10 / 648
つぎはぎの男①
しおりを挟む
「だめだ。迷った」
霧の中でジャンヌは迷い込んでいた。
昨日までは晴れていたが、山で野宿し、目を覚ましたら、霧が濃くなっていた。
だめもとで霧の中を歩くが、似たような風景ばかりで抜け出せない。
「どうしよう。『呪い』で作られた霧じゃないし・・・」
太陽や月から出る『光』が『呪い』を浄化し続けるため、『光』が届く限り、『呪い』で天気を操ることはない。地形の問題だろう。
いつ降りられるのかとジャンヌが困り果てた時だった。
すぐ横から黒い影がジャンヌに飛び込んできた。
「えっ?」
黒い影にジャンヌがぶつかり、転がる石のように転がっていく。
「わあああああああああああ」
やっと回転が納まった。
「も~、何よ・・・」
勢いよく回ったため、頭がふらつきながら、立ち上がる。
「それはこっちのセリフだ」
男の声がした。声をした先には、一緒に転がってきた男がいた。
体が大きいロープを着ており、顔は被りをしていたため見えないが、口先が狼だった。
「獣人(デミ・ビースト)?」
『呪い』の異形(デミ)化した動物の一種。
動物の足が4本から2本に立ち、知能が発達し、人型に近い種族。だか、狼の獣人(デミ・ビースト)なら、足に鱗がついていないはず。
「ち、きやがった。」
獣人(デミ・ビースト)は視線を変え、警戒態勢を取る。
ジャンヌもロザリオで光の刃を作り、警戒する。
敵の正体が明らかになった。
「ムギリか」
ムギリ。
霧と一体化した魔獣(モンスター)。
霧と同じ色の真っ白い毛のウサギ。膝ほど大きさ。銀色の目。群れで行動する。魔族(アビス)化の影響で、本来草食だったが、肉食へと変化した。霧しか現れることができないため、食欲に飢え、より狂暴化している魔獣(モンスター)。
獣人(デミ・ビースト)に3匹ほど襲いかかるが、獣人(デミ・ビースト)が爪を立て、迎え撃つ。真っ二つに引き裂いた先にまだ2匹ムギリが獣人(デミ・ビースト)の腕を噛みだす。それが合図となったのが、獣人(デミ・ビースト)にムギリが群がるように、襲いかかってくる。
ジャンヌにも4匹ほどムギリが襲いかかる。ロザリオを横に振り、白い炎を放つ。
白い炎は、ムギリを包む。ムギリの体に白い炎がつけ、唸り声を上げる。
ムギリは、魔獣(モンスター)で魔力を持っているため、『光』で浄化される。
苦しむムギリの声に、獣人(デミ・ビースト)にいたムギリが気付き、霧の中へと消えていった。
獣人(デミ・ビースト)は、疲れ切っているのか、膝をついていた。
「君、大丈夫?」
ジャンヌは、獣人(デミ・ビースト)の元へ駆けつける。
「え?」
獣人(デミ・ビースト)の右腕が大猫の腕だった違っていた。それによく見れば、足が狼の足ではなく、鱗をもったトカゲの足だった。尻尾は狼の尻尾よりどちらかと狐の尻尾だった。
「君…それって」
獣人(デミ・ビースト)は、手を伸ばしてくる。
すぐジャンヌの顔の横を通る。視線を向ければ、ジャンヌの後ろに1匹のムギリを掴んでいた。どうやら、後ろから来るムギリを獣人(デミ・ビースト)が気付いて、対応したのだろう。掴んだムギリの頭を潰す。
「ありがと…」
礼を言い切る前に獣人(デミ・ビースト)は、その場を去ってしまった。
「結局、あの獣人(デミ・ビースト)は何だったんだろ」
ジャンヌはまだ霧の中をさ迷っていた。あれからだいぶ時間が立った。あの獣人(デミ・ビースト)は普通ではなかった。合成獣(キメラ)にしては、『呪い』が出でいなかった。合成獣(キメラ)は、怪物の魔女エキドナ・キメライムから生まれた魔女の子供。魔女以外に『呪い』を生み出す。だか、あの獣人(デミ・ビースト)からは『呪い』が出でなかった。
ハーフにしても綺麗に生まれているような気がする。あと残すとしたらと考えていたら、白く濃かった霧が、徐々に薄く黒い色になっていた。
もうすぐ夜になるという知らせだった。
