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優美の魔女⑤
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一番察したのは、魔女が森だけでなく、川まで破壊しようとしたことだった。
砂漠化を進めるだけでなく、弱点を潰したかったのだろう。
推測しかなかったので、まずアキセの魔術で水の効果を試すことが一つ。
次にジャンヌの『光』でも対処できるのか。
水が弱点なのは、アキセの魔術で判明した。
だか、『光』の抗体が強かったことは予想外だった。
『光』の抗体が高いが水に弱い魔女。
ここまで分かれば、最終手段を使う。
それは、『タタリ』から解放されたエルフたちが川を取り戻し、魔女に水を浴びせるというという作戦だった。
おびき寄せるためにも魔女を騙す必要があった。
そこでアキセは、日差しが強かったのか、魔術ではなく、コルンの発明品を使った。
『騙され香呂』
セットについている森や海などの香りを使って、幻覚を作る品物だった。
どこに撃っても当たるように、香呂に術を仕込んだようだ。
「とりあえず、作戦はいったようだな」
「そうね」
ジャンヌとアキセは川岸から川を眺めていた。
「これで・・・あ!」
「なんだよ」
アキセが訊く。
「いや、これ以上いったら、何か起こりそうだから!」
その瞬間、足に冷たい感覚に襲われる。見れば、ジャンヌの足に手が掴んでいた。おそらくクレオパトラだろう。
「あ!」
引きずられる。
咄嗟にアキセのコードを掴む。
「おま!」
ジャンヌとアキセは川の中に引きずられた。
泳げない。ジャンヌは炎を扱うのか、反射的に泳げない。
それに魔女の最期の足掻きは質が悪い。道連れに川に引きずり込んだ。
息苦しい中、何かに引っ張られる。
やっと息が吸え、流れてきた流木に掴む。
「おまえ。俺を巻き込むな・・・」
アキセが助けたようだ。
「だって、逃げるでしょうが・・・協力するなら、最後まで付き合いなさいよ」
「夜まで!?」
「違う!」
――こんな状況で何を言っているんだ。
空気読めずにアキセは言う。
このままでは流れてしまう。
早く岸に上がらなければと思った矢先だった。
背後から轟音がした。
「なんだ?」
振り返れば、土人形が迫ってくる。
「げ!?まさか魔女?」
「他にいると思う?」
川に襲われたクレオパトラは、土人形のようになった。
体を戻せないほど、弱まっているだろう。
砂で操ることはできない。体で押し倒すつもりだ。
ジャンヌは親指と人差し指を伸ばし、白い炎を弾のように飛ばす。白い炎はクレオパトラの頭に当てる。白い炎に包まれ、悲鳴と共に川の中へと消える。
「終わってない!」
まだ安心ができなかった。
その先に滝があったからだ。
「ちょ!何とかできないの!」
「おまえがいるから、魔術が使えないんだ」
聖女の『光』に浄化され、魔術を使えない。
「コルンの発明品があるでしょうが!」
と思ったら、もうすぐ滝に近づいていた。
もう覚悟した時だった。
「あれ?」
落ちなかった。それは水がジャンヌとアキセをすくい上げたからだ。
水が優しく川岸にジャンヌとアキセを置いた。
「大丈夫ですか?」
その声はカナエだった。
カナエは、エルフの精霊術で川を操り、ジャンヌとアキセを川からすくい上げたおかげで、落ちずに済んだ。
魔女が退治したため、エルフにかかった『タタリ』は、無事に解けた。
話に訊いた通りの美しさに戻った。
その夜、お礼に御馳走をしてもらった。
美味しかった。
エルフの食べ物は、肉や果物といった料理が多く、とても美味だった。お腹が満たされば、眠気を誘われ、その日の夜は、ゆっくり休めた。
もう少し休めたいが、あまり長居するつもりがなかった。
二日目の日が昇ってから、村に出る時だった。
「待って下さい!」
振り返れば、カナエが追いかけてきた。
「もう行くんですか?もう少し休まれては?」
「聖女は多忙なのよ」
もう少し休みたいのもあるが、長居すれば、聖女狙いに魔女が来る可能性もあるからだ。
「村を代表してお礼をいいます。ありがとうございます」
カナエはお礼を言う。
「聖女の仕事をしたまでよ」
ジャンヌは返す。
「あともう一つよろしいですか?」
「何よ・・・」
少し不機嫌に言う。また頼まれるかもしれないからだ。
「あの男を見てませんか?」
「あの男って・・・あ!」
アキセか。そういえば、いつの間にかいない。
「あいつね。見てないけど・・・」
何かしたのだろうか。
「実は、あの後、何人か一族と夜やったそうで・・・」
そういえば、夜、アキセが襲って来なかったような。他のエルフと夜やっていたのか。さすが、リリスの子供なだけある。
「いつの間に・・・」
「何人かのエルフが復讐に燃えて探しています」
「多分、逃げてるわよ」
「やはりそうですか・・・」
「まあ、私がその分。ヤツに鉄槌を与えるよ」
「よろしくお願いします」
その依頼は受け入れる。
