単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

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第23話 咲子の考え その1

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 翌日……
 今日も元気良く鳴る、目覚まし時計に俺は起こされる……

(むっ、もう朝か……。今日もあんまり寝た気がしないな…)

 目覚し時計を止め、俺は渋々、布団から起き上がり隣を見る。

「すぅ~、すぅ~」

 咲子は起きる素振りを全然見せずに、静かに寝息を立てていた。

(同じ布団で一緒に寝たと言う事は、思ったより昨日の影響は受けていないか?)

 本来ならそう願いたいが、仕方なく寝たと言うことも十分考えられる。

(ここで考えても仕方ない。朝ご飯食べて、仕事行く準備をしなくては……)

 咲子を起こさない様に静かに歩き、洗面台に向かった。

 ……

「行ってきます…」

 今日も俺が出かけるまでに咲子は起きて来なかった。
 別に気にはしていないが、何だか少し寂しい感じもする。

(自分がまいた種だし仕方ないか…)

 軽くため息をついて、玄関の鍵を閉めて、車に乗り込み職場に向かった……

 ……

 その頃の咲子……

 お父さんが出かけるのを耳で確認してから、私はゆっくりと布団から起き上がる。

「さて、どうしようかな?」

 お父さんが、お母さんや私達が好きなのは当然だ。夫婦だし家族だし!
 しかし、折角、私が態々わざわざ来ているんだから、もう少し考えて喋って欲しい!!

「まあ、あれだけ、はっきりと肯定するとは……」

 心では理解出来ていても、体の方は理解出来ていなかった。あの時の私は顔を強張こわばらせたはずだ。却って私が来た所為で、お父さんをホームシックにさせたのかな?
 只、今のお父さんは家族に会いたがっているのに違いない。

(したくないが、お母さんに相談してみるか……。まあ、でも、取り敢えず朝ご飯食べよ…)

 お母さんへの相談は時間が有る時にして、私は布団を畳んで、朝ご飯の準備をする。

 ……

 朝ご飯を食べた後は、後片付けをして、昨日と同じように洗濯機を回す。

(結局、勝手に洗濯機回したけど、何も言って来なかったな…)

 洗濯機が回っている間、また昨日と同じように夏休みの課題に取りかかる。
 洗濯機の終了ブザーが聞こえたので、適当な所で課題を切り上げ、洗濯物をベランダに干す。洗濯物を干していると空からの日差しは強く、今日は良い天気で暑くなりそうだ。
 洗濯物も干し終わり、少しエアコンの効いた部屋で休憩をしてから、掃除機で部屋の掃除をする。

 ……

「ふぅ。まあ、こんなもんかな!」

 大体の家事をこなし、少し心に余裕が出来て来たので、思い切ってお母さんに相談することにする。

「まあ、この時間なら、お母さんも一息付いている頃だよね」

 スマートフォンを操作してお母さんに電話を掛ける。しばらくのコール音の後、お母さんが電話に出る。

「はい……」

「あっ、お母さん! 私、咲子!!」

「んっ、どうしたの?」
「咲子から掛けてくる何て珍しいわね!」

 普段の電話はお母さんから掛かって来る事が大半で、私から掛けることはまず無い。

「うん、ちょっと……」

「何? お父さんに変な事でもされたの!?」
「大丈夫かな~~と、思っていたけど……」

 お母さんは探るように聞いてくるが、私は直ぐに否定する。一応……

「いっ、いや、そんなことは無いよ! 大丈夫だよ!!」
「実はね……、お父さんがホームシックに掛かっているかなと感じて…」

「どんな感じなの?」

「えっとね、―――」

 数日間の出来事をお母さんに報告する。元の職場に戻りたいとか、私が来ても考え事ばかりしているとか……只、私に興味が有るような素振りの事は話さなかった。

「成る程ね~~。大体分った♪」
「まあ、あの人のことだから、原因は解っているけど!」

「えっ、お母さん知ってるの!」

「まあ、知っていると言うべきか、私の考えが間違っていなければそうのはず!」

「じゃあ、お母さん。私はどうすれば良いの?」

「別に何もしなくても良いよ!」

「?」

 何でと一瞬そう思う。だけど、お母さんは続けて話す。

「あなたは、あなたらしくしていれば…」
「まあ、そうねぇ~~。敢えて言うなら、今日の晩ご飯は、お父さんが好きの物を作ってあげたら?」
「晩ご飯、咲子がメインで作っているんでしょ!」

「お母さん、知ってたの!?」

「知ってるのなんの、お父さんがそんな内容のメールを送って来たのよ!」

「へぇ~~~、そうなんだ……」

「内容は、お父さんがしっかりしなくては……、見たいな内容だったけど!」

「……」

 まあ、お父さんらしいなと思う私だった。
 でも、お父さんが近況を報告しているなんてちっとも知らなかった!?

「まあ、そう言う事で、今日はお父さんが好きな物を作ってあげなさい。そうすれば、大丈夫だよ!」

 自信満々の声で話すお母さん。
 良く判らないが、そうすれば良いのだろうと私は感じた。

「じゃあ、お父さんが好きな物を作ってみるよ」

「そうしてみなさい。あっ、お金は大丈夫だよね?」

「大丈夫だよ。しっかり持ってきているから」

「そう、なら良いわ」

「じゃあ、お母さん。これで電話切るね!」

「ええ、頑張りなさい……」

「うん! 頑張る!!」

 そう言って私は通話終了ボタンを押す。何を頑張るかは分からないが、上手に作れの意味だろうと捉えた。

「お父さんの好きな物か……」

 私は何が一番相応しいメニューなのか、早速考えることにした。
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