「さすがにやばいな。どこかに休める場所ないかな」
ジャンヌは、休める場所を探していたところで洞窟を見つける。
「あそこで休むか」
洞窟の中へと入る。
「ん?」
洞窟の中は、たき火の跡や食べ物が置いており、生活感があった。
「ここって?」
背後から物音がした。振り返ると先程会った獣人(デミ・ビースト)が子鹿を担いでいた。
「あ!」
「あ!」
お互い同じ言葉を発した。
獣人(デミ・ビースト)はすかさず逃げようとした。
「ちょ!待って!」
ジャンヌは呼び止める。
獣人(デミ・ビースト)は、その動作の勢いで頭に被っていた被り物が下ろされる。
「ヤバ!」
獣人(デミ・ビースト)は頭を押さえようとして、大猫の手が頭を押えるより先に被り物が下ろし、姿を現す。
後ろ姿でもただの獣人(デミ・ビースト)ではなかった。
頭は人間で、耳がエルフの耳だった。
「やっぱりあなたただの獣人(デミ・ビースト)じゃないわね」
獣人(デミ・ビースト)は、ジャンヌに振り向く。
顔が人間だが、口の部分が狼の口を糸で繋いでいる。
霧の中でジャンヌは迷い込んでいた。
昨日までは晴れていたが、山で野宿し、目を覚ましたら、霧が濃くなっていた。
だめもとで霧の中を歩くが、似たような風景ばかりで抜け出せない。
「どうしよう。『呪い』で作られた霧じゃないし・・・」
太陽や月から出る『光』が『呪い』を浄化し続けるため、『光』が届く限り、『呪い』で天気を操ることはない。地形の問題だろう。
いつ降りられるのかとジャンヌが困り果てた時だった。
すぐ横から黒い影がジャンヌに飛び込んできた。
「えっ?」
黒い影にジャンヌがぶつかり、転がる石のように転がっていく。
「わあああああああああああ」
やっと回転が納まった。
「も~、何よ・・・」
勢いよく回ったため、頭がふらつきながら、立ち上がる。
「それはこっちのセリフだ」
男の声がした。声をした先には、一緒に転がってきた男がいた。
体が大きいロープを着ており、顔は被りをしていたため見えないが、口先が狼だった。
「獣人(デミ・ビースト)?」
『呪い』の異形(デミ)化した動物の一種。
動物の足が4本から2本に立ち、知能が発達し、人型に近い種族。だか、狼の獣人(デミ・ビースト)なら、足に鱗がついていないはず。
「ち、きやがった。」
獣人(デミ・ビースト)は視線を変え、警戒態勢を取る。
ジャンヌもロザリオで光の刃を作り、警戒する。
敵の正体が明らかになった。
「ムギリか」
ムギリ。
霧と一体化した魔獣(モンスター)。
霧と同じ色の真っ白い毛のウサギ。膝ほど大きさ。銀色の目。群れで行動する。魔族(アビス)化の影響で、本来草食だったが、肉食へと変化した。霧しか現れることができないため、食欲に飢え、より狂暴化している魔獣(モンスター)。
獣人(デミ・ビースト)に3匹ほど襲いかかるが、獣人(デミ・ビースト)が爪を立て、迎え撃つ。真っ二つに引き裂いた先にまだ2匹ムギリが獣人(デミ・ビースト)の腕を噛みだす。それが合図となったのが、獣人(デミ・ビースト)にムギリが群がるように、襲いかかってくる。
ジャンヌにも4匹ほどムギリが襲いかかる。ロザリオを横に振り、白い炎を放つ。
白い炎は、ムギリを包む。ムギリの体に白い炎がつけ、唸り声を上げる。
ムギリは、魔獣(モンスター)で魔力を持っているため、『光』で浄化される。
苦しむムギリの声に、獣人(デミ・ビースト)にいたムギリが気付き、霧の中へと消えていった。
獣人(デミ・ビースト)は、疲れ切っているのか、膝をついていた。
「君、大丈夫?」
ジャンヌは、獣人(デミ・ビースト)の元へ駆けつける。
「え?」
獣人(デミ・ビースト)の右腕が大猫の腕だった違っていた。それによく見れば、足が狼の足ではなく、鱗をもったトカゲの足だった。尻尾は狼の尻尾よりどちらかと狐の尻尾だった。
「君…それって」
獣人(デミ・ビースト)は、手を伸ばしてくる。
