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【R-15】稀子編 第2章
第315話 無意味な交渉……
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「山本さん…。電子ピアノは何時、引き取りに来るのですか?」
「うん…。明日にでも引き取りに来るそうだ…」
(これは冗談抜きで稀子の奴、告げ口したな……)
(明日は平日だし、相手方も山本さんの様に何かの職人なのか?)
「山本さんからの好意ですから、仕方ないと言えば仕方ないですが、俺は折角此処まで練習をして来たのですよ…」
「俺は今後、どうすれば良いのですか……」
俺は山本さんに、情で訴えかけて見る事にしてみたが……
「それは本当に済まないと、僕でも思っている……」
「まぁ、それで、妥協案では無いが、比叡君が真剣にピアノの練習をしたければ、電子ピアノをレンタルする道も有る!」
「場所はこの場所を提供するが、レンタル費用は勿論、比叡君持ちだぞ……」
「電子ピアノをレンタルですか……」
「そうだ。比叡君!」
「僕も比叡君を応援しているが、金銭面での支援は出来ない」
「僕のポリシーに引っ掛かるからね!」
「こればかりは僕に知り合いは居ないから、専門のレンタル業者から借りる事に成ると思うが、今回の様なグレードを借りた場合、かなりの負担が比叡君に来るぞ……」
何故か山本さんは此処で、脅し掛けると言うか、諦めさせようとした口調で言ってきた!
山本さんが借りて来た電子ピアノは、ピアノの様に只弾くだけで無く、電子ピアノでしか出来ない機能が沢山付いている。
その電子ピアノの付加機能で、俺は此処まで練習が出来たのだから、それ位のグレードを借りないと、真面な練習は多分出来ないだろう。
「まぁ、場所は提供するから、比叡君が真剣にピアノ練習をしたければ、電子ピアノをレンタルして練習すれば良いが……鈴音を練習に付き合わせる事は、もう出来ないからな…」
「!!!」
(鈴音さんが居なければ、練習出来ないでは無いか!!)
(稀子と言い、山本さんと言い、酷すぎないか!!)
俺は恨めしそうに、山本さんをつい見てしまう!
山本さんも、それに直ぐ気付くが……
「おぃ、おぃ、比叡君……」
「その様に見られてしまうと、僕が悪者に成ってしまうではないか///」
山本さんは苦笑いしながら言うが、事実では無いか!
俺と鈴音さんとの仲を、これ以上深めさせない様に、電子ピアノを撤去するのだろうが!!
「比叡君…。これにも理由が有ってな…」
「鈴音も稀子ちゃんも、今年は受験生だ!」
「2人共、付属大学への推薦が貰えるらしいが、僕としては比叡君の練習より、鈴音には進学の方に意識を向けて貰いたい」
「大学なんぞ、現役で合格しないと意味が無いからな…」
「推薦を貰えて、入学試験に合格してからなら、比叡君の練習に付き合わせても良いが、これからの時期は絶対に駄目だ!」
「それに、電子ピアノのモードを使えば、1人で練習は出来るのだろ?」
「なぁ、比叡君……」
(外堀も埋められて、内堀も埋められたか……)
(自腹を切って電子ピアノをレンタルしても、鈴音さんが居なければ意味が無い……)
俺は鈴音さんが手助けしてくれないかと、鈴音さんの方を伺うが、鈴音さんは寂しそうな表情をしていた。
稀子は茶碗を持ったままの澄まし顔だが、顔がニヤ付いて居る様にも見えた!!
(くそ……)
(稀子と山本さんの思惑が一致してしまった……)
(レンタル費用も今から借りたら莫大に成るし、筆記試験を優先させている以上、アルバイト時間も増やせない)
(ピアノの練習は、筆記試験合格以降にするしか無いな…)
「それで、どうする。比叡君?」
「ピアノを比叡君がレンタルするなら、その場所を空けて置かないと行けないし、そうで無ければ、一旦片付けたいのだが?」
「……今は、ピアノの練習より、筆記試験対策をするべきだと思いますので、筆記試験の受検終了まで、ピアノの練習は行いません……」
「……」
「そうか…!」
「まぁ、急な展開に成って、ほんとに済まんな!」
「……いえ」
……
その後は、何時の通りの晩ご飯に戻ったが、その日の味は良く覚えてない。
俺の中では、何を食べても“砂の味”がしたからだ……
晩ご飯を食べた後は、悔しさから直ぐにアパートに戻りたかったが、山本さんが居る手前それが出来ないので、後片付けを手伝い、有る程度の時間までは山本さんの家で団らん時間を過ごす。
その団らん時間の間に、俺を慰めてくれる様な声掛けは一切無かった……
これは偶然では無く、やる気で電子ピアノを撤去させるのだろう。
今回の件に対して、山本さんのおばさんは、一言も口は出さなかった……
息子が可愛いのは当然だし、息子将来の嫁を守るのは当然だ。
俺は有る程度の時間が経ったので『今日は部屋に帰ります』と周りに告げて、リビングを出た直後、稀子も出て来た……
(諸悪の根源が……)
俺はそう思いながら、稀子には気付かない振りをして玄関に向かった。
「うん…。明日にでも引き取りに来るそうだ…」
(これは冗談抜きで稀子の奴、告げ口したな……)
(明日は平日だし、相手方も山本さんの様に何かの職人なのか?)
