上 下
76 / 642

複霊の魔女③

しおりを挟む
 一夜明けた。
「ねえ。いつまで落ち込むのよ」
 レオンは、部屋の隅で膝を抱えている。
あれから宿に戻れば、アキセは消えていた。レオンはショックだったのか、明けるまで落ち込んでいる。
「やっぱり自分に押し倒されるのってショックというか、いろいろとなんがモヤモヤしてなんというか・・・」
 複雑な気持ちをなかなか抑え付けられないのだろう。慰めても意味がない。
「レオンから持ち掛けたでしょ。いつまでも落ち込まないで、立ちな。男でしょ」
「そうだ。男だ!」とレオンは立ち上がる。
 ちょろいな。
 男として扱わないためか、男と言われただけですぐに立ち上がった。


「で、どこに行くんだ?」
 町の中を歩くレオンは、ジャンヌに聞く。
「聞き込み調査」
「当てがあるのか?」
「昨日被害者がいたの。その人を聞きにね」
「ふ~ん」
「ねえ。宿の店長おかしくなかった?」
「あ~あのジジィか。まあ、昨日と対応が明らかに違ったよな」
 思い返す。
 宿から出る時だった。
 昨日と打って変わって雑な対応から丁寧な対応に接していた。あまりにも人が変わりすぎていた。
「これも魔女の仕業でいいのか」
「他にいないでしょ。それに・・・」
 ジャンヌは言葉を止める。
「ジャンヌさん?」
 レオンも気付いてくれたようだ。 
「そこのお嬢さん。こんなきれいな方に会えるなんて」
 アキセは目をキラキラ輝かせ、ナンパをしていたからだった。相手も見え見えのナンパに呆れて去っていく。
「あ!行かないでくれ~お嬢さん!」
 去っていく女を情けなく叫ぶアキセが落ち込む。アキセは気が付いたのか、身を固まる。
「げ・・・ジャンヌ・・・」
 冷たい視線を送るジャンヌとレオン。
「行きましょ」
「だな」
 歩き出すジャンヌとレオン。
「ちょ・・・待って!」
 アキセがジャンヌの肩を触る。
「ちょっとどなたか知らないですか、気安く触らないで」
 肩についた手を強く払う。
「そんな冷たいこと言わないで聖女様・・・」
 アキセを無視して歩く。


「結局付いてきやがって」
 アキセも付いてきてしまった。
「これ・・・あれだろ。魔女の仕業だろう。だったら協力する・・・」
 なぜが息を上がっている。
「何よ。あんた。何も関係ないじゃないの」
「いや、関係あるから!『タタリ』にかかっているだろうか!」
「別に普段と変わらないじゃないの」
「だから、これは別の人格なんだ!」
「言い訳がましいな。これが本当の俺です。こんな欲情の塊で申し訳ございません。今すぐ股を切って、真っ当に生きますって」
「オカマになる時点でまともじゃないだろうか!」
「これでストーカーがなくなればなんでもいいわよ!」
 ガミガミとお互い口が止まらない中。
「ジャンヌさん。この家に用あるんじゃなかったのか」
 横に入ったレオンは、一軒家に親指を立てて指す。
「そうだった」
 ジャンヌは玄関の前に立つ。
「あんたは入ってくるな」
 ジャンヌはアキセに指を指し、いいきかせる。
「なんで!」
「あんたが今、発情期真っ盛りだからよ。入ってすぐ相手に飛び掛かりそうで話が聞けないでしょ」
「そこまで暴れるか!」
「あっそ。だったら、レオンの面倒見てよ。狙われているから」
「はあ!なんで俺がこんな中性子と!」
「じゃあよろしく」
 あまり信用できないが、レオンの面倒を見てもらうことにした。
 ジャンヌは扉をノックする。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

Heroic〜龍の力を宿す者〜

Ruto
ファンタジー
少年は絶望と言う名の闇の中で希望と言う名の光を見た 光に魅せられた少年は手を伸ばす 大切な人を守るため、己が信念を貫くため、彼は力を手に入れる 友と競い、敵と戦い、遠い目標を目指し歩く 果たしてその進む道は 王道か、覇道か、修羅道か その身に宿した龍の力と圧倒的な才は、彼に何を成させるのか ここに綴られるは、とある英雄の軌跡 <旧タイトル:冒険者に助けられた少年は、やがて英雄になる> <この作品は「小説家になろう」にも掲載しています>

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

五歳の時から、側にいた

田尾風香
恋愛
五歳。グレースは初めて国王の長男のグリフィンと出会った。 それからというもの、お互いにいがみ合いながらもグレースはグリフィンの側にいた。十六歳に婚約し、十九歳で結婚した。 グリフィンは、初めてグレースと会ってからずっとその姿を追い続けた。十九歳で結婚し、三十二歳で亡くして初めて、グリフィンはグレースへの想いに気付く。 前編グレース視点、後編グリフィン視点です。全二話。後編は来週木曜31日に投稿します。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

処理中です...