偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

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【R-15】稀子編 第2章

第431話 すれ違いと急変

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 季節も、各地方で梅雨入り宣言を聞き始める頃……

 羽津音市はずねしで住んでいる鈴音さんから、無事に出産したとの知らせを聞く。
 鈴音さんが妊娠している事は、俺と稀子は以前から知っていたが、俺と稀子はその出産を喜んだ。

 山本たかあきさんと鈴音さんは、鈴音さんが大学を卒業した翌日に入籍している。
 結婚式も盛大に開かれ、俺と稀子は勿論式に参加している。

 鈴音さんは半年に1回ぐらいの割合で、泊まり掛けで遊びに来てくれる。
 山本さんは俺達に配慮して、一緒に来ても泊まっていく事はしない。

 山本さんのお店で有る『山本カバン店』は、鈴音さんのお陰で大繁盛しており、また山本さんが作るランドセルも、品質が良いので予約完売するまで名が広まった。
 山本さん親子もこれを非常に喜んでおり、山本さんと鈴音さんの結婚生活は順調らしい。

 また、鈴音さんの提案で現在のランドセル専門店から、本来の“カバン”店に戻す試行もしているそうだ。
 地域に相応しいカバン商品を取り扱って、地域振興にも貢献したいと、鈴音さんは嬉しそうな表情で言っていた。

 鈴音さんの方も、やりたい事に一段落が付いたので、此処でお母さんに成ったのだろう……

 鈴音さんは誰もが見ても、あげまんで有った。
 もし、俺は稀子では無く鈴音さんを選んでいたら、俺は羽津音市で学童保育指導員をしていたのだろうか?

 ☆

 鈴音さんが出産をしてから数ヶ月後。
 山本さんと鈴音さんは、俺と稀子の家に遊びへ来る。

 しばらく見ない間に、鈴音さんは完全にお母さんと成っていて、山本さんもDQNの様相は消え……やや普通の人に成りかけていた?

(やっぱり、赤ちゃんは可愛いな…!)

 鈴音さんの子どもは女の子(長女)で有り、それはとても鈴音さんに似ていた!
 山本さんの血が、薄い方で良かったね!?

「あはは♪」
「やっぱり、赤ちゃんは可愛いね~~♪」
りんちゃんと瓜二つ~~♪」

 稀子は笑顔で、鈴音さんの子どもを“あやしている”姿を見て、俺は心の中で思う……

(俺もそろそろ、稀子との子が欲しいな…!)
(俺は一人前に成れたし、稀子も一人前で有るが、ナスを栽培しているしな…)

 山本さんや鈴音さんも、稀子の状況を知っているので、子どもに関する事は言わない。
 稀子の母親で有る楓さんも、孫を非常に期待していたが、孫より仕事(農業)を憶える事を優先にするべきと判断したので、孫の事は一切言わなくなった。

 幸村さんに至っては『若い内に覚えた物は、ずっと身に付く!』と言って、稀子の熱血指導マンに成っていた……

「……」

 俺は鈴音さんの子どもを見ながら、早く自分の子どもが欲しいなと羨ましがった!///

 ☆

 季節も冬に入った、とある夜。

 ナス栽培も終えて農閑期に入った稀子は、幸村さん達の手伝いはしているが専業主婦に近い生活へ戻り、俺は稀子と一緒に居られる時間も戻る。
 俺は稀子と居間で団らんをしている時。稀子は少し真面目な表情で、急に俺に話し始める。

「…比叡君!」
「比叡君の方は、学童保育のお仕事が大変そうだね…」

「……うん」
「前の所長が、定年退職をしてからは本当に大変と成った…!」
「今の所長は、前の所長ほど気が利かないから……」

 俺は、悩んだ表情で稀子に話す。
 稀子は困った表情に変わり、俺へ言葉を続ける。

「…私の方も一人で、ナスの栽培をして見たけど……想像以上に大変で有った!」
「収穫や調製は勿論。剪定や誘引、消毒作業など、一人での農業に限界を感じた…」

「途中からは私の家族が、色々と手伝ってくれたけど、この先も一人で農業を続けるのは難しいし、このままでは何時まで経っても“お母さん”には成れない…」

「?」
「…何が言いたいのだ。稀子?」

 稀子が言った『お母さん』のキーワードで、俺は疑問を感じた表情で稀子に話す。
 稀子は、困った微笑み表情で俺に話し始める。

「ねぇ、比叡君…!」
「私と一緒に、農業をしない…?」

「!!」

「……馬鹿を言うなよ。稀子…」
「俺は学童保育指導員に成る為に、この地に来たので有って、農業をする為にこの地に来たのでは無い…」

「…だよね///」

 俺は冷めた表情と、突き放す口調で稀子に言ってしまう。
 稀子の方は、諦めた表情で返事をする。

「……」

(…だが、学童保育指導員の仕事が何時まで働けるかは不明だし、今の所長から好かれている感じがしないからな…)
(今回は、稀子『あぁ』に言ってしまったが、もう少し考えて喋るべきで有ったかな…?)

 俺は男性指導員で有るので“このまま”役職を持たないまま、学童保育所で勤務を継続するのは難しい!
 今の所長が俺と同年代で有るから、学童保育所の後釜狙うのはほぼ不可能だし、転勤も原則無いから、俺は何時かこの仕事を辞める日が来る。

 この日はこれで稀子との話は終わったが、俺の人生にまた、大きな悲劇が訪れようとしていた……
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