単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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番外編

第29話 水族館周辺散策 その2

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 遊具の有る広場に俺と母さんが辿り着くと、咲子・真央は遊具で遊んでおり、宮子は最初、それを眺めていたが…突然、周りに有る遊具を歩きながら手で触って、何かを確認している様だ?

「宮子…。何をしているのだ?」

「ん~~、海風が当たっているけど、腐食とかは問題無さそうだね…」

 何故か、そんな事を言う宮子。

「この辺の所は近隣に水族館も有るし、管理もしっかりしてそうだから、問題無いだろう?」

 俺はそう言うが宮子は……

「行政を当てにしすぎるのも駄目だよ……。結構、見落としだって有るのだから!」

 宮子が何故、そんな事を言い出すのかが分からないが、宮子の過去に何か有ったのだろうか?
 母さんが俺に話し掛けてくる。

「あのね、宮子が小さい頃…。宮子のお友達と遊んでいた時、遊具の一部が腐食していて、お友達が怪我をした時が有るのよ!」
「幸い……、大きな怪我では無かったけど…。公園の管理者で有る市町村は、謝罪と治療費を出してくれて、その後直ぐに、その遊具は撤去されたわ」

「母さん……別に普通の話だよな?」

 俺は母さんにそう言うが……

「話には続きが有ってね……。市町村はその公園に有った遊具を、全て撤去してしまったの!」
「ベンチも公園に1つ有ったけど、そのベンチも無く成って広場だけに成ったの!」
「更に、ボール遊びや道具を使った遊びも禁止に成って、本当に広場が有るだけの公園に成ったの!」

「それは凄く極端だね……」

「誰かが抗議はした様だけど、市町村の担当者は『遊具の更新費用も多額に掛かるし、近隣の方々達から騒音苦情も出ているで…』と言ったらしいけど、本当の真相は不明だわ」

「母さん…」
「つまりは、宮子の友達が怪我をする前に、行政がしっかり点検をしていれば、遊具は撤去されずに済んだ事で良いの?」

「宮子の考えは、そうだと思う……」
「でも、あの時住んでいた町は財政難だったから、どちらにしても遅かれ早かれ、遊具は撤去されていると思う……」

 母さんの言うあの時は……、母さんと前夫が暮らしていた時の事で有る。
 単純に言えば、日頃から維持管理をしっかりしていれば、遊具は撤去されなかったと宮子は思う訳だが、点検をしっかりしていても財政難の市町村だから、怪我は防げても、遊具の撤去は避けきれないと考えるのが一般的だろう……

 この辺はナイーブの分野なので、俺は宮子に下手な事は言わない。
 宮子は母さんが俺に話し掛けてきたと同時に、咲子・真央の所に行って、何かを話していた。
 遊具に遊んで満足した咲子・真央と、宮子が俺達の元に戻って来た。

「そろそろ、行きましょうか…」

「そうだな…」

 宮子はそう言い、俺は返事をして、家族は駐車場に戻る。
 車に乗り込み、水族館の駐車場を出て、他に寄る事も無く島内から出て、真央が最初に希望した能降半島側の、橋の手前の広場に寄り道をする。
 俺達家族は広場内に有る、展望台からの橋の風景を眺める。

「のどかな景色だ…」
「田舎暮らしも憧れるな…」

 俺はそう呟くと、丁度俺の真横で、宮子も景色を眺めていた。

「宮子」
「この橋を見終わったら、もう帰路に着くで良いのだよね?」

 俺が宮子に問いかけると、宮子は時刻を確認する。

「そうだね…」
「レンタカーは明日の午前中までしか取ってないから、追加料金の事を考えるとこの変が潮時だね…」

「なら、これを見終わったら、家に帰りますか…」

 俺と宮子が打ち合わせをしていると、咲子が声を掛けて来る。

「お父さん! お姉ちゃん!!」
「どうせなら見るだけで無く、橋も歩いてみようよ!!」
「吊り橋なんて、私の町では歩く機会なんて無いから!!」

 咲子がそう言うと……

「お父さん!!」
「私も歩きたい!!」
「歩かなきゃ、意味が無い!!」

 近くで橋を見ていた真央も、咲子と同じ事を言ってきた。
 そう言えば真央は今朝、橋を歩きたいとか言っていたな……

「どうする……宮子」
「宮子の判断に俺は任せるよ!」

 今回、旅行の主催者は宮子で有る。
 俺の考えは咲子・真央に賛同だが、宮子にだって後の都合があるはずだ。

「天気も良いし、歩きましょうか?」
「また、この場所に来られるとは限らないから……」

 宮子が橋を歩く事を決め、展望台から橋に向かって全員が歩き出す。
 母さんは、特に何も発言しなかった。
 車で往復渡った橋だが、今度は徒歩で橋を再び渡る事に成りそうだ!
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