「じゃあ。私はここで」
ジャンヌは歩き出す。
「ご武運を祈ります」
カナエが言い、ジャンヌは振りかえもせず、歩いていった。
砂漠化を進めるだけでなく、弱点を潰したかったのだろう。
推測しかなかったので、まずアキセの魔術で水の効果を試すことが一つ。
次にジャンヌの『光』でも対処できるのか。
水が弱点なのは、アキセの魔術で判明した。
だか、『光』の抗体が強かったことは予想外だった。
『光』の抗体が高いが水に弱い魔女。
ここまで分かれば、最終手段を使う。
それは、『タタリ』から解放されたエルフたちが川を取り戻し、魔女に水を浴びせるというという作戦だった。
おびき寄せるためにも魔女を騙す必要があった。
そこでアキセは、日差しが強かったのか、魔術ではなく、コルンの発明品を使った。
『騙され香呂』
セットについている森や海などの香りを使って、幻覚を作る品物だった。
どこに撃っても当たるように、香呂に術を仕込んだようだ。
「とりあえず、作戦はいったようだな」
「そうね」
ジャンヌとアキセは川岸から川を眺めていた。
「これで・・・あ!」
「なんだよ」
アキセが訊く。
「いや、これ以上いったら、何か起こりそうだから!」
その瞬間、足に冷たい感覚に襲われる。見れば、ジャンヌの足に手が掴んでいた。おそらくクレオパトラだろう。
「あ!」
引きずられる。
咄嗟にアキセのコードを掴む。
「おま!」
ジャンヌとアキセは川の中に引きずられた。
泳げない。ジャンヌは炎を扱うのか、反射的に泳げない。
それに魔女の最期の足掻きは質が悪い。道連れに川に引きずり込んだ。
息苦しい中、何かに引っ張られる。
やっと息が吸え、流れてきた流木に掴む。
「おまえ。俺を巻き込むな・・・」
アキセが助けたようだ。
「だって、逃げるでしょうが・・・協力するなら、最後まで付き合いなさいよ」
「夜まで!?」
「違う!」
――こんな状況で何を言っているんだ。
空気読めずにアキセは言う。
このままでは流れてしまう。
早く岸に上がらなければと思った矢先だった。
背後から轟音がした。
「なんだ?」
振り返れば、土人形が迫ってくる。
「げ!?まさか魔女?」
「他にいると思う?」
川に襲われたクレオパトラは、土人形のようになった。
体を戻せないほど、弱まっているだろう。
砂で操ることはできない。体で押し倒すつもりだ。
ジャンヌは親指と人差し指を伸ばし、白い炎を弾のように飛ばす。白い炎はクレオパトラの頭に当てる。白い炎に包まれ、悲鳴と共に川の中へと消える。
「終わってない!」
まだ安心ができなかった。
その先に滝があったからだ。
「ちょ!何とかできないの!」
「おまえがいるから、魔術が使えないんだ」
聖女の『光』に浄化され、魔術を使えない。
「コルンの発明品があるでしょうが!」
と思ったら、もうすぐ滝に近づいていた。
もう覚悟した時だった。
「あれ?」
落ちなかった。それは水がジャンヌとアキセをすくい上げたからだ。
水が優しく川岸にジャンヌとアキセを置いた。
「大丈夫ですか?」
その声はカナエだった。
カナエは、エルフの精霊術で川を操り、ジャンヌとアキセを川からすくい上げたおかげで、落ちずに済んだ。
魔女が退治したため、エルフにかかった『タタリ』は、無事に解けた。
話に訊いた通りの美しさに戻った。
その夜、お礼に御馳走をしてもらった。
美味しかった。
エルフの食べ物は、肉や果物といった料理が多く、とても美味だった。お腹が満たされば、眠気を誘われ、その日の夜は、ゆっくり休めた。
もう少し休めたいが、あまり長居するつもりがなかった。
二日目の日が昇ってから、村に出る時だった。
「待って下さい!」
振り返れば、カナエが追いかけてきた。
「もう行くんですか?もう少し休まれては?」
「聖女は多忙なのよ」
もう少し休みたいのもあるが、長居すれば、聖女狙いに魔女が来る可能性もあるからだ。
「村を代表してお礼をいいます。ありがとうございます」
カナエはお礼を言う。
「聖女の仕事をしたまでよ」
ジャンヌは返す。
「あともう一つよろしいですか?」
「何よ・・・」
少し不機嫌に言う。また頼まれるかもしれないからだ。
「あの男を見てませんか?」
「あの男って・・・あ!」
アキセか。そういえば、いつの間にかいない。
「あいつね。見てないけど・・・」
何かしたのだろうか。
「実は、あの後、何人か一族と夜やったそうで・・・」
そういえば、夜、アキセが襲って来なかったような。他のエルフと夜やっていたのか。さすが、リリスの子供なだけある。
「いつの間に・・・」
「何人かのエルフが復讐に燃えて探しています」
「多分、逃げてるわよ」
「やはりそうですか・・・」
「まあ、私がその分。ヤツに鉄槌を与えるよ」
「よろしくお願いします」
その依頼は受け入れる。
「じゃあ。私はここで」
ジャンヌは歩き出す。
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