単身赴任しているお父さんの家に押し掛けてみた!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
16 / 167

第15話 日曜日 その6

しおりを挟む
 夕食の時間も終わり、昨日は咲子1人で片付けたが、今日は一緒に後片付けをして、お風呂も順番に入って昨日と同じように部屋で過ごす。

「咲子、明日からの事なんだけど……」

「あっ、私もそれ聞こうと思っていた!」

 本当はもっと早めに言うつもりだったが、ゲームをしたり買い物や料理等で、ついつい記憶から飛んでしまっていた。

「まあ、朝も言った通り、父さんは明日からしばらく仕事に行かなければならない」

「そうだよね。でも、しばらくってどう言う意味?」

 咲子は『しばらく』の言葉の意味を知りたいらしい。

「まあ、状況次第だけど、週の後半の方は休暇が取れるかも知れない……」

「あっ、そう言う事!」

「では、咲子に家の鍵渡して置くから……はい」

「ほい! たしかに!!」

 咲子に玄関の鍵を渡す。無くさないように、余っていた適当なキーホルダーに鍵を付けて渡す。
 初日に渡すつもりだったが、何時も2人で行動していたので渡す機会が無かった。

「まあ、友達とかは呼んでも―――」

「わざわざ、呼ばないよ……」
「相手も交通費が掛って大変だよ!」

「あっ、そうか……」

 咲子は、あきれ顔をしながら言ってくる。
 まあ、当然と言えば当然だ。普段住んでいる家から、数時間掛る所にわざわざ親友を呼ぶ人も居ない。

「後、出掛ける時は―――」

「お父さん!」
「私、小さい子どもじゃ無いんだから、普段通りの事をしていれば良いんでしょ!!」

 子ども見たいな扱いをされたのが気に入らなかったのか、咲子はトゲの有る口調で言う。

「あっ、そうだね。普段通りで頼むよ。だけど、誰か来ても玄関は開けては駄目だからね!」

「どうして?」

「ここの地域も、治安が良いと言えないしね…」

「安全じゃ無いのか……」

 不安の顔になる咲子。

 誰だか判らない人に、迂闊うかつに玄関を開けて、それで事件に巻き込まれるのは絶対に避けたい!

「咲子の身を守るためだから、居留守を使っても良いから開けないこと!」

「えっ、でも宅配便とかはどうするの?」

「今、注文している品は無いから絶対来ないよ」

「それこそ『宅配便で~す!』と来たら危険だから絶対開けちゃ駄目だよ!」

「何か、防犯教室みたい。でも、お母さんが何か送って来るかも知れないよ?」

「それも、大丈夫!」
「母さんが荷物送って来る時は、きちんと連絡入れて来るから!」

「お父さんの住んでいる町は、そんなに危険なの!?」

 脅かしすぎたか、いつの間にか、咲子の顔は険しい顔に成っていた。

「そんな事無いよ!」
「警察署も近くに有るし、近所でも大きな事件は起きていない。安全な町だよ!!」

「じゃあ、どうして、そこまで用心するの?」

「そりゃあ、まあ……」

「ちゃんと教えて!!」

 真相を知りたくて、トーンを上げる咲子。

「咲子が大事だからだよ……」

 俺は小声でぼそっと言う。

「!!!」

 びっくりする咲子。しかし、びっくり顔から笑顔に変わり……

「おとうさ~ん~~」

 咲子はガバッと俺に抱きついてくる。

「そんなに私の事心配なんだ~~。ありがとう~~」

『チュッ』

「!」

 咲子は俺の頬にキスをしてくる。

「大事にしてくれているお礼だよ!」

 上目遣いで、恥ずかしながら言う咲子。

「咲子……」

 俺の中で、何かが抑え切れない感じがした。もう『先に進んでも良いよね』の感じがした。
 俺は一瞬ためらったが、この時点で咲子を抱きたいと思ってしまう。

(俺からも咲子を抱きたい!)

