単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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第27話 お母さん来襲

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 咲子の心の中……

 お母さん達がこの家に来ることが決まってから、お父さんは妙にウキウキしている。
 まあ、その要因を作ったのは私だし、お父さんとずっと一緒なのも色々な面で不安は有ったから、丁度良いかなと私も思っていた。

 水曜日、木曜日も家事と夏休みの課題をして、折角知らない町に来たのだから少し、周りの散策をして見たり、何時もとは違う生活を楽しんでいたら、もう木曜日の晩ご飯の時間。最近はこってり系料理が続いていたから、今日は魚料理を作ってみる。

 ……

「咲子。今日は鮭か!」

「そう。魚料理も作らないと行けないと思って、鮭の塩焼きにしてみた!」

 今日の晩ご飯は鮭の塩焼き、塩茹でしたアスパラガス、ほうれん草のお浸し、冷や奴で有る。塩茹でしたアスパラガスは、醤油マヨネーズを付けて食べるみたいだ。

「今日は完全に和食だね」

「こってり料理ばかりでは流石に体に悪いからね。バランスよく食べないと!」

「まあ、そうだな…」

 このようなメニューが嫌いでは無いが、少々さっぱりしている気がする。でも、咲子は俺の事を考えて作ってくれたんだろうと思い、心の中で留めておく。

 一緒に『いただきます』をして今日も晩ご飯が始まる。
 しばらく食べ進んでいくと咲子が聞いてくる。

「ねぇ、お母さん達。明日、何時頃来るの?」

「ああ、そのことはまだ言ってなかったな」
「夕方、母さんからメールが有ってな、明日の昼過ぎと書いて有った」
「駅に着いたら連絡すると書いて有ったから、咲子と同じ位の時間じゃ無いのかな?」

「えっ、昼過ぎなの!? ずいぶん遅くない?」

 咲子は少し、びっくりした口調で言う。

「そうなんだよな……。日帰りだったら、そんなに居られないからな…」

「いや、いや、お父さん」
「昼から来て日帰りは無いでしょ! 流石に!?」

「でも、4人がこの家に泊るには少々厳しいぞ。布団も2組しか無いし」

「私達みたいに、2人で1組なら十分だよ!」

「ん~、母さん、そう言う考えなのかな?」

「きっと、そうだよ!」
「ここまでの交通費も馬鹿にならないし、本当に日帰りだったらお金が勿体ないよ」

 お金が勿体ない……。咲子らしい発言だ。でも、その発言はちょっと『モヤッ』とするが聞き流す。

「でも、お母さんも具体的な日にちを書けば良いのにね!」

「まぁ、母さんもこの家に来るのは初めてだから、上手に状況が掴めて無いんじゃないのかな」

「そういうもんかな?」
「う~ん……」

「明日になれば分かるさ!」

「お父さん。それはちょっと楽観的過ぎ…」

(お父さんは、お母さんを妙に信じている部分が有るし、お母さんも時々、突発的な行動を取るからな)
(まあ、私はどうでも良いんだけど…)

 その後は普通に食事をして、何時も通りの生活をして、その日は終わった。

 ☆

 今日は金曜日。母さんと三女の真央が来る日。
 午前中は咲子と一緒に家事をして、母さんと真央を迎える準備をする。
 簡単な物で昼食を咲子と一緒に取っていると、スマートフォンから着信音が鳴る。俺はスマートフォンを操作すると、母さんからのメールだ。メールの内容を見る。

『お父さん、こんにちは (^_^)』
『今、真央と電車に乗っていてね、13時20分頃に駅に着くよ!』
『お迎えよろしくね! (*^_^*)』

 メールを見終わり、咲子にさっきの内容を伝える。

「咲子。お母さん達、13時20分に駅に着くって」

「あ~、やっぱり、昼過ぎなんだね…」

「母さんの中でも色々有るんだろう。掃除をしたり、買い物をしたりとか」

 何故か咲子は、ここでため息をつく。

「はぁ~、お父さんは優しいね…」

「えっ、どうして?」

「そこまで、お母さんを信用しているから…」

「でも、相手を信用しなければ何も始まらないぞ」

「私が言いたいのはそういった意味では無いから! あぁ、もう良いや!!」
「ごちそうさま! お父さんも早くご飯食べて!!」
「後片付けして、お母さん達迎えに行くよ!!」

 咲子がそう言って席を立ち、自分の食器を持ってさっさと台所に歩いて行く。俺は慌てて残りの昼食を掻き込んで咲子の後を追った……

 ☆

 母さん達が駅に着く大体10分前、俺と咲子は母さん達を迎えるために駅に着いた。

「咲子を迎えに来た時を思い出すよ。まさか、母さん達も迎えに来るとは思っても居なかったよ」

「はい、はい、それは良かったね。そんなニコニコ顔で言わないでよ。こっちが恥ずかしいよ///」

 咲子はそう言いながら俺と少し距離を開ける。でも、嬉しいのだから仕方ない。
 母さん達と会った後の予定を色々考えながら、母さん達を待つので有った。

 ……

 咲子と駅の改札付近で待っていると、スマートフォンから着信音が鳴る。

「母さんからかな?」

 スマートフォンを操作するとやはり、母さんからのメールだ。メールの内容を見る。

『こんにちは!』
『もうすぐそっちに着く予定だったけど、車内で急病人が出て○×駅で止まっているの(>_<)』
『しばらくしたら動くと思うけど、遅れるね(^_^;)』

