単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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番外編

第11話 家族旅行 その5

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 俺から声を掛けにくい宮子だが、母さんは気軽に声を掛けている。

「どう? 宮子?」
「…みんなでも家族旅行は…?」

 母さんが宮子にそう尋ねると、宮子は少し恥ずかしそうな口調で答える。

「楽しいけど、旅行の行程を作るのも難しいね!」
「親友と旅行に行く時は、事前に行く場所を決めてしまうけど、今回は大雑把過ぎた…」

 旅行の段取りを失敗したと感じ取っている宮子だが、母さんは陽気な声で掛ける。

「宮子!」
「それは、しょうがないよ!!」

「咲子や真央の意見を取り入れたら、絶対有名テーマパークに成るし、お父さんも単身赴任中で、気軽に連絡は取りにくいから!」

 母さんはそう言って宮子をフォローしている。
 母さんは連れてって貰うのは大好きだが、自らが運転して観光地に行ったり、行程を組むのは苦手だそうだ。
 母さん曰く『私が旅行の行程組むと、食のツアーに成るから評判悪くて…』が理由らしい。
 母さんと食べ歩きデートをした事が有るが、そんなに食べている感じでは無かった……。俺の手前、遠慮していたのかな?

 道も大分開けてきて灯台が遠くに見えてきた。後少し到着で有る。
 しかし…、9月の下旬だが、今日は天気が良いので日差しも強くて、体がしっとりと汗ばんでくる。

「宮子も大分、お父さんと話せるように成って来たね♪」

「うん…慣れてきた」

「お母さんとしても、お父さんともっと仲良くして欲しいな♪」
「…でも、程々にね///」

「大丈夫だよ……。私は咲子見たいには成らないから」

 俺は咲子の話が出て来たので、思い切って話の輪に入ってみる。

「宮子はどの辺で気付いていたのだ?」

「えっ!?」

 俺が会話の輪に急に入って来たので、びっくりする宮子。

「あ~……その、咲子の事だよ」

「……私が本当に気付いたのは、あなたの家に行った時」
「あの時の咲子は、本当にあなたを思いやっていた……」

「あの時か…」

 宮子が何故か俺の所に来て、少しだが酒をみ交わした時で有る。
 母さんが飲む用で持って来てくれた、日本酒の御陰で宮子は心を開き始めた……

「あの時私(母さん)が置いていったお酒で、仲が良くなったらしいね♪」

 母さんが日本酒を持って来た理由は、俺と飲むつもりで持って来た。
 しかし、日本酒を飲む機会が発生しなかったのと、持ち帰るのも荷物になるからの理由で置いていった。

「あの日本酒が無かったら……今の俺達は居ないかもな……」

 俺がそう言うと母さんは……

「なら、今夜は美味しいお料理をおつまみに沢山飲みましょうか♪」

「良いねぇ~~と言いたいけど、今回はドライブ旅行だからな」
「次の日に残ると大変な事に成るから…」

「……」

 宮子は俺と母さんを同時に見て、少し笑った様な気もした。
 俺を父親として、見てくれているのだろうか?

 ……

 目の前に白い灯台が見える。
 結構体力は使ったが無事に到着をする……。青い空にそびえ立つ白い灯台。
 俺と母さんは一緒に、灯台付近から見える海景色を眺めている。宮子も近くで景色を見ていた。

(こう言った景色は、いつ見ても良い物だな…)

 俺はそう感傷に浸っていると、母さんが声を掛けて来る。

「ここからの景色も良いわね♪」

「あぁ、綺麗な水平線だ…」

「宮子も思った以上に打ち解けてきているし、後これが10年早かったらね……」

 母さんは“しんみり”した表情で言う。
 それは、そうだが……。宮子との関係が改善出来たのは本当に偶然だ。
 そもそも、咲子が俺の単身赴任先に来なければ起きなかった事で有る。

「母さん…でも、これでやっと本当の家族に成るのだから、それはそれで良いではないか!」

「そうだね。お父さん♪」

 母さんは笑顔でそう答えた。

「それはそうと……母さん。咲子と真央が灯台付近には見当たらないのだが…」

「適当にどこか巡っているのでは無い?」
「咲子はじっとする子でも無いし、真央もいるから」

「一応、柵が有るけど落ちたら崖だからな…」
「少し探した方が良いかな…?」

 灯台付近は広大に場所が開けているので、周りを見ただけでは咲子と真央の姿は見付からない。

「私達も他の所を見ましょうよ♪」
「咲子と真央もスマートフォンを持っているから、最悪連絡は出来るし♪」

 全く、危機感の無い母さん。
 母さんの言う通りだが、少しは心配しない者か?

 母さんは宮子に『自由散策♪』と言って、俺と母さんは他の場所から見える景色を見に行く。
 母さんは集合場所の事を言っていないので、俺は宮子に『灯台に集合』と付け加える。

 俺は咲子と真央を少し心配しながら、母さんと景色を見ていくが、母さんの口からは娘達を心配する素振りは全くなかった……

「良い天気ね~~♪」
「昔のデート時代を思い出すね♪」

 母さんは“のほほん”と言いながら、ペットボトルのお茶を飲む。
 それだけ、娘達を信用しているのか?
 整備されている歩道を歩いて行くと、森林も増えてきて海景色も段々見えにくく成って来て、芝生だけの公園ゾーンに入る。
 園内には東屋あずまやが有って、東屋には見慣れた姿が居た。

「咲子・真央と来たらここまで来て……俺は灯台までと言ったのだがな!」

 公園ゾーンは灯台から大体500m位離れており、幾ら何でも灯台付近とは言いにくい。

「まぁ、まぁ、お父さん♪」
「無事に見付かったのだし、怒らない♪」

 母さんは笑顔で話し掛けてくる。

「本当に久しぶりの家族旅行だから、2人とも浮かれているんだよ♪」

「母さんがそう言うなら……俺だけの中で留めるが」

「真央はともかく、咲子はほぼ大人だから、信用して上げなくては♪」

 母さんがそう言うので、咲子と真央には注意はしない事にする。
 俺と母さんが東屋に近づくと、2人はスマートフォンを触りながら寛いでいた。

「咲子達……。ここに居たのか?」

「あっ、お父さんとお母さん!」

 俺の声で咲子が振り向く。

「ここって、景色しか見る所無いね……少し飽きてきた」

「咲子。自然景観何て、そんなもんだよ!」
「しかし、灯台から大分離れているな…。こっちからの方が、駐車場に戻るのは近そうだし…」

「私(母さん)が宮子に連絡して、こっちに来て貰うように伝えるよ!」

 母さんはそう言って、宮子にスマートフォンで連絡をして集合場所の変更を伝える。
 宮子がこちらに来るまでは、東屋で休憩をしながら宮子の到着を待つ事にした。
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