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切兎の魔女④
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森の中で銃声が鳴り響く。
「さっさと死ね!」と言っても弾は、イーグスの赤い剣で弾かれる。
ジャンヌを嫌がらせするためにイーグスの魔力と抗体を奪いたいところだが、そんな余裕がない。
バニーに刺された傷は結界で防いでも、貧血気味でふらつく。長時間戦いたくない。さっさと終わらせたい。
「そうでした。怪我していましたね」
血の匂いで気付いたのか。だか、それが狙いだった。
イーグスは急所を狙いに接近に来る。結界は簡単には壊れない。その油断したところでイーグスを仕留める。
イーグスは赤い剣を構え直し、迫ってくる。
目の前にまで距離が縮んだ。赤い剣が横から腹に刺さしに来ると思いきや、腕が前に出し、顔を当てられる。
頭が混乱する。すぐに態勢を整えなければと敵は待ってくれない。腹に蹴りが入り、木に衝突し、飛ばしてきた赤い刃で腕と足に差し込まれる。
身動きが取れなくなった。
「傷口を狙うと思っていましたか」
イーグスが嫌味たらしく言う。
計画が仇となってしまった。
「君の場合、接近に持ちたくないんでね。特にその手に」
イーグスは睨みつける。
「そもそも君と相手する気はなかったけど、屈辱を味わたいと思いましてね」
この間の恨みが溜まっているらしい。
「まず、その手を切りますか」
赤い剣を持ち返し、少しずつ近づいた時だった。
イーグスの右足に地面から生えた根が絡まれる。
「何?」
突如、土が盛り上がり、イーグスの体を包み込む。
イーグスも身動きが取れなくなった。
「いい気味だな」とアキセはあざ笑う。
「君も言えることじゃないだろ」
「あ」
よく見れば、いつの間にか土から生えた根に体を木ごと巻かれていた。さらに動けなくなった。
「君が仕掛けた割には抜けているんだな」
「土の塊に捕まっている吸血鬼(ヴァンパイア)が言うか?」
仕掛けたのはアキセではない。魔術なら陣や文字が浮かび上がるが、それが見当たらない。自然を操る術と言えば、精霊術。精霊術はエルフしか使えない。アキセまで捕まえるということは知っている者。エルフの知り合いとすれば、その答えが思い浮かんだ瞬間だった。
「あ!吸血鬼(ヴァンパイア)ちゃん見っけ!」
赤い三角帽子。赤目。金髪。鉄の靴。赤と黒のワンピースと胸までの上着。大きいハルバートを持っている少女が立っていた。魔女と一目で理解した。
「もう忘れるところだった」
魔女はイーグスを探していたようだ。
「忘れても構いませんよ」
「どうやって連れて帰ろうかな~」
魔女は無視して考えていると、視線が向けられる。気付かれた。
「ん~」
魔女はじんまりと見つめる。
「まあいっか。材料はいくつあっても困らないし。まとめて抜き取るか」
「何を?」
「真っ赤な真っ赤な赤い染色材~」
ビアンクの指の間に押し子が輪の形をした注射器を出す。
――だめだ。完全に殺しにかかってる
その時だった。
土の円柱が勢いよく伸び、魔女の顔に当たる。その衝撃でハルバードを離す。
「あ・・・ああああああああああああああ」
呻き声を上げる魔女は、顔を抑えながらふらつく。
魔女の前後から土の円柱が伸び、背中と腹に押し付ける。土の円柱に挟まれ、動きを封じられる。
その時、魔女の背後の木陰からジャンヌが飛び出し、白い炎にまとったロザリオで魔女の首を斬る。『光』を含まれた白い炎に焼かれ、消えていく。
「まず一人」とジャンヌは勝利のセリフを吐く。
「さっさと死ね!」と言っても弾は、イーグスの赤い剣で弾かれる。
ジャンヌを嫌がらせするためにイーグスの魔力と抗体を奪いたいところだが、そんな余裕がない。
バニーに刺された傷は結界で防いでも、貧血気味でふらつく。長時間戦いたくない。さっさと終わらせたい。
「そうでした。怪我していましたね」
血の匂いで気付いたのか。だか、それが狙いだった。
イーグスは急所を狙いに接近に来る。結界は簡単には壊れない。その油断したところでイーグスを仕留める。
イーグスは赤い剣を構え直し、迫ってくる。
目の前にまで距離が縮んだ。赤い剣が横から腹に刺さしに来ると思いきや、腕が前に出し、顔を当てられる。
頭が混乱する。すぐに態勢を整えなければと敵は待ってくれない。腹に蹴りが入り、木に衝突し、飛ばしてきた赤い刃で腕と足に差し込まれる。
身動きが取れなくなった。
「傷口を狙うと思っていましたか」
イーグスが嫌味たらしく言う。
計画が仇となってしまった。
「君の場合、接近に持ちたくないんでね。特にその手に」
イーグスは睨みつける。
「そもそも君と相手する気はなかったけど、屈辱を味わたいと思いましてね」
この間の恨みが溜まっているらしい。
「まず、その手を切りますか」
赤い剣を持ち返し、少しずつ近づいた時だった。
イーグスの右足に地面から生えた根が絡まれる。
「何?」
突如、土が盛り上がり、イーグスの体を包み込む。
イーグスも身動きが取れなくなった。
「いい気味だな」とアキセはあざ笑う。
「君も言えることじゃないだろ」
「あ」
よく見れば、いつの間にか土から生えた根に体を木ごと巻かれていた。さらに動けなくなった。
「君が仕掛けた割には抜けているんだな」
「土の塊に捕まっている吸血鬼(ヴァンパイア)が言うか?」
仕掛けたのはアキセではない。魔術なら陣や文字が浮かび上がるが、それが見当たらない。自然を操る術と言えば、精霊術。精霊術はエルフしか使えない。アキセまで捕まえるということは知っている者。エルフの知り合いとすれば、その答えが思い浮かんだ瞬間だった。
「あ!吸血鬼(ヴァンパイア)ちゃん見っけ!」
赤い三角帽子。赤目。金髪。鉄の靴。赤と黒のワンピースと胸までの上着。大きいハルバートを持っている少女が立っていた。魔女と一目で理解した。
「もう忘れるところだった」
魔女はイーグスを探していたようだ。
「忘れても構いませんよ」
「どうやって連れて帰ろうかな~」
魔女は無視して考えていると、視線が向けられる。気付かれた。
「ん~」
魔女はじんまりと見つめる。
「まあいっか。材料はいくつあっても困らないし。まとめて抜き取るか」
「何を?」
「真っ赤な真っ赤な赤い染色材~」
ビアンクの指の間に押し子が輪の形をした注射器を出す。
――だめだ。完全に殺しにかかってる
その時だった。
土の円柱が勢いよく伸び、魔女の顔に当たる。その衝撃でハルバードを離す。
「あ・・・ああああああああああああああ」
呻き声を上げる魔女は、顔を抑えながらふらつく。
魔女の前後から土の円柱が伸び、背中と腹に押し付ける。土の円柱に挟まれ、動きを封じられる。
その時、魔女の背後の木陰からジャンヌが飛び出し、白い炎にまとったロザリオで魔女の首を斬る。『光』を含まれた白い炎に焼かれ、消えていく。
「まず一人」とジャンヌは勝利のセリフを吐く。
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