上 下
40 / 642

優美の魔女④

しおりを挟む
 クレオパトラが壁を壊したおかげで、広い外へ出られた。
 エルフから離れるためでもある。
 ただ狭い室内から抜けられても、外は砂地だった。
 クレオパトラは砂を操る。どう考えても魔女の有利な環境に誘われたとも言える。
 周囲から砂が蛇のように襲いかかる。
 今は日中、『光』は無限に使える。
 足元から砂地を覆うように白い炎の海に広げ、砂の蛇は、ただの砂へと戻る。
「へ~力が無限に使えると便利よね」
 クレオパトラが壊れた壁から現れた。いつの間にか体型が戻っていた。
「なんで戻すのよ。ありのままでいいんじゃないの」
「女は化けるのも魅力の一つなのよ」
「そんなの知らない」
「あのガキどこにいった?」
 そういえば、いつの間にかアキセが消えていった。逃げてはいないと思うが。
「どっちにしても生かして返さない。それにいつまでモツかしらね」
 その時、クレオパトラに白い炎をぶつけるが、目を疑ってしまった。
クレオパトラは盾もなしにまともに受けたにもかかわらず、傷がない。
「私、結構強いの」
 クレオパトラの背後から砂の蛇が襲う。
 白い炎を砂の蛇を貫通し、クレオパトラに当てても、傷一つなかった。
 まさか、『光』の抗体が高いとは。
 今回も骨が折れそうだ。
 その時、銃声がした。
クレオパトラの腹に何か当たったようだ。
「ただの弾で私が・・・」と言いかけたところでクレオパトラの体から水が噴射する。
「あああああああああ」
 クレオパトラは悲鳴を上げる。
「おお~効いてる」
 何もないところから空気をめくるようにアキセが姿を見せる。
「いたの」
ジト目でアキセを見つめる。
「一応作戦の一部なんで」
 アキセは『なんでも遮断マント』に隠れていた。隙を見て銃を撃ったところだろう。
「魔女に何をしたの。しかもこんな日中じゃ、まとも魔術も使えないのに」
 魔術は、『呪い』を利用する。しかし、『光』が溢れる日中で『呪い』は減少し、威力が弱まる。
「そんな環境でも使えるように開発した弾なんだ。相手の『呪い』を使ってな。ちなみに今回は体内から水があふれる術だよ」
「・・・またえぐい術を・・・」
「でもあれじゃあ、足りない」
 弱点が水で分かっていても、完全消滅はできない。
 『光』で浄化しようにも、『光』の抗体が高い。長期戦になる。
だったら。
「次に出る」
 ジャンヌは、アキセに声をかけて走る。
「はいはい」とアキセは呆れた声でジャンヌを追いかける。


 遺跡から離れ、森の中を走る。
 その背後には砂の蛇が襲ってくる。
「本当に殺してやる!」
 クレオパトラは、醜い姿になり、ドシンドシンと巨人が歩いているような音を立てながら歩いていく。
「もうあんた。相当恨まれてるわよ」
「大丈夫。ジャンヌが代わりに倒してくれるから」
 確かにやるけど。
森を抜ければ、広い砂利に着く。
「砂から離れたからって勝てると思うな!」
 醜いクレオパトラは砂の蛇に指示をする。
 砂の蛇が迫ってくる。
 避けるが、砂利についたとたんに砂の蛇は、砂嵐となった。
 目が開けられないほど砂嵐が激しくなる。
 まだ近くにアキセはいる。
 日差しが届かなくなり、周りも見えない。
 だか、結局魔女で作った砂嵐に過ぎない。一気に白い炎でかき消そうとした時、砂嵐から砂の蛇が襲いかかる。
「こいつら!」
『光』を使わせないつもりだ。
 アキセと離れた瞬間、醜いクレオパトラがアキセに迫ってきた。やはりクレオパトラはアキセに相当恨みを持ったそうだ。
 ジャンヌには砂嵐から砂の蛇が次々に襲いかかり、ロザリオで切りつけた時だった。
 口笛が響く。
「きた」
 ジャンヌは白い炎を上に打ち出す。白い炎は上空を爆発し、砂嵐を消し払う。
 砂利と木だけの風景になった。
 アキセはクレオパトラと距離を取り、
「さあ。種明かし!」と銃をクレオパトラに撃つ。
 魔女を狙うわけではなかった。
「どこを狙って・・・」
 バリっ!
 ガラスが割れたような音がした。
 ジャンヌとアキセは、さらにクレオパトラと距離を取る。
 徐々に霧が晴れるように景色が変わる。
「ここは・・・」
 クレオパトラの前に巨大な土の壁に立っていた。
 その上にカナエを含めエルフたちがいた。
 一斉にエルフ語で精霊術を放つ。
 土壁に亀裂が走り、水が漏れる。
 大量の水がクレオパトラに襲いかかる。
 その壁は、クレオパトラが封じた川だった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

父が再婚してから酷い目に遭いましたが、最終的に皆罪人にして差し上げました

四季
恋愛
母親が亡くなり、父親に新しい妻が来てからというもの、私はいじめられ続けた。 だが、ただいじめられただけで終わる私ではない……!

公爵閣下に嫁いだら、「お前を愛することはない。その代わり好きにしろ」と言われたので好き勝手にさせていただきます

柴野
恋愛
伯爵令嬢エメリィ・フォンストは、親に売られるようにして公爵閣下に嫁いだ。 社交界では悪女と名高かったものの、それは全て妹の仕業で実はいわゆるドアマットヒロインなエメリィ。これでようやく幸せになると思っていたのに、彼女は夫となる人に「お前を愛することはない。代わりに好きにしろ」と言われたので、言われた通り好き勝手にすることにした――。 ※本編&後日談ともに完結済み。ハッピーエンドです。 ※主人公がめちゃくちゃ腹黒になりますので要注意! ※小説家になろう、カクヨムにも重複投稿しています。

側妃に追放された王太子

基本二度寝
ファンタジー
「王が倒れた今、私が王の代理を務めます」 正妃は数年前になくなり、側妃の女が現在正妃の代わりを務めていた。 そして、国王が体調不良で倒れた今、側妃は貴族を集めて宣言した。 王の代理が側妃など異例の出来事だ。 「手始めに、正妃の息子、現王太子の婚約破棄と身分の剥奪を命じます」 王太子は息を吐いた。 「それが国のためなら」 貴族も大臣も側妃の手が及んでいる。 無駄に抵抗するよりも、王太子はそれに従うことにした。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。

江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。 了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。 テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。 それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。 やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには? 100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。 200話で完結しました。 今回はあとがきは無しです。

処理中です...