「……」

「ねぇ、やっぱりお母さんから?」
「……どうしたのお父さん? じっとスマートフォンを見ていて…」

「何か、急病人が出て、○×駅で電車止まっているんだって。それで遅れると…」

「あっ、そっかぁ……まあ、しょうがないよね」

「あぁ……、どうしようも無いもんな」

 急病人対応なら、それほど待たされる事は無いと思って、そのまま改札付近で待つことにした。
 しばらくすると駅の構内アナウンスで、電車の遅延が放送されていた。

「お父さん、暇だね……」

「そうだな。だけど、もうすぐ来るよ」

 ……

 到着時刻の約10分遅れで、母さん達が乗っている電車が駅に到着した。

「あっ、お母さんと真央だ!」

 改札からゾロゾロ出てくる人混みの中から、素早く母さん達を見つける咲子。母さんは片手に、大きなビニール袋を持っている。
 その声に気付いたか、真央も『咲子お姉ちゃん~』と声を上げていた。
 改札を出た真央が早速、咲子の方に向かって来ると言うべきか突進してきた。

「咲子お姉ちゃん~~」

 真央は飛びつく様な勢いで咲子に向かっていく。

「うぁ! おっとっと!!」

 咲子は不意を突かれたのか、真央に抱きつかれた時に少しよろめく。
 俺的には咲子に飛びつくより、俺に飛びついて欲しかった気がするが、仲が良い証拠だと思うことにした。

「もう、真央!」
「急に飛びついて来ないで!!」

「だって、寂しかっただもん。それに、咲子お姉ちゃんだけ、遊びに行ってずるいんだもん!」

「だって、真央はクラブ活動有るんだから仕方ないって……。大丈夫なのクラブ活動?」

「うん。お盆休みだって!」

「えっ、そうなの? 本当、お母さん?」

「ええ、そうよ。真央の言う通りよ♪」
「例年の地区予選も1回戦負けしてしまったし、今年は暑すぎるから、しばらくお盆休みにしたらしいの」

「へぇ~~」

 少々驚いている咲子。
 真央は少々、小柄の子だが、屋外の地域クラブ活動に入っている。
 其所のクラブ活動は試合に勝つことが目的で無く、あくまでクラブ活動を楽しむ事が目的らしい。おかげで試合は毎回初戦敗退らしいが……

 まぁ、たしかに今年は例年より暑いし、熱中症等にでも掛かったら色々問題が起こるから、有る意味賢明な判断だろうと感じた。

 咲子と真央は、何か2人で話をしているようだ。俺はそれを眺めつつ……、母さんの方に向きを変えて話し掛ける。

「まぁ、災難だったね」

「えっ? あぁ、さっきの事ね。まあ、仕方ないよ!」

 母さんは特に気にしてないようだ。

「母さん達の方はどう? 何も変わってない?」

「ええ、何時もと同じよ。お父さんの方は、咲子が居るから色々大変でしょう!」
「それに、色々気に掛けているんでしょ!」

「メールの通りだよ。数日は戸惑ったが、今はもう慣れたよ」

「あらま、それは良かったね。少し心配したけど、私はお邪魔虫だったかな♪」

 母さんは悪戯いたずらっぽく言いながら話す。

(あぁ。やっぱり、母さんを見ていると40代前半とは思えないな。俺の中では、まだまだ十分に行けるよ!!)

 世間話やお互いの近況を話し合う。そうすると何かを察知したのか、咲子が『グィっ』と俺の服を急に引っ張ってきた。

「ねぇ、こんな暑い所で話し込まないで、どうせ話すなら家に戻ろうよ!」
「あっ、後、真央が喉渇いたって!」

「お母さん。私(真央)、喉渇いた。ジュース欲しい!」

「まぁ、それもそうだな」
「それと真央が喉渇いたか。まあ、今日も暑いし。帰りにコンビニ寄るか……でも家は狭いからな」

「ねぇ、お父さん」
「久しぶりにみんなで、ファミレスでも行こうか♪」

「えっ、母さん……でも、ファミレスに入ったら、その大丈夫か?」

『大丈夫か?』はお金の事で有る。咲子の倹約家の親分、母さんだからな。

「たまには良いでしょう! お父さんも頑張ってくれてるし、お盆だし!!」
「それにさっきも電車内でも、真央と一緒に『冷たい物食べたいね!』と話していたし」

「お母さん! ファミレス行くの!?」
「やった~、真央ファミレスだって!」

「わ~い!」

 ファミレスと聞いて、はしゃいでいる咲子と真央。人目の着く改札付近なのに……

「お父さん! 決まりだね!!」

 母さんはニッコリ微笑む。

 ……

 アパートに向かう前に、ファミレスに涼みに行く事に成った。
 母さんが手に持っていた大きな袋が気になったので、聞いて見たらタオルケットらしい。布団が2組有るのは知ってたけど、万が一に備えて持って来たらしい。
 生もの系統の食品は持って来て無いので、駅からそのまま近くのファミレスに向かうことに成った。
 こうして新たに母さんと真央が加わった、少しばかりの本来の生活が始まりだした。
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