魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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雷馬の魔女③

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 休暇しようと村に立ち寄ったが、先輩のアガタに見つかってしまい、行方不明事件の解決に手伝わされることになった。それが魔女でなく変質者退治に。
「アガタさん。魔女狩り以外に呼ばないでくださいよ」
 魔女狩りで他の聖女と組むのはまだしも、わざわざ変質者退治に駆り出されるのは、我慢しきれない。
「何を言っているんだ。人間守るのも仕事の一つだよ」
 聖女を生まれるためにも人間を守るのも仕事に含まれている。
「だからと言って変質者退治もその中に入れないでください」
 目の前には、手足を縄で縛われているユニコーン兄弟とアキセがいた。
 しかもユニコーン兄弟は「お助け~」と「見逃してくれ~」と言いながら、手足を縛られても、ジタバタと体を動かす。
 この怯えは尋常じゃない。
「アガタさん・・・何をしたんですか?」
 アガタからユニコーン兄弟は以前にも会い、成敗したと聞いている。
「え?ただ天罰を与えただけだよ。あまりにも酷かったからさ」
 そんなトラウマ植え付けるほどに。
「おい!ジャンヌ!」
 手足を縛っているアキセに声をかけられる。
「なんで俺までするんだ!」
「共犯でしょ」
「こんなバカ馬と組むか!」
「「なんだと!」」とユニコーン兄弟は声を上げる。
「俺たちを裏切るつもりか!兄弟」
 兄弟。このユニコーン兄弟はリリムということか。
「兄弟と思ったことはない!」
 裏切る?
「あ。そうか。私に兄弟を売るつもりだったでしょ」
「うっ」
 図星のようだ。アキセの行動が見え見えすぎる。
「おまえ!」
「てめらだって、俺を見捨てるつもりだったろうが!」
 リリム同士の喧嘩が始まった。
 あまりの口喧嘩に呆れてしまう。
「アガタさん。こいつらどうします?捕まえたのでもう帰りたいんですけど」
 もうやる気がでない。アガタに押し付けたい。
「まだ終わっていないよ。きょ・・・拉致者の居場所を話してもらわないと」
「今何か言いかけましたよね」
 思わず突っ込んだ。
「教えましたら、見逃してくれるか?」
 ユニコーン兄が言う。
「教えてくれたら」
――あ。読めた
 アガタがこれからすることをよぎった。
「おい!よせ!」
 察したのかアキセが声を上げる。
「この奥の洞窟にいます!」
 兄が白状した。
「案内してくれる?」
「「します!します!」」
――あ~拉致者見つけたら、こいつらボコボコにするんだろうな。アガタさんに
 その時だった。
「見つけたぞ!双子ども!」
 怒声が入った女の声が響いたと思えば、上からドーンと何かが落ちてきた。
 肩を出している民族衣装をした女だった。
「そこの双子を寄こせ!」
 女から黒いモヤが散らばる。黒いモヤは過剰に発生した『呪い』が可視化したもの。『呪い』を生み出すのは、魔女のみ。
「あんたら、魔女にまで怒らせることしたのか」
 ユニコーン兄弟に訊く。
「「してない!してない!」」
 言い訳しているな。
「ウソつくな!双子ども!」
 魔女は怒声を上げる。
「よくも私を不潔な女だって言ったんだぞ!」
 リリムのユニコーン兄弟が言いそうな発言だった。
「サイテー」
「女性に失礼だぞ。双子ども」
 魔女を女性として見るのもどうかと。
「許さん!許さんぞ!」
 魔女が黒いモヤに包まれる。
「「うわ~!」」
 怯えたユニコーン兄弟が無理やり縄を解き、必死に逃げる。
「なんで俺まで~」
 情けない声を上げながらユニコーン兄弟に引っ張られるアキセだった。
「この雷馬(らいば)の魔女ジネリア・バイコーンから逃がすと思うな!」
 黒いモヤに包まれたジネリアは、下半身が馬となり、鎧姿をし、双子たちを追いかける。
「まあ自業自得ですね。あのままでいいですよね」
 ジャンヌはアガタに訊く。
 魔女が代わりにユニコーン兄弟が退治してくれる。もうここで終わらせたい。
「でもあの方向。村があるんだよね」
「はあ・・・」
 頭を抱える。
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