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調理の魔女③

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 目を覚めれば、身動きが取れずにいた。
 口に布で縛られているアキセは裸にされ、台の上で大の字に縄で固定されている。
 周囲を確認すれば、厨房にいるようだった。
 それに指輪も奪われている。この近くにはあるようだ。
 指輪と契約を結んでいるため、所在は把握できる。指輪を探そうにも拘束されているから、探せない。
「よ~し、やっとこれで料理ができるわ」
 魔女は、バンダナで髪をまとめ、白い服にエプロンをつけていた。
 指輪の気配を感じる。魔女が指輪を持っている。
 その時だった。
 魔女は親指と薬指を上げ、耳に当てる。
「あ!ピトラ!この間のキノコよかったよ」
 ピトラ。他の魔女と取り合っているようだ。
「それにピトラのおかげで食材間に合えたよ。え?指輪なら今持ってるよ」
 やはり魔女が持っている。それに指輪を知っているとしたら、おそらくピトラはコルンの知り合いでアキセを潰すために組んでいたことになる。
「今日は無理だよ。大事なお客様が来るからダメ。明日持っていくから。またね」
 会話は終わった。
「急がなくちゃ」
 魔女はウキウキしながら包丁を手の中でくるくると回す。
「アーノルドはお迎えして。来たら呼んでね」
 アーノルドは静かに外に出る。
「さ~てと」
 魔女はアキセに向けて包丁を持ち上げる。
 俺の命もこれまでかとアキセがあきらめていた時だった。
 壁が割れ、何かが魔女に当たり、倒れる。
「何よ~」
 魔女が起き上がれば、アーノルドが伸びていた。
「アーノルド!」
 魔女にぶつかってきたのはアーノルドだった。だか、なぜアーノルドが壁を壊すほどまで飛んできたのか。
 その時、白い刃の光が手についた縄を斬る。その刃に見覚えがあった。
「み~つけた」
 その声で希望が見えた。
 ロザリオを持ったジャンヌが壁から現れる。
 アキセは、この時のジャンヌが本当の救いの聖女様だと思ってしまった。


 ジャンヌは町に入ってある事件を聞いた。
 そこでは子供の謎の行方不明事件が起きている。子供は7人消えているそうだ。犯人も見つかっていない。
 魔女以外は関わりたくないが、目の前で誘拐事件が起きてしまった。しかもその犯人が魔女だった。
 すぐに子供を取り戻したが、魔女は逃げてしまった。
 結局この事件は、魔女が関わっていたので、聖女の仕事をするしかない。


「あ!昨日の聖女!よくもアーノルドを!」
「魔女の味方は容赦しない」
 ジャンヌはロザリオを魔女に向ける。
「素直に子供を解放してくれれば、見逃してもいいわよ」
「ふさけるな!昨日といい。今日は絶対に邪魔して溜まるものか!調理の魔女アニア・パティールがぶっ殺す!」
 アニアは狩猟用の銃を出し、ジャンヌを向けて撃つ。ジャンヌは咄嗟にロザリオを前に出し、弾を弾かせる。
 視線を向いた時にはすでにアニアがナイフを構えて迫っていた。
 ロザリオで防ぐが、反動で後ろへ飛ばされる。
「逃がすか!」
 アニアはジャンヌを追いかける。
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