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つぎはぎの男④
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アキセは、ジャンヌが向かった町とは一つ遠い町にある見世物屋に来ていた。
ジャンヌがいないことと見世物屋があるため、この町にした。
見世物屋は、テント式でいくつも立っていた。
「なあ、これっていくらで売ってくれる?」
アキセは、この見世物屋の中年男の店長に話しかける。
「何だい?兄ちゃん?どこに売りもんあるんだ?」
アキセは、手から小さい箱を召喚する。
親指を立て、小さい箱を投げ出す。
小さい箱はやがて大きくなり、檻になり、ドンと床に落ちる。
「これはどういうしくみで!」
店長は、ありえないようなものを見たような驚きの顔をした。
「これは企業秘密で」
ちなみにこの檻も工作の魔女コルン・ゴボルトの発明品で頂いた。
「檻を覗いてみ」
店長は、檻の中を覗く。
檻の中は、体中に鎖に繋がれた獣人(デミ・ビースト)の姿を確認する。
「ほう、これはまだ珍しいものを捕まえましたな」
店長は、獣人(デミ・ビースト)を眺める。
「で、どうです?」
「そうですね。金貨50でどうですか」
「金貨50で少なくないか。せめて金貨100がいいところじゃないのか」
「確かに珍しいが・・・金貨50ですな」
「いやいやこんな化け物。一生拝めないと思いますぜ。ここは金貨100ダメなら95で。」
「いやいや」
「いやいや」
とアキセと店長の値段の言い合いが続いた時だった。
「あ~、こんなところにいたー」
男だけのテントの中でとろけたような女の声がした。
声をした方向に視線に向ければ、出入口に少女が立っていた。
白いメイドキャップで後ろ髪を止めている。ワンピースを着ている。長い針を持つ奇妙な少女だった。
突然現れた少女に周りは静まりかえっていた。
少女は、獣人(デミ・ビースト)の檻の前まで近づく。
「も~、見つけるの。大変だったんだよー」
獣人(デミ・ビースト)は、少女を見つめた瞬間、目を見開き、暴れ出す。
暴れだしても鎖で繋がれているため、簡単に抜け出せない。
その獣人(デミ・ビースト)の様子を見て、アキセは察し、青ざめた。
「まさかな・・・」
あんな化け物を作り出せるのは、魔女しかいない。彼女がその魔女かもしれない。
アキセは鳥肌を立ち、後ずさりする。
「あー、君、どこから入ってきたのかな」
店長は、彼女が魔女であることに気づかず、平然と声をかけるが、少女は店長を無視し、獣人(デミ・ビースト)を見ていた。
「檻に閉じ込められてる。」
心配そうに眺める少女。
「まあ、いっか。このまま連れて帰ればいいし」
少女は陽気に言う。
「おい!ここは子供が来るところじゃないぞ」
店長が少女の肩に手をかけようとしたが、店長の手が大針に貫いていた。
「あああああああああああああああああ」
少女は、冷たい目視線で、黒いモヤが発生した。
『呪い』の濃度が高ければ、黒いモヤに可視化する。『呪い』を生み出せるのは、魔女と合成獣(キメラ)のみ。つまり、彼女は魔女だと言うこと。
「もう、うるさいな」
大針は、店長の顔を貫く。
「手を切ったくらいで騒ぐなよ。」
貫いた店長を雑に針で投げつける。
死体となった店長の姿を見た店員たちが騒ぎだす。
「そうだ。材料を探そうと」
魔女は大針を構え、店員に向けて切りつける。
血と悲鳴が混ざり合っていく。
魔女が店員を惨殺する中、アキセは、
「ヤバ…逃げないと・・・」
その場を逃げようとしたが、バタンと地面に倒れる。
まともに顔を打った。
立ち上がろうとしたが、何かに引っ張られているような感覚をし、振り返ると、足に糸が巻きつかれ、その糸は魔女の大針に繋がっていた。
「逃げないでよ。お兄さん」
魔女は笑顔を見せ、アキセは冷汗をかく。
ジャンヌは霧の山のふもとの町に着いていた。時間はもう昼すぎで腹も減っていたため、食堂で肉を食べていた時だった。
「おい!隣の町で魔女が現れたらしいぞ!」
町人が叫んでいた。
