魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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調理の魔女①

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 そこはキノコが多く生えていた。
 小さいキノコから見上げるほどの大きいキノコ。自然な色から奇抜な色など様々なキノコが生えている。
その中で人から生えたキノコの観察をしていた幼女がいた。
 キノコ帽子。たれ目。少し大きい白衣を着ている幼女は、胞子(ほうし)の魔女ピトラ・マッシュ・ミュール。
「え~と。これは・・・」と観察していた時だった。
 ドドドドドドドと何かが近づいてくる。
 扉に振り向き、扉の向こうから泣き声が響いた。
「うええええええええええええええん」
 ピトラの工房に泣きながら工作の魔女コルン・ゴボルドが入ってくる。
「ピトラ!」
 コルンがピトラに抱きつく。
「なんだよ。まだ泥棒にやられたのか」
 研究仲間であるコルンはいつも強盗に悩まされている。魔女でありながら、ただの魔族(アビス)になぜ苦戦しているのか。
「だってだって!どうやっても盗まれるんだもん!防犯対策してもセキュリティかけてもあいつは盗んでくるんだよ!うえええええええええええええん」
 泣きながら訴えてくる。
「どのくらいやられてるの?」
「563も盗まれた」
「結構、やられてるじゃないか」
ピトラは呆れて言う。
「姉さんには相談したの?」
「断られた!」
 幼女の姿をした魔女限定のサバト幼女同盟(リトルウィッチーズ)にコルンと一緒に加盟している。姉さんとは、副会長の速忍(そくにん)の魔女ヤオトメ・クノのことで親しい先輩である。
「忙しいって言って断られた!」
「姉さんはあの女王の下にいるからな。いろいろとわがままに答えているんだろう」
 姉さんは、サバト以外にもある魔女の下にいるらしい。
「助けて~」
 泣きながら言う。
「巻き込まれたくないんだけど」
 呆れたピトラは溜息を吐く。
「じゃあ、これ上げる」
 赤いキノコをコルンに渡す。
「あと、こんなの聞いたんだけど」


「コルン!遊びにきたぜ!」
 陽気なアキセは、廃屋の扉からコルン工房につながる扉を開ける。
 工作の魔女コルン・コボルドの工房の扉は、コルンが操作しない限り、どこかの扉に繋がる。工房を探すのは、海の中から石ころを見つけるほど難しいことだが、アキセは簡単に見つけられる。今回もコルンの作品を盗みではなく借りに来た。
「なんだ。コルンいないのか」
 工房の中を歩く。
 相変わらず、工房の中は部品や工具で散らかしている。どこが作業場と休憩場の境目がよく分からない。
「お。食べ物はっけ~ん」
 アキセは、机の上にあったパンを取り、パンを食べる。
「あんま。おいしくねえな。あいつ、舌までおかしくなったか」
 腹が減っていたので、とりあえずパンを食べ続ける。
 ドドドと部屋の奥から音が近づいてきた。その正体は、工作の魔女コルン・ゴボルドだった。5歳児くらいの幼女の姿をしている。
「あー!盗人!まだ盗みにきたな!」
「コルン。もう食べ物に関心を持てなくなったのか」
「出で行け!」
 コルンは、近くにあったハンマーを投げる。
「おっと」
 すかさず顔を避ける。ハンマーは、誰もいない壁に当たる。
「あぶねえだろ。当たったら怪我するだろ」
「怪我よりも死ね!」
 コルンは、近くにあった道具や部品を投げてきても、アキセは避ける。
「ふん。当たんないぜっ!」
 ぜと当時に100トンと書いてあった鉄の球が腹に当たり、そのまま工房の外へと飛ばされる。
「ぺー」
 舌を出すコルンはドアをバンと大きく閉め、ドアは消えていく。
 鉄の球を寄せ、アキセは起き上がる。
「どこかで似たような突っ込みしやがって・・・」


「ち、何も取れなかった」
 アキセは、今回コルンから発明品を盗めなかったことにイラつきながら森の中を歩いていた時だった。
あれ、周りの木々が段々大きく見えているような。それに歩いていても前になかなか進まない。服も緩んでいるようなと思いながら、木の根に当たり、転んでしまう。思いっきり顔に当たる。顔をさすろうとして、手を顔の前に出す。
 あれ、手が小さいような。まさかと鏡を召喚する。鏡に映ったのは、5歳児まで幼くなっていたアキセの姿だった。
「なんじゃこりゃー!」
 アキセが思わず、大声で叫んでしまう。
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