単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
47 / 167

第46話 母さんとの出会い その3

しおりを挟む
 小春との交流が始まったのは良かったが、お互いの休みが中々合う事は少なかった。
 小春はスーパーの店員。俺は工場勤務だが、土曜日・祝日は交代で出勤しなければ成らなかったため、月に1~2回会うのが限界だった……

 その代わり、メールや電話で普段会えない部分をカバーして、少しずつだがお互いの仲を深めていった……
 小春はどちらかと言うと内気な性格で、大きな公園でのんびりしたり、食べ歩きをする程度の行為を楽しんでいた。

 小春と親友として付合いだしてから、半年位経ったある日……
 急にその日に『今日の晩、ファミレスに来て欲しい』とメールで小春から連絡が入った。
 その日の俺は残業の予定日だったが、上長に無理を言って定時に上がらせて貰い、小春の指定したファミレスに向かった。

 俺はファミレスに着いて、小春にメールで連絡を取ると『店内に居るから来て』と直ぐに返信が来る。
 店内に入り、席周辺を見渡すと小春の姿を見つける。

 俺は小春を見つけて、小春の座っている席に近付くと、小春以外の誰かが席に座っているのに気が付いた。
 不思議に思いながら、小春の座っている席に来ると、小春の向かいに小学生高学年位の女の子と、小春の横には幼稚園児位の女の子が座っていた。

(あれ?)
(この子達は誰だろう? 小春の親戚の子かな?)
(しかし、相席するんて一言も聞いてないぞ)

 この時はまさか、小春自身の子どもだとは思っていないので、普通に小春に声を掛ける。

「小春。お待たせ、待った?」

 と言った瞬間、小学生の女の子が俺を睨み付けてきた。

(うぁ……何この子。感じ悪いな……)

 その子の事は相手にせずに、小春の方に体の向きを変えると小春は返事をする。

「……取り敢えず、座って……」

 小春に席に座るようにうながされるが、俺の空いている席は先ほど睨み付けてきた、女の子の横しか空いてない。俺は突き刺さる視線に耐えながら席に座る。

「ごめんね。急に呼び出しちゃって…」
「大丈夫だった?」

「いや、まあ、大丈夫だけど……」
「急にどうしたの?」

 俺は小春の横に座って居る、幼稚園児位の女の子を見る。
 その子は別に、俺を睨み付けようとはしなかったが『ジー』と俺の事を見て居て、観察されている気がした。

「話の前に、注文だけしちゃって」
「その方が、落ち着いて話せるから…」

 小春はそう言って、テーブルに置いてあるインターホン鳴らして、ウェイトレスさんを呼ぶ。何時もの明るい小春では無く、重苦しい雰囲気を感じる。

 夕食時の時間帯だが、俺はここで夕食を取る気は無かったので、ドリンクバーだけを注文する。
 小春とその子ども達は、ドリンクバーとデザート類を頼んで既に食べていた。
 俺は注文を終えた後、ドリンクバーでアイスコーヒーを注いで、小春達が座って居る席に戻る。
 席に座ってアイスコーヒーを飲もうとした時に、小学生の女の子が、ぶっきらぼうな口調で俺に話し掛けてきた。

「あなたが、新しいお父さん!?」

「はい~!?」

「何……、びっくりしているの? お母さんから何も聞いて無いの!?」
「貴方の名前は確か、真田筑摩で良いのだよね!」

「こっ、これ、宮子……。さん付けで呼びなさい」

「お母さんは、少し黙っていて!」
「合ってるよね、真田さん…」

「あぁ……俺の名前は、君の言う通り、真田筑摩だ」
「……えっと、じゃあ、今度は君の名前教えてくれる?」

「私は君じゃ無い!?」
「あなたから見て、私は男子に見えるわけ!!」

 その子は憤慨する。
 しかし、気が強い子だ……。もしかしたら虚勢きょせいを張っているだけかも知れんが。

「ごめん、ごめん。あなたの名前を教えてくれる?」

「……お母さん。何にも話していないんだね!」
「お母さん……時々、狡猾こうかつに成るからな。騙す気満々だったのかな…」

 その子は『はぁ~』とため息をつく。

「……私の名前は、新見宮子。長女です。小学生4年生です!」

(長女!? 親戚の子が、こんな紹介普通しないよな……。それに小春の事をお母さんと呼んでいたし)

 俺はまさかと思い、宮子に尋ねる。

「宮子ちゃんは長女何だよね…。他には姉妹は入るの?」

 俺は、恐る恐る宮子に聞くと……

「お母さんの横に座って居るのが、次女の咲子…」
「咲子。新しいお父さんに挨拶をして!」

 その時、丁度プリンを食べようとしていた咲子は、スプーンにプリンを乗せたまま俺の方に顔を見上げる。

「おとうさん、こんにちは……。あっ、今の時間は、こんばんわだね!」

 と言って咲子は、目線を戻してプリンを食べる……

(おい、おい、どうなっているんだ。受け入れたくは無いが、小春の子ども達か!?)
(しかし、そんな話聞いてないぞ!!)
(俺まだ、初婚に当たるのに、できちゃった婚ならず、連子結婚に成るの!?)

 状況が理解出来始めた俺は、小春の方を見る。

「あはは。子ども達に筑摩さんの事バレちゃってさ……。私のお母さんも『今後の事を考えて行動しなさい』と言われてしまったから、私の子どもの紹介?」

「本当は正式に付合いだしてから、告白しようと思っていたのだけど、それじゃあ、騙し討ちだと宮子に言われて、それでまだ、筑摩さんとは親友関係の状態だけど、紹介してみた……?」

 小春は困った笑いをしながら言うが、どうしろと言うのだ!?
 俺と小春の関係は大分進展はしていたが、大人の関係までは築けてなかった。
 仮に築いた後で、小春の子ども達が出て来たら、俺は逃げ場を完全に失っていた……
 突如現れた小春の子ども達……。本当に大きな壁にぶち当たってしまった!!
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...