「山本さんからの好意ですから、仕方ないと言えば仕方ないですが、俺は折角此処まで練習をして来たのですよ…」
「俺は今後、どうすれば良いのですか……」
俺は山本さんに、情で訴えかけて見る事にしてみたが……
「それは本当に済まないと、僕でも思っている……」
「まぁ、それで、妥協案では無いが、比叡君が真剣にピアノの練習をしたければ、電子ピアノをレンタルする道も有る!」
「場所はこの場所を提供するが、レンタル費用は勿論、比叡君持ちだぞ……」
「電子ピアノをレンタルですか……」
「そうだ。比叡君!」
「僕も比叡君を応援しているが、金銭面での支援は出来ない」
「僕のポリシーに引っ掛かるからね!」
「こればかりは僕に知り合いは居ないから、専門のレンタル業者から借りる事に成ると思うが、今回の様なグレードを借りた場合、かなりの負担が比叡君に来るぞ……」
何故か山本さんは此処で、脅し掛けると言うか、諦めさせようとした口調で言ってきた!
山本さんが借りて来た電子ピアノは、ピアノの様に只弾くだけで無く、電子ピアノでしか出来ない機能が沢山付いている。
その電子ピアノの付加機能で、俺は此処まで練習が出来たのだから、それ位のグレードを借りないと、真面な練習は多分出来ないだろう。
「まぁ、場所は提供するから、比叡君が真剣にピアノ練習をしたければ、電子ピアノをレンタルして練習すれば良いが……鈴音を練習に付き合わせる事は、もう出来ないからな…」
「!!!」
(鈴音さんが居なければ、練習出来ないでは無いか!!)
(稀子と言い、山本さんと言い、酷すぎないか!!)
俺は恨めしそうに、山本さんをつい見てしまう!
山本さんも、それに直ぐ気付くが……
「おぃ、おぃ、比叡君……」
「その様に見られてしまうと、僕が悪者に成ってしまうではないか///」
山本さんは苦笑いしながら言うが、事実では無いか!
俺と鈴音さんとの仲を、これ以上深めさせない様に、電子ピアノを撤去するのだろうが!!
「比叡君…。これにも理由が有ってな…」
「鈴音も稀子ちゃんも、今年は受験生だ!」
「2人共、付属大学への推薦が貰えるらしいが、僕としては比叡君の練習より、鈴音には進学の方に意識を向けて貰いたい」
「大学なんぞ、現役で合格しないと意味が無いからな…」
「推薦を貰えて、入学試験に合格してからなら、比叡君の練習に付き合わせても良いが、これからの時期は絶対に駄目だ!」
「それに、電子ピアノのモードを使えば、1人で練習は出来るのだろ?」
「なぁ、比叡君……」
(外堀も埋められて、内堀も埋められたか……)
(自腹を切って電子ピアノをレンタルしても、鈴音さんが居なければ意味が無い……)
俺は鈴音さんが手助けしてくれないかと、鈴音さんの方を伺うが、鈴音さんは寂しそうな表情をしていた。
稀子は茶碗を持ったままの澄まし顔だが、顔がニヤ付いて居る様にも見えた!!
(くそ……)
(稀子と山本さんの思惑が一致してしまった……)
(レンタル費用も今から借りたら莫大に成るし、筆記試験を優先させている以上、アルバイト時間も増やせない)
(ピアノの練習は、筆記試験合格以降にするしか無いな…)
「それで、どうする。比叡君?」
「ピアノを比叡君がレンタルするなら、その場所を空けて置かないと行けないし、そうで無ければ、一旦片付けたいのだが?」
「……今は、ピアノの練習より、筆記試験対策をするべきだと思いますので、筆記試験の受検終了まで、ピアノの練習は行いません……」
「……」
「そうか…!」
「まぁ、急な展開に成って、ほんとに済まんな!」
「……いえ」
……
その後は、何時の通りの晩ご飯に戻ったが、その日の味は良く覚えてない。
俺の中では、何を食べても“砂の味”がしたからだ……
晩ご飯を食べた後は、悔しさから直ぐにアパートに戻りたかったが、山本さんが居る手前それが出来ないので、後片付けを手伝い、有る程度の時間までは山本さんの家で団らん時間を過ごす。
その団らん時間の間に、俺を慰めてくれる様な声掛けは一切無かった……
これは偶然では無く、やる気で電子ピアノを撤去させるのだろう。
今回の件に対して、山本さんのおばさんは、一言も口は出さなかった……
息子が可愛いのは当然だし、息子将来の嫁を守るのは当然だ。
俺は有る程度の時間が経ったので『今日は部屋に帰ります』と周りに告げて、リビングを出た直後、稀子も出て来た……
(諸悪の根源が……)
俺はそう思いながら、稀子には気付かない振りをして玄関に向かった。
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