魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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濡怨の魔女②

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「昨日、魔女の家にいた子よね。なんでこんなところにいるのよ?」
 ジャンヌは尋ねる。
「え…そう僕。迷子になっちゃって・・・」
 咄嗟にあざとくいう。正体を見破らないように手を後ろにして指輪を隠す。
「迷子?」
 ジャンヌは疑っている。
「うん・・そうなんだ・・・この先にある町が僕の家があるの・・・」
 苦し紛れにいう。
「そうなの」
 ジャンヌが目線を合わせるようにしゃがみ込む。
「ん~分かった。隣町までは、送ってあげる。丁度その町に行くところだったから」
「え?」
「名前なんて言うの?」
「え・・と・・・ロンです」
 実名明かしたら、殺される。
「ロンね。私はジャンヌよ」
今までに見たことがない優しそうな笑顔を見せるジャンヌだった。


 まだジャンヌにバレていない。
 指輪は紐を通して首につけ、服の中に隠している。
 少し寒気がする。
 子供相手とはいえ、別人で思えるほど優しく対応している。ジャンヌには優しい一面があるってこと。つまり。
――ファーストコンタクト失敗した
 アキセは心底から嘆く。
 それに子供の姿でキスする状況を作れる気がしない。どんな理由でキスを狙えばいい。
 そんなチャンスを作れないまま、夜になってしまった。
 今は川岸の近くに休み、夕飯を終えたところだった。
「食べ終わったら、寝な」
 ジャンヌは焚火を調整しながら言う。
「うん。お休み」
 子供っぽく言いながら、寝たふりをする。
 もう時間がない。リリスのタタリは、朝までにキスをしなければならない。ジャンヌが寝ている隙に狙うしかない。
 ジャンヌも寝たようだ。
 早速実行する。
 音を立てずに寝ているジャンヌに近づく。
 短気な聖女も寝ていれば、愛らしく見える。いつもなら夜這いしたいところだか、今はタタリを解く方が優先。
 ジャンヌに口を近づけようとした時だった。
 急に顔を掴まれる。
「え?」
 しかも力強く。
「何すんじゃ。おまえ!」
 ドスの入った声で発するジャンヌは、力強く投げた。空高く上がり、垂直に顔から砂利に落ちる。子供であるがゆえに痛かった。
 まさか、バレたのかとすぐにジャンヌに向く。
「あれ、ロン?大丈夫?」
――大丈夫じゃない。即死レベルの打撃だ
 ジャンヌがすぐに駆け付けた。体を起こしてもらい、心配そうな目で見つめる。
「本当にごめんね。人違いだったの」
 人違い?まさかとは思うが、反射的に動いただけだったのか。どれだけ体に根付くほど嫌われているのか。これではキスをこっそりできない。
 その時だった。
 腕に冷たい感覚した。
「何?」
 確認すれば、腕に濡れた手が掴まれ、川の中へと引きずられる。
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