魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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盗憐の魔女①

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 ジャンヌは笑っている。
 なぜなら、独房に黒いタキシードを着たアキセが捕まっているからだ。
「まだ笑うか」
 アキセは不機嫌そうに言う。
「これは笑わせずにいられないわよ。一生笑える。あーダメ。あははは」
 ジャンヌは腹に抱えて笑い続ける。
「だって。こんな機会ないもの。今まで溜まった鬱憤を返せたし。こんなことで捕まるなんてね。しかもその服で。くふふふふ」
「そうだよな。わざわざここまでするんだもんな」
 独房の中にいるアキセは、地面に刺さっている木の板の枷に手と顔をはめられている。
アキセの奪う魔力の対策でつけた。
「そうしないと、あんた逃げるもの。まあ念の為にね」
 ジャンヌは、笑うのは止めない。
なぜ、このようなことになったのは、時間が大部さかのぼる。


 数日前

「ねえ、盗賊さん。これは誰の刺し向けかな」
 ジャンヌは、笑顔で盗賊に問い詰めていたところだった。
 最近アキセを見ていない。気が楽になると思ったら、比例して盗賊が襲われるようになった。倒しても次々に現れるようだったので、倒して、盗賊の頭と思われる男に問い詰めることにした。
「え~と、アキセという男です」
 すぐに吐いた。
「やっぱり…」
 想像通りで何も驚かない。
「言ったので、許してくれますか?」
「ん~ダメ」
 一発殴る。


 やはりアキセの仕業だった。
今回は何を企んでいると思いながら、別れ道に着く。二つある。木に張り付いている案内板は矢印の形で『ペネリチェ』と町の名前が書いてあった。
「こっちか」
 案内板に従って歩いてから1時間のことだった。
「おかしい」
 町は、大きい川の近くにあると訊いている。川どころか山の中に入っていく一方だった。疑いながら歩いていた時だった。
「あれ、お嬢さん!」
 通りすがりの荷馬車に乗った中年男に声をかけられた。
「今から行ったら野宿になっちまうよ」
「町に行きたいんだけど」
「町でペネリチェのことなら、ここと反対方向だけど」
「え?」
 遠回りに歩いていたらしい。
「ワシもその町に寄るところだったんじゃ。送ってもいいぞ」
「いいんですか。ありがとうございます!」
 ラッキー。
 ジャンヌは、中年男のご厚意に甘えて、荷馬車に乗った。
「もしかしてお嬢さんも怪盗の噂を聞いて町に来たのか」
「え?怪盗?」
「なんだ。知らんのか。噂だとなんでも盗めるらしくでな。才能とか心と」
「何それ?」
「さあな、噂で聞いたくらいだからな。んで、その怪盗目的で若い女が集まっているらしい」
「はあ…」
 呆れる声でいう。それに話を聞く限りものすごく心当たりがする。予想が外れますように必死に心の中で祈る。
「まあ、その怪盗が現れる以前に、別の怪盗がいたんだけどな」
「何?他にもいるの?」
「いたらしい。どっちかというと今はその怪盗が話題らしい」
「へ~」
「あ。案内板がこわれとる」
「え!?」
 いつの間にか分かれ道に戻っていた。
 これもアキセの仕業だとは考えたくない。
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