魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
84 / 648

風の魔女たち⑤

しおりを挟む
「ふかががが」
 縄で口まで縛り、木に逆さで吊るしているアキセに聞き耳を持たない。
「え?何?あんたたちはこの風の魔女を懲らしめるためにきたの?」
 ジャンヌは影で抑えられているウィムを指で差す。
「そうなんっすよ。ウィムちゃんを調教しようとコルンに頼んたんすよ。そしたら、丁度泥棒に盗まれたんっすよ」
「あんた、コルンの知り合いだったの・・・」
「サバト仲間ですよ。同然、ウィムちゃんも知ってしまって、首輪を奪われる前に泥棒は拙者で、ウィムちゃんの相手をアニエスにしたんです。けど、手違いがありましたようで」
「はい、あの魔女に踊らされました」
 アニエスは落ち込んでいた。
 アニエスと会った時に魔女はウィムと戦っていたそうだ。アニエスをジャンヌに仕向けるためにウィムが攻撃したという。
「そうだったの。最初から言ってくれれば、ちょ~ノリノリで参加するのに」
「聞いてくれなかったじゃないですか!」
 アニエスは声を上げる。
「だって、同族だから」
 ウィムと同じような悪意のあるイタズラ好きな魔女と増やしたくなく、なめられたくなかったからだ。
「確かに風の魔女ですけど、ウィムちゃんと一緒にしないで下さいっすよ」
「そうなのね。で、この後どうするのよ」
「え~と。まず。アニエスの首輪を外さないと」
 クノは、背後にいるアキセを見ずにクナイを飛ばす。クナイは、アキセの横をかすり、口を拘束して縄を切る。
「は~俺を・・・」
 アキセが言いかけたところで、
「外してくれるよね」
 クノが瞬時にアキセに飛び乗り、アキセの口の中に短刀を入れて、脅迫する。
 アキセが小さく縦に頷く。
「解放する」
 アニエスに着いた首輪が外された時だった。
 突如、赤い霧が発生する。
「何?」
 鼻に刺す匂い。これは血の匂いだった。
「これって・・・」
 奏でる音がする。おそらくアニエスの音だろう。先ほど戦った時もこの音を奏ででいた。
 急に騒がしくなった。
 今度は、砂嵐が吹き荒れる。
 もう次から次へと。やっと晴れたと思えば、拘束したはずのウィムとアキセも消えていた。
 アニエスは弓を出していた。やはり戦闘していたようだ。
クノはぽつんと立っていた。ということは。
「あんたわざと見逃したでしょ」
「ちょっとアニエスにやらせてみただけっすよ」
「先輩。急は辞めてください」
「なんでも拙者に頼ってはいけませんっすよ」
 急に任させるところはアガタを思い出してしまう。
「そうですが、エリニュス様に叱られてしまいます」
 ん?
「そこは一緒に謝りますって。拙者にも責任はありますから」
「ねえ、今さっき、エリニュスって言ってなかった?」
「あれ、言ってなかったすか。羽嵐の魔女エリニュス・エア・ディーラの下で働いているって」
「初耳だ!」
 はねあらしの魔女エリニュス・エア・ディーラは、最古の魔女の1人。『風の女王』と異名を持つ風の支配者である。
「あの魔女。そんな怒らせるようなことしたの」
「そうなんっすよ。エリニュス様の風を使って情報を得ようとしたから」
 クノが答える。
「はあ?」
「つまり、情報を探るために人の物を勝手に使ったんすよ。そりゃ怒りますよ」
「あっそ」
 魔女の事情はよく分からないモノだ。


「今回は助かりましたね。ウィム様」
 ウィムが助けたのは、吸血鬼(ヴァンパイア)のイーグス・フォードだった。
 タイミングを見計らい、赤い霧を放ち、逃がすチャンスを作ったといったところだった。
「なぜ、要請かけなかったですか。お互い協力関係じゃないですか」
 煽るように言う。
「ふん」
 不機嫌そうなウィムは風を吹かせ、何も言わずに消えていった。
 ウィムは下等な魔族に助けられたのに、嫌なのだろう。
「さて、これをどうしましょうか」
 イーグスの手に『奴隷首輪』を持っていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...