95 / 648
皮衣の魔女①
しおりを挟む
日差しが差し込み、ジャンヌは木陰で休んでいる時だった。
茂みから小さな狼が出できた。
子供ならではの可愛らしさ。思わず見とれてしまう。
「どうしたの?迷子なのかな?」
しゃがみ込み、手を伸ばしてみた。
怖がるかと思ったか、意外に子狼から近づいてきた。
野生にしては人に慣れている。飼われているのだろうか。
そういえば。
子狼を見て、ふと思い出す。
魔女により様々な体を繋げられた人間ラ・イルのことを思い出す。
霧の山でさ迷っていたところを助けてもらった。その後でアキセに拘束され、魔女に連行されそうだったところを助けた。
アキセと比べたら男気があって頼りがいがある。それに尻尾の柔らかさにも魅力的だった。一緒に組んでもよかったが、魔女に関わりたくないと断られた。
今頃どうしているのだろうか。
森の中をラ・イルはさ迷っていた。
ラ・イルは、つなぎめの魔女により体を改造された。
人間の顔と体。エルフの耳。狼の口。大猫の腕。大トカゲの足。狐の尻尾。体を隠すため、大きいロープとかぶりを着ている。
この姿では、人の街にも住めない。もの珍しさに見世物にされる。
安住の地を探しているところだった。
静かな森が急に騒がしくなった。
息を殺し、木の陰から様子を見れば、狼の獣人(デミ・ビースト)が襲われているところだった。
襲っている敵は妙な姿をしていた。狼の毛皮を背負い、黒体をもつ狼のような獣だった。魔獣(モンスター)や異獣(エヴォル)ではない。おそらく。
その時、毛皮の獣と目が合ってしまった。
迫ってくる。
「たく!」
足を一歩下がり、毛皮の獣をかわす。右爪を立て、思いっきり毛皮に引っかく。
毛皮を破いたとたんに体は塵状になって消えた。
「これは?」
手に残ったのは、毛皮だけだった。
毛皮を破けば、体を失った。どうやら弱点のようだ。
視線を毛皮の獣は、急に踵をかえした。
1体倒しただけで逃げた。
毛皮の獣は、魔女の使い魔だろう。聖女じゃなくても1体倒しただけで逃げるものだろうか。
どっちにしても魔女が近くにいるようだ。早く立ち去ろう。
「あの・・・」
女の声がした
声の主は毛皮の獣に襲われた狼の獣人(デミ・ビースト)だった。
命に別状はないようだ。
「あの・・・ありがとうございます・・・」
女は少し警戒しているようだ。ただの獣人(デミ・ビースト)でないことに気づいたからだろう。
これ以上関わりたくない。
答えることもなく、歩こうとしたが。
「あの~ごめんなさい。足を怪我してしまいまして・・・村まで送ってくれませんか」
よく見れば、彼女の足に血が流れていた。
ラ・イルは、肩を竦める。
茂みから小さな狼が出できた。
子供ならではの可愛らしさ。思わず見とれてしまう。
「どうしたの?迷子なのかな?」
しゃがみ込み、手を伸ばしてみた。
怖がるかと思ったか、意外に子狼から近づいてきた。
野生にしては人に慣れている。飼われているのだろうか。
そういえば。
子狼を見て、ふと思い出す。
魔女により様々な体を繋げられた人間ラ・イルのことを思い出す。
霧の山でさ迷っていたところを助けてもらった。その後でアキセに拘束され、魔女に連行されそうだったところを助けた。
アキセと比べたら男気があって頼りがいがある。それに尻尾の柔らかさにも魅力的だった。一緒に組んでもよかったが、魔女に関わりたくないと断られた。
今頃どうしているのだろうか。
森の中をラ・イルはさ迷っていた。
ラ・イルは、つなぎめの魔女により体を改造された。
人間の顔と体。エルフの耳。狼の口。大猫の腕。大トカゲの足。狐の尻尾。体を隠すため、大きいロープとかぶりを着ている。
この姿では、人の街にも住めない。もの珍しさに見世物にされる。
安住の地を探しているところだった。
静かな森が急に騒がしくなった。
息を殺し、木の陰から様子を見れば、狼の獣人(デミ・ビースト)が襲われているところだった。
襲っている敵は妙な姿をしていた。狼の毛皮を背負い、黒体をもつ狼のような獣だった。魔獣(モンスター)や異獣(エヴォル)ではない。おそらく。
その時、毛皮の獣と目が合ってしまった。
迫ってくる。
「たく!」
足を一歩下がり、毛皮の獣をかわす。右爪を立て、思いっきり毛皮に引っかく。
毛皮を破いたとたんに体は塵状になって消えた。
「これは?」
手に残ったのは、毛皮だけだった。
毛皮を破けば、体を失った。どうやら弱点のようだ。
視線を毛皮の獣は、急に踵をかえした。
1体倒しただけで逃げた。
毛皮の獣は、魔女の使い魔だろう。聖女じゃなくても1体倒しただけで逃げるものだろうか。
どっちにしても魔女が近くにいるようだ。早く立ち去ろう。
「あの・・・」
女の声がした
声の主は毛皮の獣に襲われた狼の獣人(デミ・ビースト)だった。
命に別状はないようだ。
「あの・・・ありがとうございます・・・」
女は少し警戒しているようだ。ただの獣人(デミ・ビースト)でないことに気づいたからだろう。
これ以上関わりたくない。
答えることもなく、歩こうとしたが。
「あの~ごめんなさい。足を怪我してしまいまして・・・村まで送ってくれませんか」
よく見れば、彼女の足に血が流れていた。
ラ・イルは、肩を竦める。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる