単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
43 / 167

第42話 オセロゲーム その1

しおりを挟む
 俺と母さん達は、焼肉屋からタクシーに乗ってアパートに無事戻り、みんな普段着に着替えて、しばらくは焼肉屋での思い出話を居間でして、一区切り着いたら俺から順番にお風呂に入っていく。

 別にお風呂に行く順番は特に決まってないが、母さんが『お風呂入ってきたら!』と言ってくれたのでお風呂に入る。
 焼肉屋でビールを6杯飲んだ割には、意外にそう酔ってはおらず、普通にお風呂に入って、体を洗って、湯船に浸かってお風呂から出て来る……

 風呂上がりのビール(発泡酒)も最高だが、今日は止めておこう……。代わりに麦同士の麦茶を台所で飲んでから部屋に戻る。

 居間に戻ると母さん、咲子、真央と部屋には居るが、母さんは部屋で横に成っていた。そして、母さんの体にはタオルケットが掛けられていた。
 俺は体調でも崩したかと感じて、母さんに声を掛ける。

「母さん、大丈夫か?」
「体調悪いの?」

「あっ、お父さん。少し酔ったみたい……」
「はしゃぎ過ぎたかな…」

「水でも持って来ようか?」

「水は、さっき飲んだから大丈夫…」

「そうか…」
「布団敷こうか?」

「しばらく、横に成っていれば大丈夫のはず…」

 母さんはその様に言って、目を瞑る。
 何時もの元気な口調では無い話し方をするが、本人が大丈夫だと言っているし様子を見る。

 咲子と真央は、咲子が持って来たのだと思われるオセロゲーム(リバーシ)をしていた。特に母さんを心配する事無く普通にプレイしていた。
 普通ならお母さんを心配するはずだが、酒で酔うのは自業自得の面が強いから何とも言えない。

「咲子。真央。お風呂空いたよ…」

「あっ、うん。分かった…」

「は~い」

 咲子、真央とそれぞれが返事をするが、2人共お風呂には行こうとはしない。
 オセロゲームの決着が着くまでは、恐らく行かないのだろう。
 2人がやっているオセロゲームの盤面を見る……

(咲子が黒で、真央が白か……)
(4つ有る角の内、2つは咲子が取っているか……。圧倒的に咲子が有利だな)

 当たり前だが、咲子の方が大人だ。
 オセロゲームは運の要素より、頭の回転が良い人や、先読みをする能力が高い人が圧倒的に有利で有る。

 まだ、小学生の真央と学生の咲子とでは、真央が不利に決まっている。咲子は更に角を押さえており、真央の白石が黒石に圧倒されている。
 誰がどう見ても、真央の負けは目に見えていた……。咲子は追い打ちを掛けるように更に角を押さえる。

「あっ、咲子お姉ちゃんずるいよ~~」

「ゲームだからと言っても、私は手加減しない主義なの!」
「さっ、真央の番だよ!」

「う~~~」

 半べそを掻きかけている真央。ゲームに勝てないから悔しいのだろう……
 真央は俺に助け船を求めて来る。

「お父さん!」
「咲子お姉ちゃん。ずるいんだよ!」
「全然、私を勝たしてくれないもん!!」

「う~ん」
「俺も、オセロは得意では無いからな…」

 真央は俺が当てに成らないと感じたのだろう。

「もう、私止める!」
「絶対勝てないもん!!」

「あっ、こら、真央!」
「途中で止めない!!」

 真央はオセロゲームを放棄して、自分のスマートフォンを操作して画面を眺め始める。

「あ~~、完全勝利目指していたのに……」

 咲子はそう言いながら、オセロゲームを片付け始めるが……
 急に咲子が、俺の方に目を向ける。

「お父さ~ん!」
「私(咲子)とオセロしようか!」

 母さんの口調を真似てか、咲子は俺に対戦を求めてくる。
 母さんの口調を本当に上手に真似るので、俺は一瞬だが『ドキッ!』としてしまう。

「……さっきも言った通り、そんなに強くないぞ…」

「強く無いと言える事は、オセロは出来るんでしょ!」
「なら、やろうよ!!」

「え~~」
「酒飲んだ状態で、頭を使うゲームをるのか…」
「少し……、厳しいよ…」

 俺は咲子とのオセロゲームを断ろうとすると、真央はスマートフォンの画面を見るのを止めて、俺に言って来た。

「お父さん!!」
「私(真央)のかたきを取って!!」
「何時も、手抜かないんだもん!!」

「ほらほら、真央に言われているよ!」
「お父さん!」

 咲子は余裕な口調で俺に対戦を申し込んでくる。咲子は余程、オセロゲームに自信が有るのだろうか……
 スマートフォンのゲームアプリでも、オセロゲームにそっくりのゲームは有る。咲子はそのゲームで腕を鍛えたのだろうか?

 テレビゲームの時は、ほぼ惨敗だったが、オセロゲームならまだ勝てるのか?
 母さんは本当に寝ているらしく、普段なら絶対に話の輪に加わって来るが、今日は加わって来ない……

「仕方無い、真央の敵を取ってやろう!!」
「覚悟しておれ!!」

「そう来なくては!」

「絶対勝ってよ! お父さん!!」
「負けたら、もう、口聞かないからね!!」

 真央はとんでもない事を言う。
 オセロゲームをゲームの初期状態にセットして、咲子とオセロゲームを始める。
 焼肉屋で飲酒をした事によって、判断力が思いっきり鈍っているはずだが、小生意気の娘を『ギャフン』と言わせられるかも知れない……
 咲子とのオセロゲームの対戦が始まった……
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

処理中です...