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皮衣の魔女⑥

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 ジャンヌの作戦は、白い炎で村ごと囲み、使い魔を浄化し、魔女を逃がさないようにした。
 月明かりで『光』が満ちている。
 状況的に不利と判断し、逃げることに専念するはず。その隙を狙って一気に攻めるといったところだった。
 ジャンヌが魔女に気を取られている内に村長に近づき、協力させるようにした。村長もすぐに承諾してくれた。
 魔女はジャンヌの作戦で浄化された。
 アキセは逃げようとしていたので、すぐさま捕まえ、「全てこいつのせい」と聖女であるジャンヌの言い分で狼の獣人(デミ・ビースト)たちに差し出した。狼の獣人たちは大喜びでアキセを成敗してくれた。
 サリィシャの誤解も解け、迎えに行くところだった。
 木を背にまだ眠り、子狼が尻尾を振っていた。
 村長はサリィシャに急ぐ。
「サリィシャ」
 村長は小さく揺する。
 重たい瞼を開け、サリィシャは起きる。
「お父様・・・」
 寝ぼけているようだ。
「ワン!」
 サリィシャの視線が子狼に向ける。
「ウイグル!」
 子狼のウイグルは、嬉しそうに吠える。
 サリィシャはウイグルと会えて嬉しそうだ。
「よかった・・・」
 村長は、安堵の溜息を吐く。
「私・・・」
「おまえがあの魔術師に操られていたんだ」
「操られた?確か・・・あの方は?魔女にって・・・」
「俺ならここだ」
 サリィシャと目が合う。
「魔女なら聖女と村長と一緒に殺した」
「聖女?」
 視線がジャンヌに向けられた。
 目が合ったジャンヌは、軽く手を振る。
「そうか。ウイグルが連れてきたのね」
「ワン」
 ウイグルは返事する。
「どういうことだ?」
 村長はサリィシャに問いかける。
「前にウイグルに聖女の話をしたの。そしたら、いなくなっちゃって。聖女を探しに行ったと思って・・・」
「それで森の中に入っていたのか・・・」
 やはり魔女が騒ぐ中、村から出たのは、その子狼を探すためだったようだ。
「おまえが無事でよかった・・・」と村長は安堵の声を上げる。
「もう大丈夫だな。足はまだ怪我している。悪化しているかもしれないから早く診てくれ」
 サリィシャから離れる。横にいたジャンヌも一緒に歩く。
「あの!」
 サリィシャが声を上げても、足を止める。
「ありがとうございます。最後に名前教えてくれませんか」
 少し頭をかく。
「教えてあげなよ」
 ジャンヌがそそのかす。
 溜息を吐いてから「ラ・イルだ」と振り向くことなく歩く。


「そんなに名乗るの嫌なの?」
 ジャンヌから声をかけられた。
「ああ?」
「私の時もなかなか教えなかったのに」
「もう会うこともないし、名乗っても忘れるだけだ」
「まだ会えたし。印象的なあなたを忘れるなんてできないよ」
「忘れてくれ」
「いや」
 ジャンヌは否定する。
「やっぱり、一緒に行かない?」
――またそれか
「前に言ったろ。これ以上魔女に関わりたくないんだ」
 はっきり答える。
「だって、頼りがいのある男っていないもの」
 ジャンヌの周りにはクセのある男しかいない。
「聖女に助けなんていらないだろうに」
 魔女を倒せるのは聖女しかいない。聖女もそれなりに最強で助けなどいらないだろうに。
「そんなことないよ。悪知恵が働くと苦戦するのよ」
「だったら、別のヤツに頼め」
「え~」
「じゃあ、次回も楽しみにするから」
「次回はない」
「なんだ・・・」
 ジャンヌは残念そうな顔をする。
「これで勘弁してくれ・・・」
 ラ・イルは、ジャンヌに尾を差し出す。
「そうする」
 ジャンヌはラ・イルの尾をふさふさとなでる。
「ふさふさ~」
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