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調理の魔女⑤
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「げ!」
「リリス様!」
先ほどまで戦っていたが、リリスが現れたことで、一時停止したように止まってしまう。
「ちょっと早めに来ちゃったけど、もしかして今回のディナーって聖女を使うつもりだったの?オーダーとは違うけど」
リリスは、鋭い目つきでアニアを見つめる。
「違います!この聖女が邪魔しに来たんです!」
ジャンヌに視線を向けられる。
「聖女は真面目ね。私のディナーを邪魔してまで来るなんて」
その時、ジャンヌの横に何かかする。地面に刺したのは、ナイフだった。
顔に血が微かに流れる。
どこから出したのか、その動作も全くしていなかった。
リリスの呪力ははっきり解明されていない。ただ分かっているのは、いつでも瞬時に殺せるってこと。
不可解で最強と言われるリリスには本当に関わりたくない。
「でも、まだコゼットに見てもらってほしいし。どうしようかしら」
リリスが悩んでいた時だった。
「あら」
リリスの視線が変わる。その先に台に縛られていた少年が厨房から覗き込んでいる。
「ふ~ん」
リリスが不気味に笑う。
「リリス様!申しわけございません。今すぐこのアマを」
「ちょっと待って」
リリスは、アニアを止める。
「ねえ、そこの聖女さん」
「何よ」
ジャンヌは返す。
「ここは見逃してくれないかしら」
それは意外な答えだった。
「見逃すって?」
「ここのシェフが作る料理、気に入っているの」
ありがとうございますってアニアは嬉しそうに言っている。
「それに私以外にも常連さんがいるのよ。この意味分かるよね」
リリスは、冷たい目で見つめてくる。
つまり、この店つぶしたら総員かけて襲ってくるといっている。そんな理由で襲われるのも、いやだとジャンヌも思っている。
この場を治めるなら。
「分かった。でもダダで見逃しはいやだわ」
「あら、生意気ね」
「今いる子供たちは解放してくれない。それくらいはいいでしょ」
「でも、それは・・・」
口を出すアニアだか、手を出して止めるリリス。
「いいわよ。そのくらい。気が変わらない内にさっさと出でくれる」
拒否されると思ったが、あのきまぐれで有名なリリスが承諾している。
「アニア」
「はい・・・」
アニアは納得しないまま、厨房の奥へと行く。子供を連れに行ったのだろう。
「また急に嫌とか言わないでよね」
「私はそこまで子供じゃないわよ」
ウソつけ。年増と言われるだけで怒るくせに。
リリスは窓から去っていくジャンヌと子供たちを見ていた。
「あの~リリス様」
アニアは、アーノルドと一緒に縮こまりながら話しかける。
「何かしら」
「申し訳ございません!」
頭を下げるアニア。
「大事な日におもてなしもできず、あのアマに邪魔されて…」
「私。あなたの料理が気に入っているの。聖女ごときになくされちゃ困るのよ」
「それは幸栄ですが…」
「まあ、別の楽しみができたからいいけどね」
リリスは笑顔を見せる。
「え?」
「あ~でも、次はないから」
リリスの見つめる目は、とても冷たく誰もが凍らせるような瞳だった。
「あと店変えときなさい。近いうちに聖女がまたくるわよ」
「承知しました」
ジャンヌは子供たちを町に返した。
翌日、魔女の家はなくなっていた。
さすが魔女。手際が早い。
それにリリスが意外だった。食事を邪魔されたのなら、ご機嫌斜めで殺しにかかると思いきや、子供まで逃がしてくれるとは。何か企んでいるしか考えられない。
後で腹いせに来てほしくないと強く祈りたい。想像しただけで鳥肌が立った。今すぐ、この場を去ろう。
魔女から解放されたアキセは、本来の姿に戻るため、奪う魔力で薬の養分を取ろうとしたが、何も起きなかった。
頭が真っ白になった。
