魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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赤い男②

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 目を覚めれば、どこかの部屋でベッドの上に寝ていた。
 もうこればっか。
 誘拐、監禁に何回も引っかかる自分に嫌になる。
 手には縄が縛られている。体が動けず、力も入らない。
 横を向けば、女を弄ぶコウガイジがいた。大きい椅子に豪快に座り、女たちに囲まれている。女たちは「コウガイジ様~」と甘えた声でコウガイジに寄り沿う。町で聞いた誘拐された女たちだろうか。
「なんだよ。起きたのかよ」
 指を鳴らすと女たちは、唐突に眠った。
 コウガイジは近づき、ジャンヌの上に乗る。
――気安く乗るな。触るな。
 白い炎を放とうにも発動しない。
「動けないだろう」
 コウガイジが見下ろして言う。
「何をした?」
「あ~これを使ったんだ」
 コウガイジが背中から銃を取り出した。
――どこから出した。
 玩具のようなふざけた銃だった。
「確か、相手のエネルギーを吸い取る銃だっけな。これを使えば、聖女もやれると聞いてさ。こりゃいいや」
――何あんなおもちゃにやられたわけ。ふざけんな。
 それに聞いたと言った。聖女にも効く。つまり。
「おい。聞いたって誰から?」
 お願い。ウィムからだって言わないでと必死に祈る。
「ウィムっていう魔女からやりやすい聖女を紹介された」
 まだあの女か。ぶっ殺す。
 やはり予想過ぎて驚かない。
 おそらくウィムはコルンから発明品を盗んだろう。
「魔女の紹介にしても」
 コウガイジがジャンヌの顎を持つ。
「結構な可愛い子でよかった」
「そこにいる女たちを攫っているの。あんたでしょ」
「まあね。俺の趣味なんで」
「悪趣味」
「誰だって男はハーレムの夢を見るもんさ。女に囲まれて好き放題。やり放題。これは何度やっても飽きないね」
「サイテー」
「さてと。いい加減やりたいんだけど」
「くたばれ」
「ん~気が強い女をいじるのも、やりがいがあるんだよな」
 コウガイジが口を近づけようとした時だった。
 突然コウガイジが消えたと思ったら、目の前にアキセがいた。アキセがコウガイジを蹴飛ばしたのだろう。
アキセはコウガイジがいた位置にぴたっと止まる。
「おまえ、どこから!」
 コウガイジは怒鳴る。
「いい趣味してるな」
 見下ろすアキセはすかさず銃を打ち、コウガイジの足元に打つ。
「下手くそ!」
 コウガイジはバカにするが、「バーカ」とアキセは見下ろして返す。
 コウガイジの足元に光った陣から伸びた鎖がコウガイジを絡め、地面に叩きつける。
「ガキ!」とコウガイジが叫ぶが、口も鎖で塞がれる。
「どっちがガキか。そっちで見学してな」
 見学?
「さてと」
 アキセはジャンヌの上に乗る。
 あ。どっちにしても状況が変わんない。
「なぜ、ここに」
 鋭い目つきで睨む。
「ウィムから聞いた」
 ウィムから聞いた。
 コウガイジは情報や銃もウィムから聞いたと言っていた。つまり、これは。
「ねえ。あの魔女に踊らされてる。分かってる?」
「分かってる」
「なぜ」
「セックスできるならなんでもする」
 プチっと思わず血管が切れそうになった。今すぐに殴りたいが体が動けない。
「こんな敵のど真ん中で余裕ね」と口調強めに言う。
「え~こんなジャンヌなんて滅多にないからさ」
 アキセが優しくジャンヌの体をさする。
「触るな」
「つーか。おまえ。なんでそんなに捕まるんだよ。ドジっ子か?」
「違う。みんな悪知恵絞って私を罠にはめさせるからよ」
「誤魔化すなよ。世間一般的にそれをドジっていうんだよ。それにこんなくだりあと何回やるんだ」
「次からない」
「そのセリフ吐いた時点で次もあるんだ」
 横から切れる音がした。アキセが横に向いた瞬間、赤い槍が飛んできた。
「うわ!」
 アキセがベッドから落ちたことで回避された。
「イテテ」
 アキセが頭をさすりながら起き上がる。
「俺様の獲物に手を出すんじゃねえ!」
 ガンを飛ばすコウガイジは、鎖をむしりながら立ち上がっている。
「あれ・・・それなりに強い封印術なんだけど・・・」
 アキセが珍しく目が点になった。
「おまえ。俺様をただの魔族(アビス)と思ってんじゃねえぞ!」
 コウガイジが飛んできた。
 やばっと言ってアキセは部屋を出た。
「待て!」
 コウガイジは追いかける。
 これでやっと安堵の溜息を吐いたが、今すぐに状況を打破しなければと考えた時だった。
 ジャンヌの横に小さな袋が置いてあった。
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