町の中は、騒がしくなってきた。次にこの村が襲われるかもしれない不安を感じているのだろう。
仕方がない。魔女と関われば仕事の時間だ。
最初に叫んだ町人に話をきくことにした。
「ん~腕が硬い」
魔女は、先ほど斬りつけた見世物屋の人間の腕、足、耳などの体の一部を選別していた。
「太い~、細い~、酒臭い~」
わがままを言う幼い子供のようだった。
「あの~」
情けない声を出したのは、手足に糸で縛られているアキセだった。
「何。お兄さん」
顔に血をついた魔女が、アキセに振り返る。
「君、魔女ですよね」
「そうだよ」
「その獣を連れて帰るために来た感じですか」
「うん。だって、私が作った人形だもん」
魔女は笑って近づく。
ただその笑顔に恐怖を感じる。
「なるほど、そうでしたか…」
「私ね。いろんなものを繋げて人形を作るのが趣味なんだ」
魔女は、血のついた手のひらを重ねて、笑う。
「いろんな動物の足や顔とかを分解して、他の動物に繋げて人形を作るんだ。まあ、今まで動かない人形ばっかりだったけど、最近やっと生きた人形ができたんだ」
魔女は、檻の中に入っている獣人(デミ・ビースト)に視線を向ける。
獣人(デミ・ビースト)は、魔女に対して威嚇する。
「もうちょっと待ってね」
獣人(デミ・ビースト)に手を振り、アキセに視線を変える。
「ふ~ん」
魔女は、アキセをじっと見る。
「何ですか」
「やっぱりイケメンね」
覗きこむように見つめる魔女。
「そりゃ、どうも」
いやな予感がする。
「決まった!帰って人形にしよう!」
「え!」
気のせいかあの獣人(デミ・ビースト)が笑ったような気がする。
「よし、帰る支度しようと・・・」
魔女は死体の山に戻る。
このままでは人形にされる。
頭をフル回転し、対策を考え、早速実行する。
「その人形を取りに聖女が来るぜ」
魔女は立ち止まる。
「ああ」
先ほどまで笑っていた顔が、豹変し、殺意の目つきとなって振り返る
食いついた。
「何、聖女が近くにいるわけ」
「まだいると思うぜ。聖女があの獣に気に入っているから魔女に連れてかれると知ったら、助けに来ると思うぜ」
考え込む魔女。
「そうね。私の人形をたぶらかす聖女なら殺さないと。よし、やりに行こう!」
まんまとアキセの作戦にはまった魔女であった。
ジャンヌがいないことと見世物屋があるため、この町にした。
見世物屋は、テント式でいくつも立っていた。
「なあ、これっていくらで売ってくれる?」
アキセは、この見世物屋の中年男の店長に話しかける。
「何だい?兄ちゃん?どこに売りもんあるんだ?」
アキセは、手から小さい箱を召喚する。
親指を立て、小さい箱を投げ出す。
小さい箱はやがて大きくなり、檻になり、ドンと床に落ちる。
「これはどういうしくみで!」
店長は、ありえないようなものを見たような驚きの顔をした。
「これは企業秘密で」
ちなみにこの檻も工作の魔女コルン・ゴボルトの発明品で頂いた。
「檻を覗いてみ」
店長は、檻の中を覗く。
檻の中は、体中に鎖に繋がれた獣人(デミ・ビースト)の姿を確認する。
「ほう、これはまだ珍しいものを捕まえましたな」
店長は、獣人(デミ・ビースト)を眺める。
「で、どうです?」
「そうですね。金貨50でどうですか」
「金貨50で少なくないか。せめて金貨100がいいところじゃないのか」
「確かに珍しいが・・・金貨50ですな」
「いやいやこんな化け物。一生拝めないと思いますぜ。ここは金貨100ダメなら95で。」
「いやいや」
「いやいや」
とアキセと店長の値段の言い合いが続いた時だった。
「あ~、こんなところにいたー」
男だけのテントの中でとろけたような女の声がした。
声をした方向に視線に向ければ、出入口に少女が立っていた。
白いメイドキャップで後ろ髪を止めている。ワンピースを着ている。長い針を持つ奇妙な少女だった。
突然現れた少女に周りは静まりかえっていた。
少女は、獣人(デミ・ビースト)の檻の前まで近づく。
「も~、見つけるの。大変だったんだよー」
獣人(デミ・ビースト)は、少女を見つめた瞬間、目を見開き、暴れ出す。
暴れだしても鎖で繋がれているため、簡単に抜け出せない。
