魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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鳥籠の魔女③

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 ハーピィは鳥籠ごとに奥へ行ったようで、その隙に近くの横穴で隠れることにした。体に巻き付いた鎖は白い炎で浄化し、体は自由になった。
「なんであんたがここに?」
 アキセに一番の質問をする。
「ウィムにやられてさ」
 だと思った。
「何でやられたのかしらね」
 ジト目で見つめる。
「あの魔女。ハーピィだっけ。どうやら、男を惑わしていたようで。あの鳥モドキの獣見ただろう。あれ、元人間たち。魔女の『呪い』で魔族化していたんだ」
「つまり、あんたも惑わされていたってことでしょうが」
「ウィムだから。あの魔女の仕業だから。危うく鳥モドキの仲間になるとこだった」
 魔女に惑わされていたなら。
「どうやって正気に戻ったのよ」
 ふと思い返す。
「あ!私の飛び散った白い炎にかかったんでしょ」
 アニエスに当たった白い炎が漏れ、それに当たったのだろうか。
「何を言ってるんだ・・・」
 視線をそらす。図星のようだ。
「これは完璧にクノの時の仕返しだな。ジャンヌもいるし、あの魔女もいるし」
「そのくらい分かっているわよ」
 あれ。そういえば、あの時アキセは首輪をコルンから盗み、アニエスに首輪をつけたことしか覚えていない。ウィムに何かしたのだろうか。この男ならありえる。
「ちょっと待った。あんた。あの時ウィムに何かしたわけ」
「あ~いや~」
 また視線をそらす。
――やっぱり何かしたな。こいつ。
「さて、これからどうするんで?」
 話題変えられた。
「どうしようかな。別に魔女を助ける気ないんだけどね」
「さすが聖女ですわ」
 魔女は敵。助ける道理はない。
「でも、このままだとね~」


 奥に行けば、鳥籠の下には鳥モドキの獣が騒いでいた。
 鳥籠の中にはもちろんハーピィがいた。
 ハーピィの目の前に鎖に巻かれたアニエスがぶら下がっている。髪を短髪に切られ、服も千切れている。随分と痛めつけられたようだ。
「落ちろ」
 ハーピィが言った瞬間、鎖が千切られ、アニエスは絡まれたまま落ちていく。
 さて、行きますか。
 『なんでも遮断マント』で姿を消し、鳥籠で隠れていたジャンヌは、真っすぐアニエスに飛ぶ。
 飛べたのは、『足専用つけ羽』と言ってコルンの発明品の一つ。リングに小さな羽をつけたもので足首につけることで空を飛べる代物。
 どれもアキセからこっそり貰おうと考えたけど、取り戻せるためにしつこく追いかけてくると思ったのでやめた。
 落ちていくアニエスの鎖に掴み、鳥籠の鎖に掴む。
「なぜあなたが・・・」
 アニエスが目を見開く。
「あの魔女を驚かそうと思ってね」
ウィムの想い通りにしたくないから。
「協力してくれるなら、あんただけを見逃してあげる。それとも見学だけにしとく」
「なめないでください」
 アニエスは自力で鎖を解く。
「あの魔女を痛めつける分はいけます」
 髪が伸び、服も修復していく。
「なんだ。まだ戦えるのか」
 少し後悔した。戦えるなら放置してもよかったかと。
「少し休めばいけます」
 痛めつけられた割には見栄を張っているのか。
「じゃあ。協力するって認識でいいのかな」
 アニエスは溜息を吐く。
「目的達成するまでは殺さないでください」
 アニエスは長い弓を召喚する。
「それまでに殺さなければね」
 ジャンヌは、ロザリオを構える。
 ハーピィは鳥籠の中から鋭い目つきで威嚇する。
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