魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

文字の大きさ
上 下
41 / 648

優美の魔女⑤

しおりを挟む
 一番察したのは、魔女が森だけでなく、川まで破壊しようとしたことだった。
 砂漠化を進めるだけでなく、弱点を潰したかったのだろう。
 推測しかなかったので、まずアキセの魔術で水の効果を試すことが一つ。
 次にジャンヌの『光』でも対処できるのか。
 水が弱点なのは、アキセの魔術で判明した。
 だか、『光』の抗体が強かったことは予想外だった。
 『光』の抗体が高いが水に弱い魔女。
 ここまで分かれば、最終手段を使う。
それは、『タタリ』から解放されたエルフたちが川を取り戻し、魔女に水を浴びせるというという作戦だった。
 おびき寄せるためにも魔女を騙す必要があった。
 そこでアキセは、日差しが強かったのか、魔術ではなく、コルンの発明品を使った。
『騙され香呂』
 セットについている森や海などの香りを使って、幻覚を作る品物だった。
 どこに撃っても当たるように、香呂に術を仕込んだようだ。
「とりあえず、作戦はいったようだな」
「そうね」
 ジャンヌとアキセは川岸から川を眺めていた。
「これで・・・あ!」
「なんだよ」
 アキセが訊く。
「いや、これ以上いったら、何か起こりそうだから!」
 その瞬間、足に冷たい感覚に襲われる。見れば、ジャンヌの足に手が掴んでいた。おそらくクレオパトラだろう。
「あ!」
 引きずられる。
 咄嗟にアキセのコードを掴む。
「おま!」
 ジャンヌとアキセは川の中に引きずられた。



 泳げない。ジャンヌは炎を扱うのか、反射的に泳げない。
 それに魔女の最期の足掻きは質が悪い。道連れに川に引きずり込んだ。
 息苦しい中、何かに引っ張られる。
 やっと息が吸え、流れてきた流木に掴む。
「おまえ。俺を巻き込むな・・・」
 アキセが助けたようだ。
「だって、逃げるでしょうが・・・協力するなら、最後まで付き合いなさいよ」
「夜まで!?」
「違う!」
――こんな状況で何を言っているんだ。
 空気読めずにアキセは言う。
 このままでは流れてしまう。
 早く岸に上がらなければと思った矢先だった。
 背後から轟音がした。
「なんだ?」
 振り返れば、土人形が迫ってくる。
「げ!?まさか魔女?」
「他にいると思う?」
 川に襲われたクレオパトラは、土人形のようになった。
体を戻せないほど、弱まっているだろう。
砂で操ることはできない。体で押し倒すつもりだ。
ジャンヌは親指と人差し指を伸ばし、白い炎を弾のように飛ばす。白い炎はクレオパトラの頭に当てる。白い炎に包まれ、悲鳴と共に川の中へと消える。
「終わってない!」
 まだ安心ができなかった。
 その先に滝があったからだ。
「ちょ!何とかできないの!」
「おまえがいるから、魔術が使えないんだ」
 聖女の『光』に浄化され、魔術を使えない。
「コルンの発明品があるでしょうが!」
 と思ったら、もうすぐ滝に近づいていた。
 もう覚悟した時だった。
「あれ?」
 落ちなかった。それは水がジャンヌとアキセをすくい上げたからだ。
 水が優しく川岸にジャンヌとアキセを置いた。
「大丈夫ですか?」
 その声はカナエだった。


 カナエは、エルフの精霊術で川を操り、ジャンヌとアキセを川からすくい上げたおかげで、落ちずに済んだ。
 魔女が退治したため、エルフにかかった『タタリ』は、無事に解けた。
 話に訊いた通りの美しさに戻った。
 その夜、お礼に御馳走をしてもらった。
 美味しかった。
エルフの食べ物は、肉や果物といった料理が多く、とても美味だった。お腹が満たされば、眠気を誘われ、その日の夜は、ゆっくり休めた。
 もう少し休めたいが、あまり長居するつもりがなかった。
二日目の日が昇ってから、村に出る時だった。
「待って下さい!」
 振り返れば、カナエが追いかけてきた。
「もう行くんですか?もう少し休まれては?」
「聖女は多忙なのよ」
 もう少し休みたいのもあるが、長居すれば、聖女狙いに魔女が来る可能性もあるからだ。
「村を代表してお礼をいいます。ありがとうございます」
 カナエはお礼を言う。
「聖女の仕事をしたまでよ」
 ジャンヌは返す。
「あともう一つよろしいですか?」
「何よ・・・」
 少し不機嫌に言う。また頼まれるかもしれないからだ。
「あの男を見てませんか?」
「あの男って・・・あ!」
 アキセか。そういえば、いつの間にかいない。
「あいつね。見てないけど・・・」
 何かしたのだろうか。
「実は、あの後、何人か一族と夜やったそうで・・・」
 そういえば、夜、アキセが襲って来なかったような。他のエルフと夜やっていたのか。さすが、リリスの子供なだけある。
「いつの間に・・・」
「何人かのエルフが復讐に燃えて探しています」
「多分、逃げてるわよ」
「やはりそうですか・・・」
「まあ、私がその分。ヤツに鉄槌を与えるよ」
「よろしくお願いします」
 その依頼は受け入れる。
「じゃあ。私はここで」
 ジャンヌは歩き出す。
「ご武運を祈ります」
 カナエが言い、ジャンヌは振りかえもせず、歩いていった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

悪役令嬢は処刑されました

菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

聖女召喚

胸の轟
ファンタジー
召喚は不幸しか生まないので止めましょう。

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

1人生活なので自由な生き方を謳歌する

さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。 出来損ないと家族から追い出された。 唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。 これからはひとりで生きていかなくては。 そんな少女も実は、、、 1人の方が気楽に出来るしラッキー これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

処理中です...