魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

濡怨の魔女④

「ここでいいの？」
「うん。いいよ。パパとママが待っているから」
　ジャンヌはロンを町が見えるところまで近づいていた。
　アキセを追い払った後、ロンを探したら、木陰で隠れていた。
　無事で何よりだった。
「うん。お姉ちゃん。ありがとう！」
　ロンは町の中へと消える。
「やっぱ、気のせいか」
　誰かに似ていたようだったが、だとしても認めたくない。
　ジャンヌは去る。


　疲れた。
　魔術で幻術を作れるが、ジャンヌの『光』で消えてしまう。
　コルンの発明品の『偽装人形』を使う。
　口しかない丸い頭と小さい体。柔らかい触感の不気味な人形で、体の一部を人形に食べさせ、その体の情報を元に模倣した体を作る。年齢も調整ができる。人形の脳を握るだけで想い通りに動かし、話したい言葉も考えるだけで言葉を話せる。
　疑惑が晴れ、安堵の溜息を吐く。
「あら、あれで終わり？」
　背後から夜輝の魔女リリス・ライラ・ウィッチャーが現れる。
「やけに今回絡んでくるな」
　不機嫌に返す。
「ゲームの決着を見たかったのよ。子供になったとしても連れて帰ろうと思っていたし」
　危なかった。レオンの二の前になるところだった。
「あんなに可愛かったら、そばに置いとくべきだったわ」
　リリスが後悔したように言う。
「それに普通に終わっちゃったから、面白くなかった」
「あっそ」
　ぶっきらぼうに返す。
「可愛くない」と言って、腰の黒い羽を軽く払い、黒いモヤに包まれる。黒いモヤが晴れた時には、リリスの姿はなかった。
「暇人短気ビッチババめ」と言った瞬間になぜか巨大な岩に押しつぶされる。


　その頃。
「うええええええええええええええええええええん。失敗したあああああああああ」
　今回もアキセ抹殺計画は失敗に終わり、工作の魔女コルン・ゴボルドが泣き叫んでいた。
「話は聞いてやるから」
　コルンを慰める胞子の魔女ピトラ・マッシュ・ミュールだった。