35 / 167
第34話 夫婦の会話 その1
しおりを挟む
「母さん、2回目だけど、乾杯!」
「はい! 乾杯!!」
改めて母さんと乾杯をして、3次会(夫婦の時間)が始まる。
ワイングラスは当然無いので、代わりにガラスコップで乾杯する。ワインは赤ワインで有る。
俺は“ちびり”とワインを口付けるが、母さんは結構コップを傾けていた。
「ふぅ~」
「ワインは良いね♪」
「手頃のお値段のでも、私は十分美味しいわ♪」
ワイン飲みながら、時々おつまみを摘まんで、夫婦で3次会が進んでいく……
咲子達の前には言えない大人の会話(家庭状況)をしながら、少しずつ時間が過ぎて行く。
新品だったワインボトルも、時が経つに連れて減って行き、それに比例して、お互い大分出来上がって来たようだ。(酔っ払ってきた)
おつまみと言ってもチーズとか、ナッツ類とかの乾き物が中心で有る。本来はこれ位が良いのだが、どっしりした物が有ると嬉しい。
一番ボリュームの有る、唐揚げも中盤付近で終わってしまった。何か一品欲しい気分で有る。
「何か、母さんの作った回鍋肉が食べたくなってきたな…」
「回鍋肉? 私の何か、水っぽくて美味しくないでしょ!」
「私自身でも知っているのに……嫌み~?」
母さんは眉をひそめながら言う。
「違うよ! 本当に母さんの回鍋肉が食べたいんだよ!!」
「それにしても、何で急に?」
「何でだろう?」
「何となく?」
「私としては、回鍋肉は作るより、お店に食べに行く方が良いな!」
「今度、お父さんが帰ってきた時は、中華料理屋さんに行こうか!」
「……家で作るのは、ほぼ1品で済むのとキャベツの整理を兼ねているだけだし!!」
母さんは最後の方で爆弾発言する。
「俺が母さんの味を求めているのかも知れないな……」
「咲子の料理も美味しいが、やはり母さんの味が良いんだよな…」
「あは! 嬉しい事言ってくれるね!!」
「はい! ワイン注いで上げる!!」
そう言いながら、俺のコップにワインを並々注ぐ母さん。
母さんは自分のコップにもワインを注ぎ、一口付けると軽く息をつく。
「……お父さんと咲子が、上手に遣っているようで安心したわ」
「俺も本当に、最初はどうなるかと思ったが、無事に終わりそうだよ」
「咲子は連れて一緒に帰るんでしょ?」
そうすると母さんは『どうだろう?』の顔をする。
「咲子が帰るというなら一緒に連れて帰るけど、まだ居たいと言ったら居るんじゃない?」
「うん、明日にでも聞いてみるよ!」
何だか掴み所が無い事を言う母さん。
「えっ、そんな感じで良いの?」
「んっ、あの子の予定は、あの子の予定なんだから!!」
母さんはケラっと言いながら、ワインの入ったコップをグッと空ける。
空に成ったコップを静かに置くと、急に母さんは、にやつきながら話し掛けて来る。
「でも、楽しかったでしょ~~。若い女の子との2人暮らし~~!」
「私(母さん)よりも、咲子が良いと思ったでしょ~~」
「いやっ、そんな事ないよ!」
「俺は母さん一筋だよ!!」
「あれま! 普通の人なら絶対若い子選ぶよ♪」
「お父さんは変わっているね~~」
「それは、母さんの魅力を知らないからだよ!」
「私の魅力♪」
「それはどんなの? 教えて欲しいな~~♪」
今日の母さんは、大分出来上がっているようだ。
「そっ、それは……」
母さんを前にして、母さんの魅力的な部分を話すのは、この年でも恥ずかしい。
話すべきかと、少し悩んでいる間に母さんが話し出す。
「宮子、咲子共に、大きな事が起きずに育ってくれて本当に良かったわ♪」
「本当、お父さんのおかげでね♪」
「俺は特に何もしていないよ。母さんの教育の賜だよ!」
「でも、私一人じゃ、ここまで上手く行かなかったかも~~」
母さんは愚痴る感じで喋る。
「……そんな事、無いと思うがな」
俺は初婚だが、母さんは再婚で有る。
そして、宮子と咲子は母さんの連れ子で有る。俺が母さんと結婚する時、子持ちで有る事を含めて、周りからは猛反対されたが、俺はそれを押し切った。
母さんと結婚した時、宮子はもう状況を理解出来る年齢に成っていたので、宮子は俺に対しては、付かず離れずの選択を取った。
咲子の方も有る程度は理解していたと思うが、父親が欲しい頃だったのだろうか、すんなりと受け入れた。
「でも、母さん。まだ、真央がこれからだから!」
「真央も元気で何よりだわ。ちょっと、引っ込み思案が気になるけど、貴方に似たのかしらね?」
「宮子達にも馴染んでいるし、真央自身も、実の姉妹と思っているんじゃ無いのかしら……」
「そうだな……」
俺と母さんの本当の子供は真央だけで有る。
