魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
96 / 648

皮衣の魔女②

しおりを挟む
「私、サリィシャと申します」
 ラ・イルはサリィシャを背負いながら歩いていた。
「そうか」
「あの・・・お名前は?」
「君を送ったらすぐに去る」
「そうですか・・・」
 サリッシャは残念そうに言う。
「え~と、獣人(デミ・ビースト)ですよね」
「まあ獣人(デミ・ビースト)は入っているな」
 異様な匂いで気になっているのだろう。
「ハーフですか?」
「質問が多いな」
「ダメですか?」
「他人を詮索するのはよくないぞ」
「ごめんなさい」
 サリィシャが素直に謝る。
「こっちから質問していいか。なんであれに襲われたんだ?」
「急に襲ってきたんです」
「あれの正体知っているのか」
「おそらく使い魔かと」
 予想は当たってほしくなかったが、やはり使い魔だった。
「実は、この辺りで魔女が現れたそうです。獣人(デミ・ビースト)を捕まえて、毛皮を剥いでいたそうです。近くの獣人(デミ・ビースト)の村もやられたそうです」
「魔女か・・・」
 つなぎめの魔女に連行されるところを聖女のジャンヌに助けられた。
 魔女関連はジャンヌに任したいところだか、その彼女がどこにいるのか分からない。そもそも魔女とは関わりたくない。サリッシャを村に送り、すぐにこの森から去ろう。
 そういえば。
「魔女がうろついているのになぜ村から出たんだ?」
「それは・・・」
「サリィシャ!」
 サリィシャの言葉を遮ったのは、別の男の声がした。
 声をした方へ向けば、大きい柵の前に狼の獣人(デミ・ビースト)たちが立っていた。
「サリィシャ!」
 声の主は、筋肉質で一回り大きい狼の獣人(デミ・ビースト)だった。
 声が少し枯れ、毛並の艶がないところを見て、年をそれなりにとっている。
――元気なジジだな
「お父様・・・」
 サリィシャの父だった。
 サリィシャは、父と視線をそらしている。親に怒られるのが嫌な子供のような顔をしている。
「あの・・・勝手に出でしまったのはごめんなさい・・・」と素直に謝る。
「おまえって奴は・・・」
 頭を抱えながらサリィシャの父と目が合う。とても見開いている。異様な姿に驚いているのだろう。
「サリィシャ。この者は?」
「私が足を怪我してしまって・・・ここまで送ってくれたんです」
「そうか、それは礼を言う」
「ああ」
 サリィシャを父の前に下ろす。
 サリィシャは足を怪我しているため、サリィシャの父が体を支える。
「送り届けたので、俺はここで」
 去ろうとしたが、後へ跳ぶ。
 その横から他の狼の獣人(デミ・ビースト)が跳んできたからだ。
 睨みつける。
 話している時から匂いが徐々に近づいていた。気配を消しても、匂いで彼らの居場所は分かっていた。
「おい、その子を送り届けただけだ。何かしたか?」
 問に答えてくれなかった。
「お父様!これは・・・」
「いや~おつかれ~」
 サリィシャの声が遮られた聞いたことがある声。
「狼モドキ」
 ラ・イルを捕まえ、魔女に差し出そうとしたアキセ・リーガンだった。
「おまえ!」
 その時、頭に衝撃した。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...