すぐジャンヌの顔の横を通る。視線を向ければ、ジャンヌの後ろに1匹のムギリを掴んでいた。どうやら、後ろから来るムギリを獣人(デミ・ビースト)が気付いて、対応したのだろう。掴んだムギリの頭を潰す。
「ありがと…」
礼を言い切る前に獣人(デミ・ビースト)は、その場を去ってしまった。
「結局、あの獣人(デミ・ビースト)は何だったんだろ」
ジャンヌはまだ霧の中をさ迷っていた。あれからだいぶ時間が立った。あの獣人(デミ・ビースト)は普通ではなかった。合成獣(キメラ)にしては、『呪い』が出でいなかった。合成獣(キメラ)は、怪物の魔女エキドナ・キメライムから生まれた魔女の子供。魔女以外に『呪い』を生み出す。だか、あの獣人(デミ・ビースト)からは『呪い』が出でなかった。
ハーフにしても綺麗に生まれているような気がする。あと残すとしたらと考えていたら、白く濃かった霧が、徐々に薄く黒い色になっていた。
もうすぐ夜になるという知らせだった。
「さすがにやばいな。どこかに休める場所ないかな」
ジャンヌは、休める場所を探していたところで洞窟を見つける。
「あそこで休むか」
洞窟の中へと入る。
「ん?」
洞窟の中は、たき火の跡や食べ物が置いており、生活感があった。
「ここって?」
背後から物音がした。振り返ると先程会った獣人(デミ・ビースト)が子鹿を担いでいた。
「あ!」
「あ!」
お互い同じ言葉を発した。
獣人(デミ・ビースト)はすかさず逃げようとした。
「ちょ!待って!」
ジャンヌは呼び止める。
獣人(デミ・ビースト)は、その動作の勢いで頭に被っていた被り物が下ろされる。
「ヤバ!」
獣人(デミ・ビースト)は頭を押さえようとして、大猫の手が頭を押えるより先に被り物が下ろし、姿を現す。
後ろ姿でもただの獣人(デミ・ビースト)ではなかった。
頭は人間で、耳がエルフの耳だった。
「やっぱりあなたただの獣人(デミ・ビースト)じゃないわね」
獣人(デミ・ビースト)は、ジャンヌに振り向く。
顔が人間だが、口の部分が狼の口を糸で繋いでいる。
0
お気に入りに追加
14
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
冤罪で追放した男の末路
菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。
火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。
王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。
そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。
エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。
それがこの国の終わりの始まりだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
悪役令嬢は処刑されました
菜花
ファンタジー
王家の命で王太子と婚約したペネロペ。しかしそれは不幸な婚約と言う他なく、最終的にペネロペは冤罪で処刑される。彼女の処刑後の話と、転生後の話。カクヨム様でも投稿しています。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
1人生活なので自由な生き方を謳歌する
さっちさん
ファンタジー
大商会の娘。
出来損ないと家族から追い出された。
唯一の救いは祖父母が家族に内緒で譲ってくれた小さな町のお店だけ。
これからはひとりで生きていかなくては。
そんな少女も実は、、、
1人の方が気楽に出来るしラッキー
これ幸いと実家と絶縁。1人生活を満喫する。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる