単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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番外編

第56話 結婚直前の旅行 その2

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「……小春。ちょっと爬虫類博物館に寄るのは無理…」

「ダメなの!?」
「どうして!!」

 小春は普段、反論する事は無いが、今回は珍しく反論してきた!
 きっと……小春の頭の中には、地図が出来てないだろう。

 今から、爬虫類博物館にルート変更をしても良いが、それをしてしまうと昼食の時間帯に岬に到着出来なくなる。
 岬に行ってから、爬虫類博物館に行く方法も有るが、岬周辺で観光を組んでいるため、それを取りやめて、行かなければ成らないし、岬から爬虫類博物館まで、高速道路をフルに使っても1時間半以上は掛かる距離で有った。

「だって……今日の目的は岬に行って、そこで昼食を食べ、岬を観光して、遊覧船に乗るのだろ?」
「岬から爬虫類博物館まで、かなりの距離が有るし、一度組んだ予定を大幅に変更すると、今日中に帰れなく成るかも知れないよ!」
「俺は小春と一泊したいから、それで良ければそうするけど?」

「……」

 何時も元気な小春が……珍しく落ち込む!?
 少し、言い過ぎたか?
 けど、予定の変更は俺の中ではしたくは無い。

「……一泊すると、宮子が根掘り葉掘り、聞いてきそうだから諦めるわ…///」

 小春は元気の無い、諦めた声で返事をするが、仕方無い……

(せめて……数日前に、言ってくれれば良かったのに…)

 俺だって、小春を喜ばせるために色々調べた。
 段取りよく旅行が出来るように、岬へのアクセス路や周辺観光地も念入りに調べた。
 それを壊されるのは、良い気分では無い。
 小春と一緒に成って、宮子、咲子の家族全員で、爬虫類博物館にこれば良いでは無いか……俺はそう感じてしまった!

 ……

 小春は俺の言葉を理解してくれたのか、その後は拗ねる事は無く、普段の会話に戻る。
 コーヒーも飲み終わり、目的地に向けて出発で有る。
 小春は根を持つタイプでは無いので、機嫌も直ぐに戻って、小春が持って来た音楽データをカーステレオに繋いでドライブを楽しむ。

「天気の良いドライブは気持ち良いね~~!」

「本当! 天気に恵まれて良かったよ!」

「筑摩さんとはもうすぐ家族に成るし、今度は家族みんなで旅行に行きたいわね♪」

「だね。宮子ちゃんもその頃には、俺の事を理解してくれていると思うし、俺も行き成り家族4人だけど、楽しく行きたいね!」

「……宮子は少し意地を張っているけど、筑摩さんの魅力が伝われば、直ぐに咲子の様に懐いてくるわよ!」

 宮子との距離は殆ど縮まっては無いが、咲子はまだ幼い事も有って、大分俺に懐いてきた。咲子の年齢上、少し手遅れだと感じたが杞憂で済みそうだ。
 宮子との距離は急激に縮めようとすると、問題が必ず発生するので、時間を掛けてやれば良い。
 小春と将来の話や、これからの事を話しながら、最初の目的地で有る、景勝地に向かった。

 ☆

 予定通り、鶴家つるかで高速道路を降りて、海沿いの国道を走る。
 この区間は、断崖絶壁を縫うように走っており、運転しがいが有る道だし、ドライブにも持って来いだ。小春も助手席から景色を楽しんでいる。
 だが……鶴家に来てから、急に雲が多く成って来た。

(この地方は曇天か…。雨が降らなければ良いが)

 晴天なら絶好の見晴らしに成るこの道路だが、曇天だから景観も“いまいち”に成ってしまう。
 更にこの国道は観光道路では無く、主要国道で有るからトラック等の車両も多くて、途中の待避所で景色を楽しむのは、危険な行為に等しかった。俺は車の流れに合わせて、走らせていると……

「筑摩さん……結構、雲が出て来たね」
「これは、岬の観光にも影響が出そうだね」

「今日は、冬型の気圧配置と天気予報で言って居たから、この地域での晴天は望めないかも知れないね」

「まぁ! 仕方無いか!!」
「お互いがフリーなら、旅行の日取りも変えられるけど、それは無理だからね!!」

 小春も納得した表情で、再び助手席から景色を眺めていた……
 途中で道の駅が有ったので、少し小休止をしてから、最初の観光地に到着する。
 この時の小春かあさんは俺を意識してか、途中での買い食いを殆どしてなかった。
 観光地と言ってもマニア向けの観光地なので、当然誰もいないし、更に今日は平日で有る。
 専用駐車場は無いが近くに公園が有り、その駐車場を借りさせて貰う。
 俺と小春。車から降りるが……

「筑摩さん…?」
「ここが観光地??」

 小春は目を“ぱちくり”させながら言う。
 そこに有るのは、旧国道の赤い橋と、土砂で潰された旧国道の道路が、有るだけだからで有る。
 少し離れた場所に、現国道の赤い橋が架かっている。
 良い言い方をすれば、ツインブリッジで有る。(旧国道側は廃道だけど……)

「ここは道路マニアの間でも、結構有名なんだ!」

「そうなの?」

「うん! 梅橋うめばしと言うんだ!!」
「橋の先にトンネルが有るし、川沿いを走っていた旧国道だから景観も良いでしょう!!」

「うっ、うん…」
「静かな環境だし、小鳥のさえずりも聞こえるし、良い所だけど……」

(あれ…?)
(思ったより、反応が鈍いな……)

(これは寄り道程度に入れたのだけど、入れない方が良かったかな?!)

 旧国道の赤い橋は、朽ちている感じは全く無くて、今でも渡れそうだがフェンスで封鎖されている。乗り越えて行けそうだが、俺と小春は良識の有る大人で有る。
 本当に周辺を少し歩いて、赤い橋を眺めるだけで終わるしか無い……
 最初の観光地は、微妙な結果で終わって仕舞いそうだ……
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