単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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番外編

第60話 結婚直前の旅行 その6 

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 店内に入り、スタッフに案内された席に座るが、そこはテーブル席で有った。
 座敷も有る様だが、時間が時間なので、店側の都合でテーブルの方が良いのだろう。
 店内の客は俺と小春以外に1組しか無かったが、人気の有る店なんだろう。
 この時間にスタッフは、昼食か早い夕食を取っていた!?

 テーブルに座り、俺はテーブルに有るメニューを広げて真ん中に置く。
 写真付きメニューなので、1人前の量も分かりやすい。
 定食物や丼物も有るが、この時間に晩ご飯は、幾ら何でも早すぎる気はする。
 メニューを一緒に見ているが、小春が声を掛けてきた。

「筑摩さんは、何を頼む~~?」

「そうだね!」
「俺はやっぱり、さっき店頭で見たイカ焼きかな!」
「見ると、食べたくなるね!!」

「筑摩さんはイカ焼きか~~」
「じゃあ、私は、ホタテ焼きを頼もうかな♪」

「イカ焼き。ホタテ焼き。後……1品ぐらい頼もうか!!」

「筑摩さん。もう1品頼むの?」

 小春は何故か聞いてきた?
 もう、結婚する仲だから、遠慮しなくても良いのに……

「二人で半分こしたら、少し物足り無いかなと、思って……」

「じゃあ、筑摩さん!」
「ツブ貝焼きにしましょう♪」
「値段も手頃だし、これも別けやすいわ!!」

 注文する品が決まったため、俺はスタッフを呼んで、先ほど決めた品を注文する。
 全てが1品物なので、決して安くは無いが、此処でケチる事は無い。

 注文を終えると当然、スタッフは飲み物を聞いてくるが、ここでビールを頼む訳には行かない。日本酒等も尚更だ!
 海鮮焼きと酒は絶対に合うが、此処は我慢するしか無い。
 俺が返答に困っていると、スタッフが気を遣ってか、こう言ってくれた!

「熱いお茶が有りますけど、それで宜しいですか?」

「あっ、はい!」
「お茶を二つでお願いします……」

 何とか注文を終えると、小春は早速、言って来た。

「これは、ビールとかに絶対に合うよね~~」
「だけど……我慢だよ! 筑摩さん!!」

「もっ、勿論だよ!!」
「これから、家族を作る関係なのに、家族の人生を駄目にしては、行けないからな!!」

 俺は虚勢を張るが……、ノンアルコールビールでも良いから飲みたかった!?

(しまった!?)
(ノンアルコールビールを頼めば良かった!?)

 今から、ノンアルコールビールを頼んで良いが、それだとビールを飲みたい意思表示に成ってしまう。
 やはりここは、我慢するべきだろう……

 しばらくすると、スタッフが急須と湯飲みを持って来て、そのままテーブルに置いて戻って行く。自分らで“つげ”の意味だろうか?
 小春は急須を持って、湯飲みにお茶を注いで俺に渡してくれる。

「はい。筑摩さん。熱いから気を付けてね♪」

「あっ、ああ。ありがとう、小春」

 小春も自分の湯飲みにお茶を注いで、お茶に口を付ける。

「ふぅ~~」
「熱いお茶が、美味しい季節が来ちゃったね!」

 小春がそう言いながら、お茶を飲んでいる。
 俺もお茶に口を付ける。

(こんな変哲も無いお茶が、美味しく感じる!)
(体が疲れているのか、小春が淹れてくれたからだろうか)

「筑摩さん……。今日のお昼、本来はここで食べる予定だったの」

「えっ!?」
「俺は偶然入った店だけど、此処だったの!?」

「うん……」
「敢えて言わないで置こうと思ったけど、筑摩さんと店に入ったからね」

「人気の有る店なんだよね。見た感じ……」

「休日とかは、凄いらしいよ!!」
「本当に、大行列が出来るらしいよ!!」

 小春はそう言うが、今の時間帯はガラガラで有る。
 天気の影響か、時期の影響かは判らないが、食事類も充実しているから、美味しい店なんだろう。
 昼食の、天ぷらざる蕎麦も美味しかったが、昼食が此処だったら、こっちの方が良かったに決まっているが、また機会が有るだろう……

「今回は、この時間に成ってしまったけど、次回はお昼時に来たいね。小春」

「そうだね、筑摩さん!」
「娘達も、海鮮系統は好きだから、きっと喜ぶわ♪」

(この店で家族が食事をしたら、食事代はかなり掛りそうだが、それまでに少しでも、上役に就ける努力をしないとな…)

 俺はそんな事を思いながら、小春と注文した海鮮焼きが来るのを待った……
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