魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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リベンジ色の赤①

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 しばらくはジャンヌと会うのは控えよう。珊魚の魔女の件でジャンヌにたっぷり拷問された。さすがに応えた。気分を変え、女を見つけて、抱きまくってやるか。
今、酒場で酒を飲みながら、店の中でじっくりターゲットを探す。
――さて、どれにしようか
 ウエイトレスの女か。彼氏持ちの女か。やけくそに飲んでいる女か。
 悩むな。
 その時、一人の女が近づく。
「隣いいかしら」
 よしかかった。
 アキセはリリスの子供であるリリムで、淫魔のような体質を持ち、異性を惑わす。女は、誘惑に惑わされた。
「どうぞ」
――おお。いい女。
 年は20代ところか。波のかかった金髪に緑色の瞳。胸も大きめ。いい体型をしている。少し胸を見せる庶民のドレスを着ている。
「私。ちょっと彼氏と別れたばっかりで少し気分が悪いの」
 そりゃ丁度いい。
「では、一緒にいかがです?今夜。これから歩むために」
「いいですわよ。では、場所変えません。いいところがあるんです」
 女は提案する。
――あーそういうことか
「あーいいぜ」
 場所を変えることにした。


 酒場を出で、夜道を歩いていた。女はずっと腕に抱き着いて離れない。
 キツイ。
「随分、中心街から離れていないか」
 町は寝ている時間帯で静かだか、それでも人気を感じない。先ほどから大通りから外れ、小道に入ってばかりだった。
「静かなところでやりたいの!」
 あざとく言う。
――気持ち悪い。もう付き合いきれん
「おまえ。変装しているだろう」
「え?」
 女は目を丸くする。
「俺はな。そんな女に変装して騙されるほど、そこまでバカじゃない。それに俺の突起が立っていないんだ!」
 すかさず召喚した銃を撃ち出すが、女はすぐに後ろに下がり、回避される。
「ち」
 舌打ちする。
 すぐに銃を構えるが、背後から吸い取られる風が吹く。
「ななな!なんだ!?」
 確認することもできずに何かに吸い込まれる。
 ポッ!


「あれ、ここどこだ?」
 アキセが目を覚めれば、ビンの中にいた。
 どうやら閉じ込められたようだ。しかも小さくなっている。
「よー俺のこと覚えているか」
 巨大な男の顔がビンの中に覗き込む。赤い髪で頭にスカーフを巻いた男。
「はあ?誰だ?」
「ふざけるな!忘れるな!紅孩児だ!紅孩児!」
 紅孩児は怒鳴りながらビンを揺らされる。
「ぐえ!あー思い出した。ジャンヌにセックスしようと思ったけど、逆にやられたバカな奴か!」
 さらにビンを揺らされる。
「何すんだ!酔うだろうが!」
 頭や体がぐらぐらとする。
「酔って吐いてゲロの中で腐ってしまえ!」
 紅孩児が暴言を吐く。
「ん、だと!」
 切れかけた時だった。
「コウガイジ。こんな奴にやられたのか?」
 別の声がした。
 あの時の女がいた。
「おまえ。いつまでその格好しているんだ。戻せ。戻せ」
「うっせーな」
 急に煙が女を包み、煙が晴れた時には、猿の獣人(デミ・ビースト)になった。
「やっぱ、男か」
 変身できるとしたら、魔族よりだろう。
 異形(デミ)種は身体能力を高めるだけであって、潜在能力を得られるのは、魔力をもった魔族のみ。
「やっぱ。リリム相手じゃあハニートラップは無理か」
「そんな女に縁がない男が引っかかるような罠にはまると思うな!」
「最終的に捕まっているくせによく言うぜ。てかこいつが目的じゃないだろ。紅孩児」
「こいつはついでだ」
「は?ついでだ!?」
 雑魚扱いされるのか、イラつく。
「目的はあの聖女だ!」
「ジャンヌ・ダルクって奴か」
 猿の獣人(デミ・ビースト)は首をかしげる。
「俺をこんな頭にしたクソアマだ!」
 アキセは思い出す。
 ジャンヌをセックスしようとしてやり返された。
「あ!おまえ。ジャンヌに頭焼かれたんだよな。布巻いてるのって・・・まさか髪が・・・」
 言いかけたところでビンを揺らす。
 本気で気持ち悪くなってきた。
「あの時の恨みを絶対に晴らしてやる・・・○○とか○○をさせてやる・・・」
 どうやら、かなり恨んでいるようだ。どう考えても自業自得だか。
「それでこの間、おまえのおふくろにたっぷり怒られたのか。聖女にやられたって。魔女の子供のくせにだらしねえ~」
 猿の獣人は小馬鹿する。
 耳を疑うほどのことを聞いた。
「おまえ、魔女の子供か!」
「そうだ。俺様は強いんだ。なのに!こんな人間が使う魔術に頼るリリムになんぞに負けるはずがないんだ!」
 紅孩児は声を上げる。
 決着つけていないし、ジャンヌにやられただけじゃねえか。
 それにあの時の拘束の魔術が効かなかったのか。魔女文字を与え、抗体を持っていたことに納得いく。
――つーか、こいつを生む魔女ってどんな魔女なんだ?
 魔女の正体を考えるよりも今は脱出が先だ。
 銃を召喚し、蓋に引き金を引くが、何も起きない。
「あれ?」
 どうやら魔術を封じる仕掛けがあるようだ。
「逃げても無駄だ。魔術が封じられているんだ。おまえを捕まえるのと引き換えに魔女がくれたんだからだ」
 捕まえる?魔女からくれた?
「それって・・・」
「確か・・・コルン・コボルドだったな」
 コルンめ。
 まさか、コルンと組んでいたとは思わなかった。
「どれ、おまえをまかした女を拝みに行きますか」
「おう。頼んだぜ。ゴクウ」
 ゴクウと呼ばれる猿の獣人は、煙に包まれ、晴れた時にはアキセに変装している。
「俺の変装は完璧だろう」
 ゴクウは見せびらかすが。
「変装するならもっとハンサムにしろよ!」
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