魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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皮衣の魔女①

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 日差しが差し込み、ジャンヌは木陰で休んでいる時だった。
 茂みから小さな狼が出できた。
 子供ならではの可愛らしさ。思わず見とれてしまう。
「どうしたの?迷子なのかな?」
 しゃがみ込み、手を伸ばしてみた。
 怖がるかと思ったか、意外に子狼から近づいてきた。
 野生にしては人に慣れている。飼われているのだろうか。
 そういえば。
子狼を見て、ふと思い出す。
 魔女により様々な体を繋げられた人間ラ・イルのことを思い出す。
 霧の山でさ迷っていたところを助けてもらった。その後でアキセに拘束され、魔女に連行されそうだったところを助けた。
 アキセと比べたら男気があって頼りがいがある。それに尻尾の柔らかさにも魅力的だった。一緒に組んでもよかったが、魔女に関わりたくないと断られた。
 今頃どうしているのだろうか。


 森の中をラ・イルはさ迷っていた。
 ラ・イルは、つなぎめの魔女により体を改造された。
 人間の顔と体。エルフの耳。狼の口。大猫の腕。大トカゲの足。狐の尻尾。体を隠すため、大きいロープとかぶりを着ている。
 この姿では、人の街にも住めない。もの珍しさに見世物にされる。
 安住の地を探しているところだった。
 静かな森が急に騒がしくなった。
 息を殺し、木の陰から様子を見れば、狼の獣人(デミ・ビースト)が襲われているところだった。
 襲っている敵は妙な姿をしていた。狼の毛皮を背負い、黒体をもつ狼のような獣だった。魔獣(モンスター)や異獣(エヴォル)ではない。おそらく。
 その時、毛皮の獣と目が合ってしまった。
 迫ってくる。
「たく!」
 足を一歩下がり、毛皮の獣をかわす。右爪を立て、思いっきり毛皮に引っかく。
 毛皮を破いたとたんに体は塵状になって消えた。
「これは?」
 手に残ったのは、毛皮だけだった。
 毛皮を破けば、体を失った。どうやら弱点のようだ。
 視線を毛皮の獣は、急に踵をかえした。
 1体倒しただけで逃げた。
 毛皮の獣は、魔女の使い魔だろう。聖女じゃなくても1体倒しただけで逃げるものだろうか。
 どっちにしても魔女が近くにいるようだ。早く立ち去ろう。
「あの・・・」
 女の声がした
 声の主は毛皮の獣に襲われた狼の獣人(デミ・ビースト)だった。
 命に別状はないようだ。
「あの・・・ありがとうございます・・・」
 女は少し警戒しているようだ。ただの獣人(デミ・ビースト)でないことに気づいたからだろう。
 これ以上関わりたくない。
 答えることもなく、歩こうとしたが。
「あの~ごめんなさい。足を怪我してしまいまして・・・村まで送ってくれませんか」
 よく見れば、彼女の足に血が流れていた。
 ラ・イルは、肩を竦める。
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