」
 よく考えたら、あの時赤い霧を出していた。しかも血生臭かった。
 確かイーグスは、風鳴(かざなり)の魔女ウィム・シルフと組んでいた。そこまで仲良くなったのかは知らないが、助けるためにやったのだろう。その隙に首輪を奪ったということか。
「なんでこのバカに渡した!」とアキセは紅孩児に指をさすが、「跪け」と聞こえてしまったので、顔から思いっきり地面に叩きつけられる。
「僕にそんな趣味をお持ちではないので」
 人にやらせる気満々だ
 地面から顔を上げる。
「これはこれで楽しめますのでいいですけど、別につける相手いたのでは」
 イーグスは紅孩児に言う。
 紅孩児は、目をぱちくりさせる。
「しまったーーあの聖女につければよかったああああああああああああああ」
 紅孩児は悲痛に叫ぶ。
やっぱこいつバカだろ。
「目の前にいたからついやってしまった」
 そんな理由で首輪をつけたというのか。
「まあ、いいや。こいつにも恨みはあるし。済んだら、あの聖女につけてやる!」
 絶対後で仕返ししてやる。
「よし、お前にやらせるのは・・・」
 紅孩児は悪い笑みを見せる。
――あ~こんなバカに何をされるのやら
「男の下着を盗め」
「「・・・」」
 その場にいたイーグスさえも黙り込んだ。
「さて、僕はこれで」
 イーグスは去る。
「あ!こら!いくらバカな命令だからって逃げるな!」とアキセは叫ぶ。
 

 現在


「何やっているんだ。ガルム・・・」
 レオンがゴミを見る目で睨みつけられる。
「よりにもよっておまえかよ」
 頭を抱える。
「下着を盗んでどうする?しかも男ものを」
「俺だって、盗みたくねえよ」
「ふ~ん」
 あ。やば。
 これからレオンがする行動が読めたからだった。捕まえるということを。
 レオンから逃げる。
「逃げるな!」
「逃げてやる!」
 レオンが拘束しようとする。
 レオンがいるとしたら、ジャンヌがこの宿にいるかもしれない。それは余計に危機的状況だ。捕まえてジャンヌとバカにするつもりだ。絶対に逃げなくては。
 更衣室で暴れる中だった。
「あれ?アキセきゅううううううううううううんじゃないの?」
 聞いたことのある声で体が固まった。
 恐る恐る声の方へ向く。
水色の長髪。黄色の瞳。タオルで体を覆っている。
「え?ユーベル・・・」
 風呂上りのオカマのユーベルが立っていた。
「なんでここに・・・」
「だって、私は男だよ。男風呂に入るのは同然でしょ」
 なぜかユーベルが顔を赤らめる。
「私のものを取りたいってせめて公衆の場はさけてほしかったな」
 上目遣いで見つめる。
 しかも手に持っていたのは、ユーベルのものらしい。
――なんでこうも不幸が続くんだ
 もう一目散に逃げる。
「待って~アキセきゅうううううううううううううううううううううううん」
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