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第20話 それぞれの平日 その5
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……
(会社から真っ直ぐ帰ってきたのは良いが、果たして晩ご飯は出来ているのだろうか?)
車を駐車場に止めながら俺は考える。
(まあ、出来て無くても、手伝えば問題は無いが…)
俺は車から降り、集合ポストの郵便物を確認してから玄関に向かう。
(車から降りた時、チラッと居間側の部屋を見たが、部屋の電気は消えていたから恐らく台所だろう…)
(さて……どう入ろうかな?)
普段ならそのまま鍵を開けて入るのだが、今は咲子が居る。そのまま鍵を開けて入っても良いが、インターホーンを鳴らして出迎えて貰う方法も有る。
(でも、料理をしていたら悪いよな……)
玄関前でしばらく考えていると、急に『カチャン』と玄関のドアが開く。
「お父さんどうしたの? 入ってこないの?」
咲子が玄関ドアをゆっくり開きながら言う。
「あっ、入るよ。ただいま……」
「おかえり!」
咲子は笑顔で出迎えてくれる。
玄関から家に入った瞬間、料理の美味しそうな匂いが漂ってくる。
「お父さんの帰ってくる時間判らなかったから、直ぐにご飯は出来ないけど、そんなに掛らないから……」
(あっ……帰って来る時間言って無かったな)
「すまん……。帰って来る時間言って無かったよな…」
「本当だよ……でも、大丈夫! お父さんはお風呂でも入ってきて!」
咲子は少々不満そうな口調で言うが、直ぐに何時もの口調に戻る。
「手伝わなくても大丈夫か?」
「平気、平気! 後はお肉焼く位だから!!」
「ほら、ほら。早くお風呂行った、行った!」
咲子はそう言いながら、俺を浴室の方に押す。
(まあ、ここは任すか)
俺は咲子の言う通り、荷物を置いて着替えを持ってお風呂に入ることにした。
……
お風呂と言っても、今の応援派遣の職場には浴場が備わっている。
今日も仕事が終わってから、一風呂浴びてから帰宅している。
(この時期は、少し歩くだけで直ぐに汗に成るからな)
(シャワーだけでも浴びておくか…)
軽くシャワーを浴びてから部屋着に着替えて、咲子が居る台所に戻る。肉は焼き終わったらしく、咲子はフライパンを洗っていた。そして、俺に気付いた咲子は少しびっくりしたような表情をした。
「あれ!? お父さんもうお風呂出たの!?」
「あぁ。実は、職場でもうお風呂に入ったんだ」
「なんだ~」
「そうなら、そう言ってくれれば良いのに…」
「まぁ、少し汗掻いていたからな」
「後、何か手伝えることは無いか?」
「ん~、なら、お味噌汁注いでくれると嬉しいな!」
「分かった!」
戸棚からお椀の準備をして、味噌汁の入った鍋の蓋を開ける。
鍋の蓋を開けると、味噌汁の良い匂いが台所に広がる。
お玉で軽く味噌汁をかき混ぜお椀に注ぐ。味噌は白味噌だ。冷蔵庫に入っているやつをそのまま使ったんだろう。
「ほぅ。油揚げとわかめの味噌汁か!」
「そう! シンプルだけど美味しいよね!!」
「俺もたまに作るよ」
「良かった。喜んで貰えそうで!」
味噌汁を注いだ椀を居間に持っていくと、座卓の真ん中には、大きなお皿に乗ったお肉がドンと置いて有る。
「匂いで大体気付いていたけど、やはり豚の生姜焼きか!」
「そう! コッテリだけど豚肉は夏バテにも良いし、ショウガの香りと風味で食欲も湧くしね!!」
そう言いながら部屋に来た咲子は、何かの入った小鉢を持っていた。
「んっ、それは?」
「ああ、これ? ナスが旬だしナスの浅漬け作ってみた!」
「浅漬けか……珍しいの作るね?」
「えっ? お父さんは作らないの?」
「この類は殆ど作らないな。特にナスは……」
「ふ~ん、まぁ良いや。折角作ったんだし食べてね!」
笑顔に成りながら咲子は話す。
今日の晩ご飯は、豚肉の生姜焼き、ワカメと油揚げの味噌汁、ナスの浅漬け……。銘々の少し大きめの小皿には千切りキャベツが乗っており、ドレッシングがかかっていた。
(……実は、ナスはあまり好きでは無い)
子どもの頃からナスは好んでは食べなかった。
ナスを煮ると汁は紫色に染まって気持ち悪いし、皮の食感と、中のスポンジみたいな食感がどうも好きに成れない。
(麻婆ナスや天ぷらはまだ良いのだが、浅漬けと来たか……見た感じ、本当の生々しい浅漬けだな…)
小鉢のナスを見ると、一応『シナッ』とした感じでは有るが、皮や光沢も張りも有りそうで『ナス!!』って言う雰囲気を醸し出していた。
「お父さんどうしたの?」
「さっきからナスの小鉢をじっと見つめているけど、もしかしてナス嫌い?」
「いっ、いやそんな事無いぞ。浸かり具合はどうかな~~何て!」
「そう? 私の方は準備出来たしご飯にしよ!」
「あぁ……」
冷蔵庫から缶ビールでは無く、発泡酒を取り出して来て今日の晩ご飯が始まる。
小遣いの節約のため、平日は発泡酒を飲む。ビールは休日用だ!
