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【R-15】稀子編 第2章

第316話 腑に落ちぬが……

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 俺は稀子を無視するつもりで、玄関に向かう。
 稀子も罪悪感を感じて居るのかどうかは分からないが、何時もの様に声は掛けて来なかった……
 俺は無言で靴を履き、玄関の扉に手を掛けた所……

「比叡君!!」

 稀子はやっと俺に声を掛けた。

「なに…?」
「稀子……」

 俺は冷静な口調で返事をする。
 けど、腹の中は煮えくり返っていた。

「……ピアノの練習、中止に成っちゃったね…」

(お前が告げ口した癖に良く言うよ……)

 事実確認はしていないが、絶対稀子に決まっている。
 何で、こんな女を彼女にしたのだろう。

(このまま、無視してアパートに戻っても良いが……稀子が本当の黒だとは言い切れないし、けど……)

「だね……。折角、此処まで来たのに無念だよ…」
「今、焦って練習する必要は無いけど、試験終了後にピアノの練習を再開させる時は、一からのやり直しだね…」

「……」

(普段の稀子なら、根拠の無い元気付けをしてくる時が殆どだが、言葉に迷っているのか…?)

「稀子…」
「誰かが……告げ口したのかな?」

「!!」

 稀子の表情が、一瞬気まずい表情に成った!

(やっぱり……稀子か…!)
(まったく……、小学生かよ!!)

「どっ、どうなんだろうね!///」
「私には分かんないや~~!///」

 わざとらしく、すっとぼける稀子。

(そう言うしかないわな!)
(『私が告げ口しました!』何て言った日には、絶対大喧嘩に発展だよ!)

「はぁ~~」
「山本さんからの無償の好意だから、ずっと借りられる訳では無かったにはしろ、急すぎたね…」

 俺が未練たらたらに言うと、稀子が焦りながら言って来た。

「ひっ、比叡君!///」
「保育士の実技試験は音楽だけでは無いでしょ!」
「他の科目で頑張れば良いのだよ!!」

(ピアノの練習を潰した張本人が言うな!)

 俺の喉まで言葉が出掛かって居たが『グッ』と、その言葉を飲み込む。
 稀子がした行為は、本来許される行為では無いが、稀子がそれだけ俺の事が好きな証だと思って……許す事は出来んな…!

「比叡君。音楽では無く、造形で頑張れば良いんだよ!」
「造形なら、私でも教えられるし、練習するお金もピアノと比べれば全然掛からないよ!!」

(……それが、稀子の狙い!?)
(稀子の性格上、絵本を読む事や絵を描く事は好きそうな感じだ…)
(音楽だってピアノで無く、ハーモニカやリコーダーなら多分出来るんだろうな)

「比叡君!」
「今度は絵の練習をしよう!!」
「絵ならりんちゃんより、私の方が得意だし、私と比叡君は恋人同士の関係だから問題ないしね♪」

「なぁ、稀子…」
「本当に山本さんに、告げ口していないのだよね…」

「うっ、疑っているの比叡君!!///」
「私がそんな汚い事する、女の子に見える!!」

(……見える)
(だって、稀子はお子ちゃまだもん…)

「絵では無く造形の練習か…」
「絵も得意では無いんだよな……」

 俺が独り言を呟くと……

「比叡君!」
「私が居るから大丈夫だよ!!」
「試験の絵に関する事は、私も調べた事が有るから、比叡君をサポート出来るよ!」

「ピアノの練習もこの先はお金が掛かるし、来年の有る時期までは鈴音さんを借りる事も出来ないから、そうするしか無いが……稀子の方は大丈夫なのか?」

「比叡君。何が大丈夫なの?」

 稀子は“きょとん”としながら聞いてくる。

「……いや、さっき山本さんが言っていただろ!」
「稀子も今年受験生だ。俺のサポートも嬉しいが、俺だって稀子には現役合格して欲しい!!」

「あぁ、あれ!」
「うん。まだ、推薦は正式には貰えてないけど、推薦さえ貰えてしまえば、後は余裕だから問題なし!!」

(山本さんと言っている事が違うな……)
(山本さんの言った言葉だと、入学試験が有ると言っていたぞ!!)

 山本さんの話と稀子の話に食い違いが有るのに気付き、俺はその事を詳しく稀子から聞く事にした。
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