魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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色無の魔女④

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「コルン~あいつから取り返したけど」と叫んだ瞬間。
「本当!」と木陰から目をキラキラに輝くこうさくの魔女コルン・ゴボルドが現れる。
5歳児の子供の姿。大きい帽子。大きい手袋と靴。作業着のような服を着ている。
「どこから出できた」
「そんなことより早く早く!」
 ジャンヌの質問を無視し、コルンは子供のようにせがんでくる。
「これ…あんたが作った鏡でしょ」
コルンとはアキセの所有物(コルンから盗んだ発明品)を機会があれば、返す約束を交わしている。別に契約を交わしていない。
 割れた鏡をコルンに渡す。
「なんだ。指輪じゃないのか。しかも割れているし」
 残念そうに言う。
「じゃあ、いらないね」
「いるいる!」
 コルンに渡す。
「なんで分かったの?ワイのって」
「出所があいつだったから」
 あいつとはアキセのことである。以前、名前を言えば現れるから。
「いつの間に・・・」
 コルンは恨みに言う。
盗まれたことに気付いていない。だからアキセに盗まれるのか。
「で、この鏡なんなの?」
 コルンが作ったものなら、ただの鏡ではない。
「これ、ただの鏡だよ」
「え?そうなの?」
 思わず驚いてしまった。
「なんで驚くの?」
「意外に普通のモノを作るんだなって」
 ホント以外に。
「誰だって自分のモノ盗まれたらいやでしょ」
「そうね・・・」
 魔女から一般論を言われるとは思わなかった。
「鏡っていろいろと使えるんだよね。全てを解く意味もあれば、異界に繋がる意味合いもある。結構便利アイテムなんだよね~それに鏡にはおっかない魔女もいるからね~」
「魔女のあんたから言うセリフか」
 鏡に関する魔女と言えば、最古の魔女の1人であるまよいかがみの魔女ニトクリス・ミラ・クリエリアが鏡の中にいると訊いたことがある。本体である鏡が割られ、消える前に鏡の中に逃げたという。
「そうだ!この鏡でいいこと思いついたっと」
 コルンは何か思いついたらしく、ルンルン気分で扉を開け、工房に去った。


 たまに最古の魔女に近い強さを持つ魔女も生まれる。
 その場合、早目に対処する。これ以上最古の魔女を生まれさせないため。
 今回の魔女、強調性、承認欲求が高かったから、色をつきたかった。色を付けるために広範囲に色を奪い、『光』まで吸収した。逃していたら、今以上に厄介だったかもしれない。
 それにレスは自身が醜いことを忘れていた。鏡で自身を見せても認めなかった。
 魔女の弱点は、鏡ではなく、自身が醜いと思い出すこと。
 わざわざ鏡を作らなくても、崩れた姿を認めればいい。わざと砕けた『光』の結晶の壁を作った。読み通り。自分の姿すら分からず、自身の顔が醜いことにショックし、自滅した。
もしかしたら、自分の顔を見たくないから自身の色や記憶を失くしたのだろうか。魔女ならありえる。
 だから、かざなりの魔女は彼女が「愚かだ」と言ったのだろう。 
 ん?待てよ。
 ジャンヌはふと気付く。
 アキセが鏡を落としたこととウィムが教えてくれたこと。いくらなんでも都合がよすぎる。
「もしかして。あいつら組んでいたな・・・」
 ジャンヌは頭を抱える。


アキセは遠くでジャンヌを木の上から片足をぶら下げながら木に寄りそっていた。
「うわ!」
 突然耳元で響き、驚く。
態勢を崩し木から落ちそうになるも、必死に枝にしがみつき、落下の阻止をする。
 聞いたことがある笑い声がした。
 正体を確かめると、風鳴の魔女ウィム・シルフが笑っている。
「急に出るな!」
「あら、落としとけばよかった」
 ウィムはイタズラな笑みを見せる。
「ねえ。なんであんな回りくどいことしたの?せっかく教えてあげたのに」
「そのセリフをそのまま返す」
 アキセが目を細めてウィムに言う。
「あたいは、聖女にいじめられたから、ヒントしか教えなかったのよ」
「他にもあるだろ」
「え~あんな魔女が暴れたら迷惑だし。巻き込まれたくないし。それに君に話したらどうなるのかなって」
 ウィムはイタズラな目で見つめる。
――さすが魔女ですわ。
 魔女は、自分の手を汚さずに相手にやらせる。よくあること。
「あいつがまともに聞くと思うか」
「彼氏なら話を聞いてくれるんじゃないかなってね」
「彼氏ね・・・」
「彼女いなくなったら嫌だもんね」
 ウィムは笑いながら鈴の音とともに去っていった。
「そんなんじゃねえよ。あいつとは・・・」
 アキセは小さくつぶやく。
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