宮子や咲子の手前場、自分の子供を授かるのは躊躇った。異父姉妹は何が起こるかが読めないのと、他人の子供と自分の子供を同等に愛する自身が無かった。
しかし、母さんは『そんなの平気よ。何せ私の血だから!! そんな悪い子は居ないよ!!』とあっけらかんと言い、結婚して間もなくして真央を授かった。
まあ、たしかに俺は内気な性格だ。良く母さんと出会えて、ここまで来れたと何時も思う。
心の中で今までの事を思い出していると、母さんが尋ねてくる。
「それでお父さんは、咲子の事どうするつもり?」
「咲子があなたに、父親以上に懐いているのは知っているよね…」
「……やっぱりと言うか、まあ、誰もが見ても感づくよね」
「それより、咲子が事情を全て知っているような感じだが、母さんが話した?」
「私? 話してないよ」
「あの子が20歳に成ったら、話すつもりで居るから…」
「じゃあ、何で咲子は知っているんだろう……」
俺は咲子が発した言葉を思い出す。
『お父さん……私、全て知っているんだからね』
咲子のあの口ぶりはどう見ても、実の子じゃ無い事を知っている様だ。
母さんはしばらく考えた後、ゆっくりと口を開いた……
「はい! 乾杯!!」
改めて母さんと乾杯をして、3次会(夫婦の時間)が始まる。
ワイングラスは当然無いので、代わりにガラスコップで乾杯する。ワインは赤ワインで有る。
俺は“ちびり”とワインを口付けるが、母さんは結構コップを傾けていた。
「ふぅ~」
「ワインは良いね♪」
「手頃のお値段のでも、私は十分美味しいわ♪」
ワイン飲みながら、時々おつまみを摘まんで、夫婦で3次会が進んでいく……
咲子達の前には言えない大人の会話(家庭状況)をしながら、少しずつ時間が過ぎて行く。
新品だったワインボトルも、時が経つに連れて減って行き、それに比例して、お互い大分出来上がって来たようだ。(酔っ払ってきた)
おつまみと言ってもチーズとか、ナッツ類とかの乾き物が中心で有る。本来はこれ位が良いのだが、どっしりした物が有ると嬉しい。
一番ボリュームの有る、唐揚げも中盤付近で終わってしまった。何か一品欲しい気分で有る。
「何か、母さんの作った回鍋肉が食べたくなってきたな…」
「回鍋肉? 私の何か、水っぽくて美味しくないでしょ!」
「私自身でも知っているのに……嫌み~?」
母さんは眉をひそめながら言う。
「違うよ! 本当に母さんの回鍋肉が食べたいんだよ!!」
「それにしても、何で急に?」
「何でだろう?」
「何となく?」
「私としては、回鍋肉は作るより、お店に食べに行く方が良いな!」
「今度、お父さんが帰ってきた時は、中華料理屋さんに行こうか!」
「……家で作るのは、ほぼ1品で済むのとキャベツの整理を兼ねているだけだし!!」
母さんは最後の方で爆弾発言する。
「俺が母さんの味を求めているのかも知れないな……」
「咲子の料理も美味しいが、やはり母さんの味が良いんだよな…」
「あは! 嬉しい事言ってくれるね!!」
「はい! ワイン注いで上げる!!」
そう言いながら、俺のコップにワインを並々注ぐ母さん。
母さんは自分のコップにもワインを注ぎ、一口付けると軽く息をつく。
「……お父さんと咲子が、上手に遣っているようで安心したわ」
「俺も本当に、最初はどうなるかと思ったが、無事に終わりそうだよ」
「咲子は連れて一緒に帰るんでしょ?」
そうすると母さんは『どうだろう?』の顔をする。
「咲子が帰るというなら一緒に連れて帰るけど、まだ居たいと言ったら居るんじゃない?」
「うん、明日にでも聞いてみるよ!」
何だか掴み所が無い事を言う母さん。
「えっ、そんな感じで良いの?」
「んっ、あの子の予定は、あの子の予定なんだから!!」
母さんはケラっと言いながら、ワインの入ったコップをグッと空ける。
空に成ったコップを静かに置くと、急に母さんは、にやつきながら話し掛けて来る。
「でも、楽しかったでしょ~~。若い女の子との2人暮らし~~!」
「私(母さん)よりも、咲子が良いと思ったでしょ~~」
「いやっ、そんな事ないよ!」
「俺は母さん一筋だよ!!」
「あれま! 普通の人なら絶対若い子選ぶよ♪」
「お父さんは変わっているね~~」
「それは、母さんの魅力を知らないからだよ!」
「私の魅力♪」
「それはどんなの? 教えて欲しいな~~♪」
今日の母さんは、大分出来上がっているようだ。
「そっ、それは……」
母さんを前にして、母さんの魅力的な部分を話すのは、この年でも恥ずかしい。
話すべきかと、少し悩んでいる間に母さんが話し出す。
「宮子、咲子共に、大きな事が起きずに育ってくれて本当に良かったわ♪」
「本当、お父さんのおかげでね♪」