その獣人(デミ・ビースト)の様子を見て、アキセは察し、青ざめた。
「まさかな・・・」
あんな化け物を作り出せるのは、魔女しかいない。彼女がその魔女かもしれない。
アキセは鳥肌を立ち、後ずさりする。
「あー、君、どこから入ってきたのかな」
店長は、彼女が魔女であることに気づかず、平然と声をかけるが、少女は店長を無視し、獣人(デミ・ビースト)を見ていた。
「檻に閉じ込められてる。」
心配そうに眺める少女。
「まあ、いっか。このまま連れて帰ればいいし」
少女は陽気に言う。
「おい!ここは子供が来るところじゃないぞ」
店長が少女の肩に手をかけようとしたが、店長の手が大針に貫いていた。
「あああああああああああああああああ」
少女は、冷たい目視線で、黒いモヤが発生した。
『呪い』の濃度が高ければ、黒いモヤに可視化する。『呪い』を生み出せるのは、魔女と合成獣(キメラ)のみ。つまり、彼女は魔女だと言うこと。
「もう、うるさいな」
大針は、店長の顔を貫く。
「手を切ったくらいで騒ぐなよ。」
貫いた店長を雑に針で投げつける。
死体となった店長の姿を見た店員たちが騒ぎだす。
「そうだ。材料を探そうと」
魔女は大針を構え、店員に向けて切りつける。
血と悲鳴が混ざり合っていく。
魔女が店員を惨殺する中、アキセは、
「ヤバ…逃げないと・・・」
その場を逃げようとしたが、バタンと地面に倒れる。
まともに顔を打った。
立ち上がろうとしたが、何かに引っ張られているような感覚をし、振り返ると、足に糸が巻きつかれ、その糸は魔女の大針に繋がっていた。
「逃げないでよ。お兄さん」
魔女は笑顔を見せ、アキセは冷汗をかく。
ジャンヌは霧の山のふもとの町に着いていた。時間はもう昼すぎで腹も減っていたため、食堂で肉を食べていた時だった。
「おい!隣の町で魔女が現れたらしいぞ!」
町人が叫んでいた。
町の中は、騒がしくなってきた。次にこの村が襲われるかもしれない不安を感じているのだろう。
仕方がない。魔女と関われば仕事の時間だ。
最初に叫んだ町人に話をきくことにした。
「ん~腕が硬い」
魔女は、先ほど斬りつけた見世物屋の人間の腕、足、耳などの体の一部を選別していた。
「太い~、細い~、酒臭い~」
わがままを言う幼い子供のようだった。
「あの~」
情けない声を出したのは、手足に糸で縛られているアキセだった。
「何。お兄さん」
顔に血をついた魔女が、アキセに振り返る。
「君、魔女ですよね」
「そうだよ」
「その獣を連れて帰るために来た感じですか」
「うん。だって、私が作った人形だもん」
魔女は笑って近づく。
ただその笑顔に恐怖を感じる。
「なるほど、そうでしたか…」
「私ね。いろんなものを繋げて人形を作るのが趣味なんだ」
魔女は、血のついた手のひらを重ねて、笑う。
「いろんな動物の足や顔とかを分解して、他の動物に繋げて人形を作るんだ。まあ、今まで動かない人形ばっかりだったけど、最近やっと生きた人形ができたんだ」
魔女は、檻の中に入っている獣人(デミ・ビースト)に視線を向ける。
獣人(デミ・ビースト)は、魔女に対して威嚇する。
「もうちょっと待ってね」
獣人(デミ・ビースト)に手を振り、アキセに視線を変える。
「ふ~ん」
魔女は、アキセをじっと見る。
「何ですか」
「やっぱりイケメンね」
覗きこむように見つめる魔女。
「そりゃ、どうも」
いやな予感がする。
「決まった!帰って人形にしよう!」
「え!」
気のせいかあの獣人(デミ・ビースト)が笑ったような気がする。
「よし、帰る支度しようと・・・」
魔女は死体の山に戻る。
このままでは人形にされる。
頭をフル回転し、対策を考え、早速実行する。
「その人形を取りに聖女が来るぜ」
魔女は立ち止まる。
「ああ」
先ほどまで笑っていた顔が、豹変し、殺意の目つきとなって振り返る
食いついた。
「何、聖女が近くにいるわけ」
「まだいると思うぜ。聖女があの獣に気に入っているから魔女に連れてかれると知ったら、助けに来ると思うぜ」
考え込む魔女。
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