魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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蛙恋の魔女④

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「逃げないでケロ!」
 アキセは魔女から逃げるために屋敷中を走り回っていた。
 指輪をなくてはただの人間と変わらない。奪う魔力は、攻撃向けの魔力ではない。戦うこともできず、逃げ回っていた。
 中庭にやっと出られたと思ったが。
「待って~」
 背後から衝撃して、地面に倒れる。
 捕まってしまった。
 顔を上げれば、ウエディングドレスを着ている魔女が背中に乗っていた。
「つかまえたケロ。もう!恥ずかしかりさんけ!もうちょっと待ってケロ。結婚式はもうすぐできるんだから。式場とか飾とか指輪とか・・・」
 魔女が黙り込む。
「指輪が用意してない!」
 魔女が声を上げる。
「どうしよう~結婚の証か~」
 魔女が困っていたところに。
「ケロケロ(ひめさま)」
 マントカエルが指輪を持ってきた。しかもその指輪はアキセの物だった。
「それは!」
「ナイス!」
 魔女はマントカエルから指輪を受け取る。マントカエルは静かに下がる。
「ちょっと地味な指輪だけど、いいケロ」
 指輪が魔女の手に。
 仕方がない指輪を取り戻すために結婚に付き合うしかない。
「ちょっといいか」と魔女をどかせ、体を起こす。
 魔女の肩を掴み、真剣な眼差しを向ける。
「よし、ここで今すぐやろうではないか」
「やっと・・・私を・・・」
 見つめ合い、魔女が油断している間に指輪を奪うが。
「でも、結婚はちゃんと式立てなきゃ」
 かわされる。
「そこまでしなくてもいいんじゃないのか」
「ダメよ。結婚式は女の夢よ。かなえさせてケロ」
「式を挙げるまで必要か?愛は形で見せるものじゃないだろう」
――うわ~今の一言恥ずい
「なら、なおさら式を上げなきゃケロ」
「そんなこだわらなくても・・・」
 その時だった。
「ん?これは?」
 魔女が鋭い目つきをしたとたん、急に騒がしくなった。
 ケロと悲鳴を上げながら、近づいてくる。
「着いたっと」
 中庭から現れたのはジャンヌだった。
 それにジャンヌの肩にカエルが乗せている。おそらくレオンがジャンヌを連れてきたのだろうか。
 その時、ジャンヌの目が点になった。
「ごめん。お邪魔だった」
 ジャンヌは去ろうとする。
「おい!助けに来たんじゃないのか!」
 すぐに声を上げる。
「ええ。祝いの日を荒らしたらダメでしょ」
――クソ!全く助ける気がない!
「何?祝ってくれるの?祝って祝って!」
 先ほどまで警戒した魔女の顔が緩くなった。
「い~わ~う!一生彼から目を離さないほど暮らしてね」
 ジャンヌもノリに乗って帰ろうとする。
 ヤバい。確実に結婚させるつもりだ。そうはさせない。
「聞いてくれ」
 アキセは真剣な眼差しで魔女を見つめる。
「あの女は、俺のストーカーなんだ。しかも質が悪い」
「おい」
 野太い声を出すジャンヌ。
「でも、祝ってくれてるケロ?」と魔女は首をかしげる。
「違うんだ。油断させて、この結婚式を乗っ取るつもりなんだ」
「待てこら」
 ジャンヌは突っ込むが無視する。
「なんて、あくどい女ケロ。騙されるところだったケロ」
「ほっといて行こう」
 ジャンヌが去ろうとしたが。
「ダーリン!任せて!蛙恋(あれん)の魔女ケミー・ゲロ・ゲロルが退治させてやる!」
 ケミ―は、手に鉄球を付けた長い棒を持ち、ジャンヌに迫ってくる。
 鉄球棒を思いっきり振り下ろす。ジャンヌは後ろに避け、地面が大きく地割れする。
「せっかく祝ってあげるのに。だったらストレス発散に付き合ってもらうわ!」
 ジャンヌも懐からロザリオを出し、向かってくる。
 作戦は成功したが、指輪は魔女が持ち込んだままだった。
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