 そう決意し、咲子を抱きしめようとした瞬間。

「あっ、ドラマの時間だ!」

 咲子はわざとらしく言い、パッと体を離しテレビのチャンネルを変える。

「じゃあ、お父さんの言う通り、お父さんが居ない時は居留守使うよ!」

「……うん、頼む。そうしてくれると嬉しい…」

「出掛けるのは良いんだよね!」

「まぁ、出掛けるのは大丈夫だよ。ずっと家に居ても詰まらないしな。迷子に成らない程度に!」

「大丈夫だよ。スマホの地図機能を使えば問題ないよ!」

 そう、笑顔で返す咲子。

「もう、後は無い?」

「それ位かな」

「は~い」

 生返事に近い返事をして、咲子はドラマの方に意識を向けた。

 ……

 咲子が見ていたドラマを一緒に見て、1つのドラマが見終わった後、今日は俺が先に、寝室で有る部屋に向かう。
 今日こそは、別々に布団を敷こうと考えていたが、1つの布団しか敷けなかった。何故かと言うと、さっきの事が有るからだろう。敷いた布団に俺は寝っ転がる。

(あの時、咲子がドラマの時間で体を離さなかったら、俺は間違いなく咲子を抱いていただろう…)
(そうしたら、咲子はどう捉えてくれるんだろう?)

(『嬉しい!』と言ってくれるのだろうか?)
(それとも『何するの!』と言って、拒絶するのだろうか?)

 結果的に、抱かなかった(抱けなかった)ので今が有るが……
 咲子が来てから、俺の中での咲子の存在が変わって来ている。
 親子の関係を超えては行けない事を知ってはいるが、少しずつ理性が失われつつ有る。

(布団も1つしか敷かなかったし、俺は何を考えているのやら……)

 俺は心の中で葛藤しながら、その日は眠りに就いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

キャンプに行ったら異世界転移しましたが、最速で保護されました。

新条 カイ
恋愛
週末の休みを利用してキャンプ場に来た。一歩振り返ったら、周りの環境がガラッと変わって山の中に。車もキャンプ場の施設もないってなに!?クマ出現するし!?と、どうなることかと思いきや、最速でイケメンに保護されました、

悪役令嬢に転生したので、人生楽しみます。

下菊みこと
恋愛
病弱だった主人公が健康な悪役令嬢に転生したお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

こわいかおの獣人騎士が、仕事大好きトリマーに秒で堕とされた結果

てへぺろ
恋愛
仕事大好きトリマーである黒木優子(クロキ)が召喚されたのは、毛並みの手入れが行き届いていない、犬系獣人たちの国だった。 とりあえず、護衛兼監視役として来たのは、ハスキー系獣人であるルーサー。不機嫌そうににらんでくるものの、ハスキー大好きなクロキにはそんなの関係なかった。 「とりあえずブラッシングさせてくれません?」 毎日、獣人たちのお手入れに精を出しては、ルーサーを(犬的に)愛でる日々。 そのうち、ルーサーはクロキを女性として意識するようになるものの、クロキは彼を犬としかみていなくて……。 ※獣人のケモ度が高い世界での恋愛話ですが、ケモナー向けではないです。ズーフィリア向けでもないです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

転生したら、6人の最強旦那様に溺愛されてます!?~6人の愛が重すぎて困ってます!~

恋愛
ある日、女子高生だった白川凛(しらかわりん) は学校の帰り道、バイトに遅刻しそうになったのでスピードを上げすぎ、そのまま階段から落ちて死亡した。 しかし、目が覚めるとそこは異世界だった!? (もしかして、私、転生してる!!?) そして、なんと凛が転生した世界は女性が少なく、一妻多夫制だった!!! そんな世界に転生した凛と、将来の旦那様は一体誰!?

眺めるだけならよいでしょうか?〜美醜逆転世界に飛ばされた私〜

波間柏
恋愛
美醜逆転の世界に飛ばされた。普通ならウハウハである。だけど。 ✻読んで下さり、ありがとうございました。✻

処理中です...