魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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行く末を知りたい者③

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「あら、いい男ね」
 裸体の女は死体を気にせずに踏み、近づいてくる。
「白い肌ね。外の人かしら」
 どっちにしてもまともではないのは確実だった。
 でも、この女は。
「ジンガさまー。ここに食材逃げなかったですか?」
アニアが部屋に入ってくる。
「げ?」
 肩に強く掴まれる。


 声をかけた男ゴランに地下のある部屋に案内された。
 ゴランは、30代後半といった男。この国の幹部らしく、ある計画を実行しようとしている。
 それは女王の暗殺。
 この国で支配している女王ジンガは魔女である。
 先代を殺したジンガは人を支配する力を持ち、絶対に逆らうことはできない。支配された人間は自我を失い、完全な操り人形になり、ジンガの欲望のままに使われる。
 特にジンガは人を食することを好んでいる。生きたまま石臼に回し、血を飲み、人肉を食べる。さらに男を殺し合わせ、最後に残った男と一緒に夜と過ごすも殺すという。
 ゴランは女王の悪行を終わらせるために計画を立てたという。
「つまり、あなた方は反逆者ってことですね」
 細長いテーブルに頬を立てながら言う。
「はい」
 向かい側に座っているゴランが言う。ゴランの周りに仲間がいた。
「他のみなさんは、魔女に支配されなかったんですか」
「はい。少数ではありますが、魔女の支配に逃れた者もいます」
 確かに抗体が強ければ、魔女のタタリにはかからない場合もあるにしても。
「そう・・・」
 少数にしては多い。
「一つ。お聞きしたいんですけど」
「なんでしょうか」
「魔女はいつからこの国を支配したんですか」
「もう10年もたちました」
 10年もか。
「よく持ち堪えましたね」
「だから、聖女様が来た。この瞬間を待っていたのです!」
 ゴランは声を上げる。
 反逆者と言っても聖女に頼るのね。
「聖女様。どうかこの国を救ってください!」とゴランは頭を下げる。反逆者仲間もつられて頭を下げる。
 いつもの光景。人間が魔女退治に聖女の力をすがる。でも今回は。
「分かりました。参加しましょう」と言った時、周囲の反逆者たちは喜んだ。
 後は魔女を確かめるか。
「作戦は?」と聞く。
 


「アニアの~クッキングショー~」とシェフ姿のアニアが陽気に言う。
 城の中庭でクッキングショーすることになったようだ。
 中庭には台所。巨大な鍋と石臼。巨大な檻の中には裸体の男が密集している。
「ジンガ様のオーダー通りに精力を増すために淫魔を集めておきましたよ!」
 ジンガは豪華な椅子に足を組み、頬を立って見つめている。
「何かご要望あります?できないことがないので、じゃんじゃん言ってください!」
 アニアはポンと胸を叩き、自信満々に言う。
「そうね。血と人肉をアレンチしてくれれば、なんでもいいわ。生ものは無しで」
「りょ~かいで~す。そこの食材はどういたします?」とアニアが指したのは、ジンガの手前で小さな檻の中に閉じ込められている裸のアキセのことだった。
「ん~そうね~」とジンガの足を檻の上に乗せる。
「ちょっと遊んでからにしたいの」
「ん~そうですか」
 アニアは少し残念そうに言う。
「淫魔のチ〇コを使おうと思ったんですけど・・・あ!失礼」とアニアは口に手を当てる。
 やめろ。
「これ使わなくても作れるでしょ」
「できますよ」とアニアは自信満々に答える。
「あと申し訳ありませんね。アーノルドがやけにその食材を気にしてるようで」
 檻の横で牙を向いているアーノルドが注意深く睨みつける。しかも見せびらかすように指輪を牙にはめてある。
――口汚い牙にはめやがって。
「いいわよ。別に動物は嫌いではないからね」
 ジンガはアーノルドを優しくなでる。
 裸で檻に閉じ込められ、指輪はアーノルドに奪われ、魔術や発明品すら使えない。これでは完全に逃げられない。
 つーか。まだジャンヌが来ないのか。最後の頼みなのに。かなり賭けに近いが。
「さ~始めましょう~」とアニアが調理を始める。
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