1人暮らしの気ままな食事から、家庭の食事に戻った気分だった。
(会社から真っ直ぐ帰ってきたのは良いが、果たして晩ご飯は出来ているのだろうか?)
車を駐車場に止めながら俺は考える。
(まあ、出来て無くても、手伝えば問題は無いが…)
俺は車から降り、集合ポストの郵便物を確認してから玄関に向かう。
(車から降りた時、チラッと居間側の部屋を見たが、部屋の電気は消えていたから恐らく台所だろう…)
(さて……どう入ろうかな?)
普段ならそのまま鍵を開けて入るのだが、今は咲子が居る。そのまま鍵を開けて入っても良いが、インターホーンを鳴らして出迎えて貰う方法も有る。
(でも、料理をしていたら悪いよな……)
玄関前でしばらく考えていると、急に『カチャン』と玄関のドアが開く。
「お父さんどうしたの? 入ってこないの?」
咲子が玄関ドアをゆっくり開きながら言う。
「あっ、入るよ。ただいま……」
「おかえり!」
咲子は笑顔で出迎えてくれる。
玄関から家に入った瞬間、料理の美味しそうな匂いが漂ってくる。
「お父さんの帰ってくる時間判らなかったから、直ぐにご飯は出来ないけど、そんなに掛らないから……」
(あっ……帰って来る時間言って無かったな)
「すまん……。帰って来る時間言って無かったよな…」
「本当だよ……でも、大丈夫! お父さんはお風呂でも入ってきて!」
咲子は少々不満そうな口調で言うが、直ぐに何時もの口調に戻る。
「手伝わなくても大丈夫か?」
「平気、平気! 後はお肉焼く位だから!!」
「ほら、ほら。早くお風呂行った、行った!」
咲子はそう言いながら、俺を浴室の方に押す。
(まあ、ここは任すか)
俺は咲子の言う通り、荷物を置いて着替えを持ってお風呂に入ることにした。
……
お風呂と言っても、今の応援派遣の職場には浴場が備わっている。
今日も仕事が終わってから、一風呂浴びてから帰宅している。
(この時期は、少し歩くだけで直ぐに汗に成るからな)
(シャワーだけでも浴びておくか…)
軽くシャワーを浴びてから部屋着に着替えて、咲子が居る台所に戻る。肉は焼き終わったらしく、咲子はフライパンを洗っていた。そして、俺に気付いた咲子は少しびっくりしたような表情をした。
「あれ!? お父さんもうお風呂出たの!?」
「あぁ。実は、職場でもうお風呂に入ったんだ」
「なんだ~」
「そうなら、そう言ってくれれば良いのに…」
「まぁ、少し汗掻いていたからな」
「後、何か手伝えることは無いか?」
「ん~、なら、お味噌汁注いでくれると嬉しいな!」
「分かった!」
戸棚からお椀の準備をして、味噌汁の入った鍋の蓋を開ける。
鍋の蓋を開けると、味噌汁の良い匂いが台所に広がる。
お玉で軽く味噌汁をかき混ぜお椀に注ぐ。味噌は白味噌だ。冷蔵庫に入っているやつをそのまま使ったんだろう。
「ほぅ。油揚げとわかめの味噌汁か!」
「そう! シンプルだけど美味しいよね!!」
「俺もたまに作るよ」
「良かった。喜んで貰えそうで!」
味噌汁を注いだ椀を居間に持っていくと、座卓の真ん中には、大きなお皿に乗ったお肉がドンと置いて有る。
「匂いで大体気付いていたけど、やはり豚の生姜焼きか!」
「そう! コッテリだけど豚肉は夏バテにも良いし、ショウガの香りと風味で食欲も湧くしね!!」
そう言いながら部屋に来た咲子は、何かの入った小鉢を持っていた。
「んっ、それは?」
「ああ、これ? ナスが旬だしナスの浅漬け作ってみた!」
「浅漬けか……珍しいの作るね?」
「えっ? お父さんは作らないの?」
「この類は殆ど作らないな。特にナスは……」
「ふ~ん、まぁ良いや。折角作ったんだし食べてね!」
笑顔に成りながら咲子は話す。
今日の晩ご飯は、豚肉の生姜焼き、ワカメと油揚げの味噌汁、ナスの浅漬け……。銘々の少し大きめの小皿には千切りキャベツが乗っており、ドレッシングがかかっていた。
(……実は、ナスはあまり好きでは無い)
子どもの頃からナスは好んでは食べなかった。
ナスを煮ると汁は紫色に染まって気持ち悪いし、皮の食感と、中のスポンジみたいな食感がどうも好きに成れない。
(麻婆ナスや天ぷらはまだ良いのだが、浅漬けと来たか……見た感じ、本当の生々しい浅漬けだな…)
小鉢のナスを見ると、一応『シナッ』とした感じでは有るが、皮や光沢も張りも有りそうで『ナス!!』って言う雰囲気を醸し出していた。
「お父さんどうしたの?」
「さっきからナスの小鉢をじっと見つめているけど、もしかしてナス嫌い?」
「いっ、いやそんな事無いぞ。浸かり具合はどうかな~~何て!」
「そう? 私の方は準備出来たしご飯にしよ!」
「あぁ……」
冷蔵庫から缶ビールでは無く、発泡酒を取り出して来て今日の晩ご飯が始まる。
小遣いの節約のため、平日は発泡酒を飲む。ビールは休日用だ!
1人暮らしの気ままな食事から、家庭の食事に戻った気分だった。
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