魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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雷馬の魔女①

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 細い白い木が伸びている森の中でさ迷っていたアキセは、気配を感じた。この森に何かがいる。しかもこの気配は知っている。
 その時、向こうからパカパカと音が響く。
 何かが近づいてくる。
 やっと音の正体が確認できた。角を生やした白い馬が走ってきた。
「獣か」
 召喚した銃で撃とうとしたが、一角獣の角が黒く光り、黒い刃を放つ。
「魔獣(モンスター)かよ」
 魔獣(モンスター)は、『呪い』により体が変化し、『呪い』に抗体を持ち、魔力を宿った獣。だか、魔獣(モンスター)とは別に感じる。
 黒い刃が無数に分裂する。
 指飾りで陣を描き、黒い矢を跳ね返そうとしたが、背後から別の気配を感じた。
 振り向けば、黒い刃が無数に飛んできた。
「うわ!」
 横へ避ける。
 避けた先で一角獣が跳んできた。
――もう一匹?
 足で踏みつぶそうとしている。
 後ろへ跳び、銃を撃つ。
 当たれば、爆発する術を込めた魔弾を撃つが、黒い刃が当たり、不発に終わる。
 舌打ちする。
 まさか、一角獣が2匹いるとは。
「「俺たちのなわばりに入ってくるな!」」
 男の声が響いた。一人ではない。二人といったところだろう。
 一角獣は姿を変える。
 上半身が男の姿になり、頭には角が生えている。二人の顔が同じ。双子だろう。
 もしかして。
「おまえら、最近騒いでいるユニコーンか」
 淫魔の中である噂を聞いていた。角の生えた馬が処女を乗り回すという変質な淫魔がいると。それに。
「しかもリリムかよ」
 呆れて言う。
 夜輝(よき)の魔女リリス・ライラ・ウィッチャーの血を引くリリムは、近くいれば、お互い気配で感じる。
「お?なんだ。兄弟か」
「確かに同じ気配を感じるが・・・兄貴?本当に兄弟か?こいつから童貞くさいぜ」
 プチ。
 アキセは銃を撃つが、ユニコーン兄弟は避ける。
「処女を連れ回す特殊癖に言われたくないね」
「「何を言う。処女は正義だ!」」
 双子はハモって言う。
「いいか。処女がどれだけ貴重か。人間一人に1回きりだぞ!」
「あの初々しさが溜まんないだぞ!」
 ユニコーン兄弟は強く発言する。
 双子の言い分に分からなくはない。
「ちなみに俺は少女派だ」
「何を言う弟よ。年取った熟女もまたいいぞ」
 レベルが高い。
「だからさ」と兄が言う。
「出で行け」と弟も言う。
 ユニコーン兄弟は、手に黒い弓を生み出す。
「「ここは俺たちの狩場だ!」」
 矢を放つ。しかも無数に矢が迫ってくる。
「うわ!」
 アキセは必死に走る。
「「さっさと失せろ。童貞~」」
――あの兄弟め。後悔させてやる。

 
 さて、どうやって仕返ししようか。
 アキセは近くの町の食堂で酒を飲んでいた。
 それにしてもリリスはいろんな種族に手を出しているのは知っているが、獣人にまで手を出すとは。男ならお構いなしか。
 あのユニコーン兄弟は、おそらく馬の獣人の血が混ざっているのだろう。獣人のくせに同じ血が混じっているのもイラつく。
 やはり、成敗してやる。
 ユニコーン兄弟の馬の復讐に考えていた時だった。
「「よう!兄弟!」」
 ユニコーン兄弟は人の姿に変え、アキセを囲むように座る。
 すぐに両手に召喚した銃を他の客に見えないように構える。股間に向けて。
「おいおい銃を下ろせって」
「そうだぞ。兄弟」
 静かに銃を下ろされる。
「兄弟って言うな。なんのようだ?」
 切れ気味ながら銃を双子に向ける。
「だから、銃を下ろせって。ちょっと協力しないか?」
 お誘いのようだった。
「どんな変わりようだ」
 これは絶対裏がある。
「実はな。兄弟」
「だから。兄弟っていうな」
「次の狩場で隣の町を狙おうとしたんだけど、そこに聖女が邪魔されてさ」
「聖女?」
 まさかとは思うが。
「そうなんだ!しかも俺たちを半殺しした悪女だ!」
 対面済みか。
 別の聖女かもしれないが、確認する。
「ちなみにその聖女ってどんなヤツだ?」とユニコーン兄弟に訊く。
「暴力」
「女ではない」
「短気」
「悪女」
「鬼畜」
「「淫魔の敵!」」とユニコーン兄弟は交互に聖女の愚痴を言う。
 ジャンヌだ。
 これは丁度いい。ジャンヌに痛めつけよう。
「そんな怖い女と相手したくないんでね」
 立ち去ろうと演技する。
「「ちょちょちょ待てって!」」
 引き留める兄弟。よし。
「収穫した処女をセックスさせる」
「よしのった!」
 協力することに成功した。
 これでどさくさに双子をジャンヌに売り、恨みを晴らしてやる。
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