魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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鳥籠の魔女①

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 最悪。
 雨が降り、ジャンヌは崖の隙間で雨宿りしているところだった。
 雨は嫌いだ。『光』を吸収できず、炎を扱っているのか、反射的に水が苦手である。
 億劫になる。身動きが取れない。早く止まないものかと。
 その時、奥から鳥の声がする。
「鳥?」
 奥の方へ向けば、小さな灯りが見える。
 どうしよう。絶対に何かいる。逃げようにも外は雨。
 とりあえず奥を覗く。もしかしたら、意外に安全な鳥が鳴いているだけかもしれない。
 奥に行けば、広がった空間だった。
 階段のように岩に水が溜まり、溢れた水が流れている。
洞窟の中は『光』が届かず、『呪い』が溜まり、結晶化しやすい。岩の中に紫色の宝石が明るく照らしている。
 鳥とは思えない獣が鳴いている。顔は鳥だか体が人。左半身が鳥で右半身が人。下半身が鳥の人もいる。人と鳥が混ざったような獣がいる。
 『呪い』の影響で姿を変えられている。おそらく元は人だっただろう。
鳥たちが見上げる。
 上には鳥籠がいくつもぶら下がっている中に、一つの鳥籠の中に人がいた。
 魔女だろうか。
 銀色の髪に青い目。長い羽を付けた鳥のようなお面を頭の横に付けている。腕に羽。足を透けている羽のようなドレスを着た魔女だった。
 どうしよう。魔女の巣にきてしまったようだ。
 雨で『光』を吸収できず、苦手な水でより『光』を消費する。今戦うのは避けたい。早くこの場から逃げようとした時だった。
 上から轟音がした。
 鳥籠は大きく故れ、崩れた岩が鳥の獣を潰す。
 空色の髪で横髪を伸ばし、マフラーのように巻いている。胸までの白と青のふんわりとしたドレスに足を見せる。手には長い弓を持っている。
 その魔女は知っている。
「爽律(そうりつ)の魔女アニエス・ソナタ・ウェンディ。参る」
 長い弓を奏でる。
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