単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
62 / 167

第61話 我が家の長女 その3

しおりを挟む
 夕方の駅。
 まだ、夏休みだから学生服姿の子は少なくて、私達と同世代の人も私服姿の方が圧倒的に多い。
 お父さんと一緒にお母さんと真央を迎えに来たように、私も改札付近でお姉ちゃんを待つ。

 16時を過ぎて、しばらく経った頃。改札から人がゾロゾロ出てきた。電車が駅に到着したのだろう。
 私はお姉ちゃんが居るかなと思いながら、改札の方を見つめているが、この電車では無かった見たいだ。

(お姉ちゃん。16時位としか言わなかったからな)
(まぁ、でも、待ちますか……)

 お姉ちゃんも方向音痴では無いから、地図アプリで調べれば、1人でも来られず筈で有る。
 しかし、お姉ちゃんはお迎えを希望したし、お父さんも迎えに行って来て上げて言う。
 良く判らん!!

 結局、お姉ちゃんが駅に着いたのは16時半過ぎだった……

「待たせてごめんね! 咲子」
「ちょっと、アルバイトが上手に抜けられなかったから!!」

「アルバイトなら仕方が無いよ!」
「じゃあ、お父さんの家に案内するね!!」

 ちなみにお姉ちゃんのアルバイト先は雑貨屋さんで働いている。そんな話は関係ないか!
 お姉ちゃんと一緒に歩きながら、お父さんの家に向かう。

「でも…お姉ちゃん。良く来る気に成ったね!」

「仕方ないよ……。咲子」
「お母さんが『今までの生活や学費の殆どは、お父さんのお金から出ているんだよ!!』って言うからさ…」
「お父さんが死んじゃった時のお金は、全部お父さんの実家に取られたらしいの!?」

「えっ、そうなの!?」
「初めて聞いたよ!!」

「お姉ちゃんも始めてさ!!」
「金額は判らないけど、お金の話は何となく覚えていて、あの時のお母さんが戸惑っていたのは覚えていたから」

「でも、全部取られていたとは知らなかったし。でも、良く考えたら、何処かで聞いた覚えが有る様な気がする」

「私(咲子)はその辺が全然判らないけど、そうなんだにしておくよ」

「まぁ、過ぎてしまった事を言っても仕方ないしね」
「咲子。家まではどれ位有るの?」

「お父さんの家?」
「ん~~、ここから約30分かな?」

「え~~、そんなに歩くの!!」
「なら何故、あいつは車で迎えに来ない!!」

 お姉ちゃんは少し怒りながら言う。夕方の時間だけど季節は夏だ。
 今日はまだ風が有るけどこの時期は、長時間歩きたく無いのも分かる。

「お父さんは仕事で来られないって!」
「私やお母さんで、大分休暇を取ったらしいから」

「むぅ~~」
「免許は有っても車が無いからな。車が有れば車で来られたのに!」

「お姉ちゃん。お母さんは、車貸してくれなかったの?」

「駄目って言われた」
「真央のクラブと買い物が有るとの理由で」

「なら、仕方ないね…」
「真央は元気している?」

「あ~~、もう、元気。元気」
「咲子があいつの家に行ってから、真央は私の元に直ぐ来るからね!」
「毎日、毎日、飽きずに私(宮子)の元に来るよ!!」

「それは……大変だね」

「本当、もう大変!!」
「一昨日なんか『宮子お姉ちゃん! 一緒に寝よ!!』まで言って来たからね」
「他人なのに、良く懐くよ!!」

「言われてみれば、真央は他人だもんね」
「普段は妹だと思ってしまうけど、実は違うもんね!!」

「まぁ、でも、いずれは知るんじゃない!」
「私達が本当の姉妹で無い事を……」
「知ったらあの子、どんな顔をするのだろうね!?」

「どんな顔するんだろう?」
「お姉ちゃん気になるね! 真央にも話しちゃおうか?」

「それを言ったら『家を叩き出す!』とお母さんは言った!」
「『咲子は妹だから仕方ないけど、真央にそんな事教えてどうするの!?』」
「『その辺の事は、お母さんとお父さんが時期を見計らって言うから言わないで!!』と強く言われた」

「あの年で事実を知ったら、たしかに困りそうだね…」
「真央は、お母さんとお父さんの子どもだけど、私とお姉ちゃんは義理のお姉ちゃんに変わってしまうからね」

「あの子の性格からして、そんな事無いような気もするけど…」

「でも、人は判んないよ。お姉ちゃん」
「最近の真央は、反発する事を覚え始めたから……」

「そうなの? 咲子」

「そうだよ。お姉ちゃん!」
「ネコと言いオセロと言い、―――」

 私はお姉ちゃんに、ネコの件やオセロゲームの件を話す。

「ふ~ん。つい最近までは、引っ込み思案の真央がね!」

「だから、お姉ちゃんも気を付けた方が良いよ!」

「気を付けるの何も、私(宮子)は咲子見たいに、自ら関わりには行かないからね」

「あっ、そっか」
「お姉ちゃん自ら、真央には声掛けないもんね」

「そう言う事!」
「咲子も、妹みたいに真央と関わるのも良いけど、程々しないと有る日、急に裏切られるよ!!」

「真央がそんな事するかな?」

「さぁ?」
「真央の親権は、お母さんとあいつだけど、私と咲子の親権はお母さんだけだからね!」
「何か有った時に、真央が急に化けるかも知れないよ!!」

「……無いと思うがな」

 私は真央の事を思い出す。
 引っ込み思案で、少しきつい言葉を言えば、直ぐにベソをかく真央が、そんな事をするはずが無い!! と思いたいが……

「それより、咲子」
「今日の夜はどうするつもりなの?」
「何処か食べに行くの? それとも咲子が作るの?」

「あぁ、それを聞かなければ無かった!!」
「お父さんも、晩ご飯の事は悩んでいて、お姉ちゃんの希望をフルに叶えるって言っていた」

「フルに希望ね…」

 お姉ちゃんは『食べ物で釣ろうとしても無駄だ!』の顔をしながら言う。
 お姉ちゃんも焼肉は好きだから、焼肉屋に連れて行けば良いのだが、私達が先週焼肉屋に行ってしまったからな……

「何しようか~~。ステーキハウスでも連れって貰うか!」
「カウンター寿司でも良いけど、この町に有るのか!?」

 お姉ちゃんは、食べ物の独り言を言いながら歩いている。
 私はそれを眺めつつ、お姉ちゃんと一緒にお父さんの家に向かった。 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...