単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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第77話 別れの日 その2

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 駅近くのハンバーガーショップで、咲子と少し早い昼食を取る。
 ハンバーガーを食べながら咲子と雑談をしているが、俺は1つ気に成っていた事が有るので咲子に聞いてみる。

「咲子……。さっきの、私の目的達成ってどう言う意味なんだ?」

「あぁ、それ!」
「お父さんとハグする事だよ!!」

 咲子はポテトを頬張りながら『けろっと』言う。

「えっ! それだけなの!?」

「そうだよ。それ以上の事は、私自身では求めてないし!」
「……お父さんが望めば、覚悟はしていたけど…」

 咲子は少し頬を染めながら言う。
 頼むから公衆の面前で、危ない発言は控えてくれ!

「……でも、それだったら海に行ったりとかの、回りくどい事をしなくても良かったのでは?」

「お父さん!」
「何でも、雰囲気は大事なんだよ!!」

「私が好き、好きと言っても、お父さんは『はい。はい』と受け流していたでしょ!」

 咲子は強めの口調で言う。

「親子関係は、本来恋愛関係には発展しないからな!」
「咲子の場合は、少し事情が違っていたみたいだが…」

「私は目的を達成出来たのだし、お父さんも約2週間、私と居られたから嬉しかったでしょ♪」

「まぁ、その辺に関しては本当に感謝しているよ!」
「家事に関しては殆ど咲子に任せてしまったから、今日の夜からが、また大変に成りそうだよ!」

「早く家に帰ってこられると良いね!」
「私としても嬉しいし!!」

 咲子は笑顔でそう言ってくれる。俺の家に来た当初は、そんな発言微塵みじんもしなかったのに……。きっと、咲子の中では全ての問題が解決したのだと思う。
 結果的に、当初の予定では咲子だけの滞在が、家族全員が俺の単身赴任先に来てくれた。

 俺の中では一番問題の宮子も、この単身赴任の御陰おかげで、少しだが心を開いてくれた気がする。
 最初は行きたくなかった単身赴任だったが、家族の絆が強まった感じがする。有る意味、感謝しなければ成らない……

 ハンバーガーショップで昼食を取った後は駅に車で向かう。
 今まで咲子は見送る立場だったが、遂に見送られる立場に変わる。

 駅の改札付近……

「お父さん。じゃあ、家に着いたら連絡するね!」

「あぁ、気を付けてな!」
「寝過ごすんじゃないぞ…」

「大丈夫ですよ~~。私はしっかり者だから!!」

「あっ、そうだった!」
「これを渡そうと思っていたんだ!!」

 咲子は陽気な声でそう言うと、バックから何かを取り出している。

「はい! お父さん!!」

「?」

 可愛らしいデザインの紙袋を、咲子は俺に手渡してくる。


「私達の地元の神社で授かったお守りだよ!」
「本当は、最初に来た時に渡しても良かったけど、最後の方に渡した方がえるかなと思って!!」

「お守りか!」
「咲子。ありがとう!!」

 俺はそう言いながら咲子からの紙袋を受け取る。

「じゃあ、私もお母さんの元へ帰るね!」

「あぁ、しばらくは会えないが元気にやるんだぞ!」

「お父さんも、怪我や病気と飲み過ぎないでね!」
「バイバイ! お父さん!!」

「ありがとう。咲子!」
「ご安全に!!」

 咲子は笑顔で手を振りながら改札に向かう。
 俺は『バイバイ』と言うのが少し恥ずかしかったので、現場用語で有る『ご安全に』を使った。
 これから咲子は電車を乗る訳だし、事故などが起きずに、無事に駅に到着して欲しい!!

 咲子の姿が完全に見えなく成ったのを確認してから、俺は車の方に戻る。
 その後は、運送会社に行って咲子の荷物の発送手続きを行ってから、スーパーに寄って、自分の分の食品等を買ってアパートに戻る。

 咲子から貰ったお守りは、無病息災むびょうそくさいのお守りで有った。他には何か入っているかなと期待したが、何も入っていなかった……
 ここで髪の毛とかが入っていたら、それはそれで恐いが!?

 短い様な長い間にも感じた、咲子と共に暮らす生活も無事に終れた。
 この単身赴任生活もまだ終わりは見えないが、咲子から貰ったお守りを大事に持って、仕事に励もうとちかった。
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