魔女狩り聖女ジャンヌ・ダルク サイドストーリー篇

白崎詩葉

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10月31日③

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 冷た! 
 水をかけられ、目を覚ます。
 手には手錠をつけられ、木造の小さな檻の中に閉じ込められている。
「これより魔女裁判を行う」
 いつの間にか裁判所に連れて枯れたようだ。
 目の前には先ほど広場で演説していた町長が座っている。わざわざ裁判長の桂をかぶっている。背後には柵越しに町人が座っている。
 完璧に見世物にされている。
絶対に魔女を懲らしめてやると魔女への殺意を決意する。
「え~魔女の罪状は、災害。不作。疫病。脅迫。監禁。暴力」
――あれ。後半、魔女と関係なくない。
「見覚えあるだろう」
「ないです」
 見覚えありません。特に後半が。すぐに否定した。
「ウソを申すな!」
 裁判長が強気で言う。
「証人。前へ」
 裁判長の目の前に見覚えのある男が現れた。
――あいつ。
 アキセだった。
「名前は?」
「はい、ロレンス・レーンと申します」
 わざわざ偽名を使っている。何をするつもりだ。
「はい、私、ジャンヌとは長い付き合いとなります。実はその女は・・・」
 アキセが口詰まる。
「女っけのないひどい女なんです!」
 その発言でプチ切れる。
「すぐ殴るし。脅すし。縛るし。暴力な女なんです。しくしく」
――わざとらしい演技をしやがって
「しかもその女・・・ビッチなんです!」
 今なんて言った。
「すぐに男をたらし、夜に追い込む。男が貶めたところで金物を持ち去っていく。絵にかいたようなビッチです。さらに立ち悪いのが、彼女持ちの男を狙うところです。寝取られが趣味で、両者の間を悪くするクソ女なんです!」
 背後にいる町人たちが騒いでいる。
「なんで女なの」、「まさしく悪女って奴ね」とひそひそと聞こえる。
「どうか、その魔女に正当な罰をお与えください!裁判長!」
 おまえを裁きたい。わざとらしい泣き演技に被害者面をするアキセを。
「よし。増やすか。え~結婚詐欺と」
「あと、性暴力罪もつけてください」
 アキセがこっそり裁判長に言う。
 裁判長も乗るな。
「よろしい。証人。席に戻りなさい」
 よくない。
アキセは降りる時、口の端を上げる。
 その顔で怒りが込み上がる。
「被告人。魔女ジャンヌ・ダルクは、これから一年の災厄をもたらし、作物、災害と村に不幸を巻き、さらに犯罪により、魔女を火あぶりの刑に処する」
――何これ。
 何にもしていないし、魔女でもないのに魔女だからと言いかかりをつけている。さすが魔女が仕掛けただけある。まともに裁判する気もない。
こんなルールに従う義理はない。目の前の裏切り男に殺意を向けだけ。
「おまえって奴はあぁあああああああ!」
 ジャンヌは怒り任せて、手錠を千切る。


――もう人間が魔女に操られても知るか―。
 木造の檻をぶち壊し、向かえにくる人間を蹴散らし、一直線にアキセを狙う。アキセは一目散に逃げようとする。
「逃げるな!裏切り淫魔が!」
 怒りに燃えるジャンヌは、近くにあったランプを掴み、アキセに向かって投げる。アキセの頭にランタンが当たる。さらにジャンヌは跳び蹴りして外へ追い出す。外にいるアキセの胸倉をつかさず掴む。
「ちょ、待って!ほらもう時間がないよ!」
「おまえが時間を短くしたんじゃないか!」
 よく見えば、空は真っ黒に染まっている。いつの間にか夜になっていた。
「いや~どうせ。ジャンヌならギリギリまで魔女退治できるし。それに今までの愚痴を本人の前で堂々と言いたかったから」
「それは私がしたいわああああああああああ!」
 声が枯れそうなほど怒声を上げ、殺意を込めた拳をアキセに殴ろうとしたが、アキセのすぐ横にずれる。風圧が起こる。
 アキセは顔がこわばる。そんな彼よりもジャンヌは、目の前でランタンが動いていることに目がいく。
 ジャンヌが投げたランタンがアキセを飛び蹴りした際に一緒に外に出たのだろう。だか、そのランタンは異様過ぎる。ランタンから黒い手足のようなものが伸びていたからだ。
 明らかに怪しい。
 ランタンと目が合った。冷や汗のような汗が見える。
「バレッテシマッテシヨウガナイ」
 ランタンが片言にしゃべる。
「トウ!」
 ランタンは、手を伸ばして、上に跳ぶ。徐々に人型へと変化し、石像の上に立つ。
 黒いマントと大きい黒の三角帽子だった。
「ハッピーハロウィン!」
 黒いマントが広がり、金髪で紫色の瞳の少女だった。
「始めまして、今年のハロウィンパーティーの主催者の死霊の魔女サリーナ・リッチ・ハロウィンで~す」とウインクする。
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