魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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風の魔女たち③

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 結局アキセはウィムに連れて込まれた。
 右腕に掴まれながら、頭から地面に叩きつけられる。
「「よし、この指輪を」」
 右手には指輪がある。ウィムは指輪を盗むつもりだ。そうはさせない。
 右腕を払い、すぐさま立ち上がる。距離を取ろうと後ろに下がるが、ウィムに押され、そのまま木にぶつかる。右腕を掴まれ、首に足を踏まれる。
「どういうことだ!ウィム!」
 苦し紛れに言う。
「おまえに関係ない」
「「言うもんか」」
 ウィムが指輪に手を伸ばす。
「「これで奴隷首輪を奪える」」
 なるほど。
 思わず笑ってしまう。
 目的が分かれば、こっちのもの。
 ウィムの首に黒い首輪を召喚する。
「あれ?どうして?」
 ウィムが困惑している。
「似合っているぞ。ウィム」
 笑って返す。
「それだろう。おまえの目的の『奴隷首輪』は」
「なんでこれを・・・」
「いや~コルンの発明品もおっそろしいわ。こんなものでも魔女の心を読めるんだからな」
 ウィムに連れ出された時にこっそり耳に召喚した。
 『おまえの本性を聞かせろイヤー』とふざけた名前だが、耳につければ、魔女でさえ心を読めるコルンの発明品。
 耳につけたイヤカフーを外して見せびらかした瞬間に、強風に飛ばされ、勢いよく木に叩き壊れる。
 相当ウィムはイラ立っているのだろう。
「おいおい。何すんだよ。せっかくのお宝ものを」
「つける相手間違ってない・・・」
 ウィムがイラつきながら言う。
「おまえには散々遊ばれたからな」
 コリコリと手を鳴らす。
 ある時は指輪を盗まれた。ある時は風評被害を受けた。思い出しただけで恨みが増していく。
「何言ってるの。こんな可愛げな魔女に使うなんて、もったいない?使うなら彼女に使いなさいよ」
「ジャンヌにはそれ以外にもできるからいいんだ。さ~て最初の命令は・・・」
と悩んでいた時だった。
 足元の影が大きく伸びる。
「おお~いいセンス持ってますね」
 アキセの足元の影からクノが飛び出す。
「クノ・・・」
 ウィムが怖気け、空へと飛んでいく。
「おまえどこから・・・」
「何言っているんすか。拙者は忍(しのび)を心得ているんすよ。忍ぶためにもどこへでも隠れるものなんすよ」
 何を言っているのか分からない。
 やはり、クノも侮れない。ウィムが苦戦するほどの相手。敵に回られたくない。ウィムでさえ危機察知で逃げるほど。
「逃げるなんて往生際悪いっすよ」
 クノは目に映らない速さでウィムを追いかける。
「頑張ってお仕置きしてくれたまえ」
 去っていく二人に手を振るアキセだった。
「バーカ。本物をつけるかよ」
 指に首輪を回しながら。
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