「俺は特に何もしていないよ。母さんの教育の賜だよ!」
「でも、私一人じゃ、ここまで上手く行かなかったかも~~」
母さんは愚痴る感じで喋る。
「……そんな事、無いと思うがな」
俺は初婚だが、母さんは再婚で有る。
そして、宮子と咲子は母さんの連れ子で有る。俺が母さんと結婚する時、子持ちで有る事を含めて、周りからは猛反対されたが、俺はそれを押し切った。
母さんと結婚した時、宮子はもう状況を理解出来る年齢に成っていたので、宮子は俺に対しては、付かず離れずの選択を取った。
咲子の方も有る程度は理解していたと思うが、父親が欲しい頃だったのだろうか、すんなりと受け入れた。
「でも、母さん。まだ、真央がこれからだから!」
「真央も元気で何よりだわ。ちょっと、引っ込み思案が気になるけど、貴方に似たのかしらね?」
「宮子達にも馴染んでいるし、真央自身も、実の姉妹と思っているんじゃ無いのかしら……」
「そうだな……」
俺と母さんの本当の子供は真央だけで有る。
宮子や咲子の手前場、自分の子供を授かるのは躊躇った。異父姉妹は何が起こるかが読めないのと、他人の子供と自分の子供を同等に愛する自身が無かった。
しかし、母さんは『そんなの平気よ。何せ私の血だから!! そんな悪い子は居ないよ!!』とあっけらかんと言い、結婚して間もなくして真央を授かった。
まあ、たしかに俺は内気な性格だ。良く母さんと出会えて、ここまで来れたと何時も思う。
心の中で今までの事を思い出していると、母さんが尋ねてくる。
「それでお父さんは、咲子の事どうするつもり?」
「咲子があなたに、父親以上に懐いているのは知っているよね…」
「……やっぱりと言うか、まあ、誰もが見ても感づくよね」
「それより、咲子が事情を全て知っているような感じだが、母さんが話した?」
「私? 話してないよ」
「あの子が20歳に成ったら、話すつもりで居るから…」
「じゃあ、何で咲子は知っているんだろう……」
俺は咲子が発した言葉を思い出す。
『お父さん……私、全て知っているんだからね』
咲子のあの口ぶりはどう見ても、実の子じゃ無い事を知っている様だ。
母さんはしばらく考えた後、ゆっくりと口を開いた……
0
お気に入りに追加
27
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。
新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

婚約者の様子がおかしいので尾行したら、隠し妻と子供がいました
Kouei
恋愛
婚約者の様子がおかしい…
ご両親が事故で亡くなったばかりだと分かっているけれど…何かがおかしいわ。
忌明けを過ぎて…もう2か月近く会っていないし。
だから私は婚約者を尾行した。
するとそこで目にしたのは、婚約者そっくりの小さな男の子と美しい女性と一緒にいる彼の姿だった。
まさかっ 隠し妻と子供がいたなんて!!!
※誤字脱字報告ありがとうございます。
※この作品は、他サイトにも投稿しています。
こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果
てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。
とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。
「とりあえずブラッシングさせてくれません?」
毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。
そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。
※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~
月
恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん)
は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。
しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!?
(もしかして、私、転生してる!!?)
そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!!
そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる