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鳥籠の魔女⑤
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落下したハーピィは、岩の中の水に沈み、ゆっくり塵状に消えていく。魔族化した鳥たちは、鳥籠の落下に巻き沿い、死体の山になっていた。
「やっぱり、飛べなかったのね」
だから、アニエスが空を飛べることに嫉妬していた。鳥籠にいた鳥は、飛ぶことを忘れ、空に憧れていたといったところだろうか。
「羽が生えているのに哀れだね~」
同情する気もない声でアキセも眺めながら言う。
その時、殺意が感じた。
咄嗟に白い炎で盾を作り、迫ってくる風の刃を浄化させた。アニエスのものではない。アニエスは音を奏でながら風を操る。他に考えられるのは、ウィムしかいない。
「よくも・・・」
まだ体中粘ついているウィムが睨みつける。
――すっごく怒っている。初めて見るかも。
「あら、まだいたんだ。とても助かりました」
悪意を込めて礼を言う。
ウィムがとても悔しがっている。もう見れただけでごちそうさま。
「援助素晴らしかったですよ。もう終わったので帰って結構ですよ」
アキセも悪意を込めている。
「そうですよ。助かりましたので、今回は見逃しますよ。また次回も楽しみしていますよ」
「ぐううううううううう」
下に見た者に屈辱を与えられ、ウィムがいら立っている。
これ以上見たら、笑ってしまう。
「覚えておきなさいよ」
ウィムは鈴を鳴らしながら風と共に去る。
「小物がよく訊くセリフ」
さて、次はどんな仕返ししようかな。
あと残るのはアニエスだけだった。
ハーピィが消えても、アニエスに抱えている両腕とお面が消えない。
魔女は遺体を残さないはずだか。
「目的ってそれ?」
「もう貸し借りはありません」
アニエスは、静かに空いた穴から去る。
これで魔女狩りは終わり、安堵の溜息を吐く。
「あら、まだいたの」
アキセがまだいる。いつもならすぐにどこかに逃げるのに。
「まだその道具返していないからな」
やっぱ返そう。しつこく来るわ。こいつ。
「遅かったじゃないの」
「エリニュス様・・・」
少し怒っているかもしれない。ウィムが入らなければ、もっと早く持ち帰れた。
羽嵐(はねあらし)の魔女エリニュス・エア・ディーラ。風の女王。
銀に輝く羽の髪。空色の瞳。白いドレスに羽のような裾から青から白に変わっている。
エリニュスは長椅子に横たわっている。
「どうやら、あの噂好きがきたそうね。それにこの間の聖女もね」
「はい・・・」
申し訳なく返す。
すべての風を支配している。風を使って様子を見ていた。
「この間の仕返しね」
「だと思います。遅れてしまい申し訳ありません」
「なぜ、謝るの。ちゃんと頼まれたものは持ってくれたでしょ。あの魔女はいつでもできるから」
今回の仕事は、ハーピィの羽を奪うことだった。
エリニュスは、羽を収集する趣味を持っている。気に入る羽を見つければ、狩りに出かける。ちなみに魔女で最強である夜輝(よき)の魔女リリス・ライラ・ウィッチャーと火の女王である麗煌(れいこう)の魔女ロゼッタ・フェリックスの羽も狙っている。
事情を分かってくださったところでアニエスは羽とお面を渡す。
「いい羽ね」
エリニュスは羽をなでる。
「それにこのお面も素敵じゃない」
大きい羽を付けたお面をエリニュスが眺める。
魔女は遺体を残らないが、エリニュスの所有物になれば、消えることはない。消えなかったのもエリニュスの力を少し借りていたからだった。
「次もよろしくね」
「はい。喜んで」と笑顔で返す。
主人の笑顔が見られれば、十分。
「やっぱり、飛べなかったのね」
だから、アニエスが空を飛べることに嫉妬していた。鳥籠にいた鳥は、飛ぶことを忘れ、空に憧れていたといったところだろうか。
「羽が生えているのに哀れだね~」
同情する気もない声でアキセも眺めながら言う。
その時、殺意が感じた。
咄嗟に白い炎で盾を作り、迫ってくる風の刃を浄化させた。アニエスのものではない。アニエスは音を奏でながら風を操る。他に考えられるのは、ウィムしかいない。
「よくも・・・」
まだ体中粘ついているウィムが睨みつける。
――すっごく怒っている。初めて見るかも。
「あら、まだいたんだ。とても助かりました」
悪意を込めて礼を言う。
ウィムがとても悔しがっている。もう見れただけでごちそうさま。
「援助素晴らしかったですよ。もう終わったので帰って結構ですよ」
アキセも悪意を込めている。
「そうですよ。助かりましたので、今回は見逃しますよ。また次回も楽しみしていますよ」
「ぐううううううううう」
下に見た者に屈辱を与えられ、ウィムがいら立っている。
これ以上見たら、笑ってしまう。
「覚えておきなさいよ」
ウィムは鈴を鳴らしながら風と共に去る。
「小物がよく訊くセリフ」
さて、次はどんな仕返ししようかな。
あと残るのはアニエスだけだった。
ハーピィが消えても、アニエスに抱えている両腕とお面が消えない。
魔女は遺体を残さないはずだか。
「目的ってそれ?」
「もう貸し借りはありません」
アニエスは、静かに空いた穴から去る。
これで魔女狩りは終わり、安堵の溜息を吐く。
「あら、まだいたの」
アキセがまだいる。いつもならすぐにどこかに逃げるのに。
「まだその道具返していないからな」
やっぱ返そう。しつこく来るわ。こいつ。
「遅かったじゃないの」
「エリニュス様・・・」
少し怒っているかもしれない。ウィムが入らなければ、もっと早く持ち帰れた。
羽嵐(はねあらし)の魔女エリニュス・エア・ディーラ。風の女王。
銀に輝く羽の髪。空色の瞳。白いドレスに羽のような裾から青から白に変わっている。
エリニュスは長椅子に横たわっている。
「どうやら、あの噂好きがきたそうね。それにこの間の聖女もね」
「はい・・・」
申し訳なく返す。
すべての風を支配している。風を使って様子を見ていた。
「この間の仕返しね」
「だと思います。遅れてしまい申し訳ありません」
「なぜ、謝るの。ちゃんと頼まれたものは持ってくれたでしょ。あの魔女はいつでもできるから」
今回の仕事は、ハーピィの羽を奪うことだった。
エリニュスは、羽を収集する趣味を持っている。気に入る羽を見つければ、狩りに出かける。ちなみに魔女で最強である夜輝(よき)の魔女リリス・ライラ・ウィッチャーと火の女王である麗煌(れいこう)の魔女ロゼッタ・フェリックスの羽も狙っている。
事情を分かってくださったところでアニエスは羽とお面を渡す。
「いい羽ね」
エリニュスは羽をなでる。
「それにこのお面も素敵じゃない」
大きい羽を付けたお面をエリニュスが眺める。
魔女は遺体を残らないが、エリニュスの所有物になれば、消えることはない。消えなかったのもエリニュスの力を少し借りていたからだった。
「次もよろしくね」
「はい。喜んで」と笑顔で返す。
主人の笑顔が見られれば、十分。
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