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つぎはぎの男③

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 暗かった。
 気がつくと手足に鎖に繋がれ、周りには多くの死体が散らばっていた。
 臭いも鼻が痛くなるほどの臭さだった。
 よく見れば、だたの死体ではなかった。
 獣の耳に足がついている。顔に目が4つあり、口から手が生えている。不気味な死体があちこちあった。
 そこには一人の少女が陽気に鼻歌を歌いながら、人形を作るように糸を使って体を繋げていた。
 少女はこちらに視線を向く。
「あ!すごい!動いてる!」
 喜んで近づいてくる。
「やった!完成した!どうしよう。動いたらかわいく見えちゃった!」
 少女は、不適な笑みを見せる。
「さて、どうしようかな」


 獣人(デミ・ビースト)は、日の光が暗い洞窟を照らしたことで目を覚ます。
「朝か…」
 獣人(デミ・ビースト)が立ち上がろうとしたが、尾に重みを感じた。
 振り返ると尾を枕にして、すやすやと寝ていたジャンヌだった。
「おい!」
 ジャンヌに怒鳴る。
「もう何よ」
 目をこすりながら覚めたジャンヌ。
「なぜ、俺の尻尾に寝るんだ!」
「え、いや~なんともいえないこのフワフワ感がたまらなくてさ。つい」
 ジャンヌはさらに尾をなでるように触る。
「離れろ!」
「あら、ごめんなさい。いやだった。」
 獣人(デミ・ビースト)は顔をそらす。
「…触りなれていないだけだ」
「そう」
 ジャンヌは尾から離れた。


 朝が昇り、ジャンヌと獣人(デミ・ビースト)は山のふもとまで降りていた。
 霧が全くなく、木の間から日が差している。
「もうここまでくればいいだろ。さっさと出で行け」
「最後まで荒いわね。名前くらい教えてくれないの」
「もう厄介ことに巻き込まれたくないんだ。」
 彼は、魔女にあの体に改造された。聖女に関われば、魔女と関わる。もう関わりたくないのだろう。
 彼を尊重してあきらめることにした。
「分かった。じゃあ、元気でいてね」
 ジャンヌは手を振りながら歩いた。


 獣人(デミ・ビースト)はジャンヌが見えなくなるまで見送った。
「やっと、行ったか」
 安堵の溜息を吐き、歩き出そうとした時だった。
 獣人(デミ・ビースト)の足元に何かが当たった。
「銃弾?」
 考えるのも束の間、獣人(デミ・ビースト)の足元に当たった銃弾から緑色の魔法陣が浮き上がる。
 魔法陣からツルが伸びる。
「何!」
 獣人(デミ・ビースト)が逃げるよりも早くツルは、獣人(デミ・ビースト)の体を絡めて、地面に強く押し付ける。体を揺さぶってあがくが、ツルは解けなかった。
――まさか、魔女か
いつか来る恐怖に抱く獣人(デミ・ビースト)だか。
「よーし、捕まえたと」
 男の声がした。
 獣人(デミ・ビースト)の前に男が現れる。
 黒髪と黒目。黒いロングコートで全体的に黒を基調とした服の長身の男だった。
「うわ、見るからに気持ち悪いな」
 男は、虫けらを見るように獣人(デミ・ビースト)に見下ろす。
「おまえ、何者だ!魔女の関係者か!」
 獣人(デミ・ビースト)は男をにらみつける。
「ふん」
 男は、右人差し指に長く鋭い銀色の指飾りをつけ、手の甲に宝石をはめ込んだグローブで描いた魔法陣からでたツルを獣人(デミ・ビースト)の口を縛る。
「やっぱ、魔女が作った化け物か」
 獣人(デミ・ビースト)は、一番言われたくなかった言葉に反応し、男に対して歯を立て、威嚇する。
「なんだ。気にしていたのか、化け物」
 男は、あざ笑うように言う。
「おっと、まさかジャンヌが助けに来ると思ってる。残念だったな。この銃は音がしないものでな。ジャンヌには聞こえないぜ」
 ジャンヌの知り合いだろうか。だか、ジャンヌから一切話がなかった。話す価値もない男だろうか。
男は、考え込んでいる。
「ん~、そうだ。見世物屋に売るか」
 悪い笑みを浮かべる男。
「それに言葉を盗んでおくか。獣が話す時点で生意気なんだよな」
 男は獣人(デミ・ビースト)の首元に手を当てる。
 手元に鈴が出来上がる。
「これで獣の完成と」
 獣人(デミ・ビースト)は睨みつける。
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