「なぜだああああああああああああああああ」
森の中で悲痛の叫びが響いた。
「リリス様!」
先ほどまで戦っていたが、リリスが現れたことで、一時停止したように止まってしまう。
「ちょっと早めに来ちゃったけど、もしかして今回のディナーって聖女を使うつもりだったの?オーダーとは違うけど」
リリスは、鋭い目つきでアニアを見つめる。
「違います!この聖女が邪魔しに来たんです!」
ジャンヌに視線を向けられる。
「聖女は真面目ね。私のディナーを邪魔してまで来るなんて」
その時、ジャンヌの横に何かかする。地面に刺したのは、ナイフだった。
顔に血が微かに流れる。
どこから出したのか、その動作も全くしていなかった。
リリスの呪力ははっきり解明されていない。ただ分かっているのは、いつでも瞬時に殺せるってこと。
不可解で最強と言われるリリスには本当に関わりたくない。
「でも、まだコゼットに見てもらってほしいし。どうしようかしら」
リリスが悩んでいた時だった。
「あら」
リリスの視線が変わる。その先に台に縛られていた少年が厨房から覗き込んでいる。
「ふ~ん」
リリスが不気味に笑う。
「リリス様!申しわけございません。今すぐこのアマを」
「ちょっと待って」
リリスは、アニアを止める。
「ねえ、そこの聖女さん」
「何よ」
ジャンヌは返す。
「ここは見逃してくれないかしら」
それは意外な答えだった。
「見逃すって?」
「ここのシェフが作る料理、気に入っているの」
ありがとうございますってアニアは嬉しそうに言っている。
「それに私以外にも常連さんがいるのよ。この意味分かるよね」
リリスは、冷たい目で見つめてくる。
つまり、この店つぶしたら総員かけて襲ってくるといっている。そんな理由で襲われるのも、いやだとジャンヌも思っている。
この場を治めるなら。
「分かった。でもダダで見逃しはいやだわ」
「あら、生意気ね」
「今いる子供たちは解放してくれない。それくらいはいいでしょ」
「でも、それは・・・」
口を出すアニアだか、手を出して止めるリリス。
「いいわよ。そのくらい。気が変わらない内にさっさと出でくれる」
拒否されると思ったが、あのきまぐれで有名なリリスが承諾している。
「アニア」
「はい・・・」
アニアは納得しないまま、厨房の奥へと行く。子供を連れに行ったのだろう。
「また急に嫌とか言わないでよね」
「私はそこまで子供じゃないわよ」
ウソつけ。年増と言われるだけで怒るくせに。
リリスは窓から去っていくジャンヌと子供たちを見ていた。
「あの~リリス様」
アニアは、アーノルドと一緒に縮こまりながら話しかける。
「何かしら」
「申し訳ございません!」
頭を下げるアニア。
「大事な日におもてなしもできず、あのアマに邪魔されて…」
「私。あなたの料理が気に入っているの。聖女ごときになくされちゃ困るのよ」
「それは幸栄ですが…」
「まあ、別の楽しみができたからいいけどね」
リリスは笑顔を見せる。
「え?」
「あ~でも、次はないから」
リリスの見つめる目は、とても冷たく誰もが凍らせるような瞳だった。
「あと店変えときなさい。近いうちに聖女がまたくるわよ」
「承知しました」
ジャンヌは子供たちを町に返した。
翌日、魔女の家はなくなっていた。
さすが魔女。手際が早い。
それにリリスが意外だった。食事を邪魔されたのなら、ご機嫌斜めで殺しにかかると思いきや、子供まで逃がしてくれるとは。何か企んでいるしか考えられない。
後で腹いせに来てほしくないと強く祈りたい。想像しただけで鳥肌が立った。今すぐ、この場を去ろう。
魔女から解放されたアキセは、本来の姿に戻るため、奪う魔力で薬の養分を取ろうとしたが、何も起きなかった。
頭が真っ白になった。
「なぜだああああああああああああああああ」
森の中で悲痛の叫びが響いた。
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