魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
93 / 648

リベンジ色の赤③

しおりを挟む
 さっきからことごとく失敗している。
「さっきからしつこいんだけど」
 息を上がっているアキセ(変装したゴクウ)にジャンヌが言う。
 早速作戦を実行するも、裏拳やパンチと回し蹴りを食らってばかりだった。
 それにさっきから欲情が抑えられないのもあって、突っ込んでしまう。
「これから魔女狩りだって言うのに」
 ジャンヌは少しイラつきながら歩いていく。
――くそー聞いてねえぞ!ここまで狂暴な女なんて
 本当に見た目だけしか価値がないじゃないか。
 その前に近づいただけですぐに攻撃するというアキセもジャンヌに何をしたのだろうか。
 すぐさまジャンヌに追いつく。
「まだ、魔女につかないのか」
「もうすぐよ」
 このままでは魔女と戦う羽目になる。魔女と戦うのはごめんだ。
 もうチャンスは一回だけ。もっと確実にやれる方法を。
「そうだ」
 ジャンヌが急に声を上げる。
「私から提案なんだけど」
「なんだよ」
「魔女の詳細分かっていないんだ」
「だから?」
「情報を集めてくれたら、キスしてもいいけど」
 上目遣いでジャンヌは見つめる。
 一気に欲情が増してしまった。
「よし。いいだろ!俺が調べてやる!」
 粋がって走り行った先で足を踏み外す。
「え!?」
 その先には大きな大穴でしかも植物の獣たちがいた。
「うわああああああああああああああああああああああああああ」
 情けない叫び声を上げながら、近くにあったツタに掴む。摩擦で手が熱くなるも、落下は防がれた。
 しかし、懐から『弱くな~れスプレー』を落としてしまう。
「あ!」
 『弱くな~れスプレー』は底に落ち、破裂する。
 『弱くな~れスプレー』の中身と思われる蒸気が広がり、異獣の植物に行き渡る。
 異獣の植物はしおれていく。
 とりあえず助かったが、作戦の要となる道具を失った。もう作戦実行できない。すぐに退散しなければ。
 見上げれば、ジャンヌはしゃがみ込み、頬杖を立て、ただ眺めていた。
「ん~」
「いや見てないで。マジで助けて!」
「主犯はだあれ?」
「え?」
 思わず固まってしまった。バレていた。いつの間に。
「それにいい加減に正体出したら」
 ジャンヌは呆れるように言う。
「いつから・・・」
 冷や汗をかく。
「蹴りがいまいち決まらなかったから」
「なんでそれで分かったの?!」
 思わず声を上げてしまった。
 最初に襲ったあの回し蹴りでバレていたということか。
「それに鳥肌が立たなかったしね。襲うにしてもそれに変装するのもな」
 ジャンヌは呆れる目で見つめる。
 つまり、鳥肌が立つほどアキセを嫌っているということか。
――どんだけ嫌われているんだよ
「魔女狩りだって言えば、嫌がって逃げるかなって思ったけど、意外についてくるし」
「じゃあ、魔女は・・・」
「そもそもこの辺にいない」
「騙したな!」
「あんたに言われたくないわよ」
 ジャンヌは返す。
「しかもさっきのあれで私を弱らせようとしたでしょ」
「ぎく!」
 『弱くな~れスプレー』のことだろう。
「聖女と知ってて襲うってことは・・・」
 じろっと見つめる。
「こうさくの魔女のコルン・コボルドから」
「え?」
「図星か」
 分かり切っている。
 どうする。もう退散しか考えられない。
「別に無理して話さなくてもいいよ。特に助ける理由も得もないし」
 ジャンヌはゴクウが握っているツタを指から出す白い炎で炙っている。
「ああああああ!やめてええええええええええええ。俺の生命線を切らないでー」
 情けない声を上げる。
――もう怒った。このままやられてたまるか
 ゴクウは、手に身長と同じ長さで、文字を刻んだ棒『ニョイボウ』を召喚する。
「伸びろ!」
 ニョイボウは底まで伸び、軸となって上へと伸び、大穴から脱出する。煙が体を包み、変化を解く。
「このアマ。聖女だからってなめてたまるか!俺にはこのバッチが!」
 胸にあった『光は効きませんバッチ』に石が当たり、粉砕される。
「あ!」
「だから、『光』が効かなかったのか。それは早く処分しないと」
 笑顔のジャンヌが十字架を持って近づく。
 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...