偶然出会った少女にお願い事をされたから、受け入れる事にしたら人生が変わった!

小春かぜね

文字の大きさ
上 下
306 / 434
【R-15】稀子編 第2章

第304話 朗読デビュー その2

しおりを挟む
「みっ、皆さん……初めまして///」
「青柳比叡と言います……今日は、よっ、よろしくお願いします//////」

「はい。みなさん、拍手♪」

『パチ、パチ、パチ……』

 俺の挨拶の後、大丸(先生)さんが、子ども達に拍手の指示を出したが……それは余り歓迎されてない拍手で有った。
 おまけに……

「比叡君てっさ……子ども達の前なのに、あんな堅苦しい挨拶しているよ…」
「私だったら『こんにちは~~。“めるこ”と言います~~。今日は絵本の読み聞かせに来ました~~。よろしくね♪』位言うけどな……」

「めっ、稀子さん…。比叡さんに聞こえてしまいますよ//////」
「稀子さんの言っている事は、間違っては居ませんが……」

 広間と言っても十数畳の広間だから、普通の会話でも筒抜けだ!?

「では、青柳先生。絵本の朗読をお願いします」

「はっ、はい……」

(う~~、さっきの稀子の言葉で余計緊張してしまったし、それに凄く恥ずかしいよ///)
(女子はまだ良いけど、男子何か如何にも『詰まんね~~時間……』の顔をしているし!)

「えっと、では…、今日は“さるかに合戦”を読みます」

『……さるかに合戦だとよ!』

『もっと、しゃれたの持って来いよ!!』

『センスな…』

“さるかに合戦”が不服なのか、子ども達はブーイングを始める。
 ここは人魚姫にしておけば良かったか!?

「はい、はい。みんな静かに!!」
「そんな状態では、青柳先生が本を読めないでしょ!」

 大丸先生はブーイングを治めようとする

「だって、大丸先生!」
「さるかに合戦何て、とうに読み飽きたもん!!」

「拓也君、そういう事言わない!」
「青柳先生だって一生懸命練習して来たのだから、聞いて上げて!」

「ちぇ~~」

 拓也君と言う子は、不満そうに返事をする。

「すいません、青柳先生……」

 大丸先生は、俺の方に向けて頭を下げる。

「いっ、いえ、大丈夫です……」
「では……朗読を始めます」

「むかし、むかし、カキの種を拾った―――」

 ……

「うるさい、これでもくらえ。―――」

 ……

(物語も中盤に入ったのに、誰も真剣に聞いていない!?)
(真面に聞いているのは低学年の男女だけだ!!)

(高学年に至っては隣同士で話をしたり、1人遊びをしたりしていて話を全く聞いていない!!)
(同じ話でも、稀子や鈴音さんは相づちをしてくれて、面白そうに聞いてくれたのに!!)

 稀子達の反応と、子ども達の反応が全く真逆で有って、俺は心の中で焦っていた!

 ……

「いたい、いたい、たすけて~~」
「―――」

 俺は感情を入り交えて、一生懸命“さるかに合戦”を朗読するが、子ども達からの強い眼差しは殆ど感じない…。俺は朗読を詩ながら稀子達の表情を伺うと……

「ん~~」
「……あの時聞いた時と何か違うよね、りんちゃん……」

「はい……」
「比叡さんきっと、緊張しているのだと思われます…」

「現実は厳しいな……」

 稀子、鈴音さん、山本さんがそれぞれ言っている。

「比叡君の読み方…。何か感情がもっていないのだよね。棒読みと言うか……」

「まぁ、今日が初日ですし、稀子さん//////」

「これじゃあ、私が読んだ方がマシだな……比叡君には悪いけど」
「私の方が、みんな振り向くと思うよ!!」

 そんな会話が微かに、俺の耳に入って来ている気がする!?

「―――」
「めでたし、めでたし、……」

『パチ……、パチ……』

 俺が読み終わると、如何にも嫌々な拍手が広間に響き渡る。
 他の指導員さん達も苦笑いの表情をしていた……

 俺の朗読デビューは、完全に失敗に終わった様だ……
 やっぱり、現実世界は厳しいな……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

貞操逆転世界なのに思ってたのとちがう?

イコ
恋愛
貞操逆転世界に憧れる主人公が転生を果たしたが、自分の理想と現実の違いに思っていたのと違うと感じる話。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです

新条 カイ
恋愛
 ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。  それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?  将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!? 婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。  ■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…) ■■

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

社長室の蜜月

ゆる
恋愛
内容紹介: 若き社長・西園寺蓮の秘書に抜擢された相沢結衣は、突然の異動に戸惑いながらも、彼の完璧主義に応えるため懸命に働く日々を送る。冷徹で近寄りがたい蓮のもとで奮闘する中、結衣は彼の意外な一面や、秘められた孤独を知り、次第に特別な絆を築いていく。 一方で、同期の嫉妬や社内の噂、さらには会社を揺るがす陰謀に巻き込まれる結衣。それでも、蓮との信頼関係を深めながら、二人は困難を乗り越えようとする。 仕事のパートナーから始まる二人の関係は、やがて揺るぎない愛情へと発展していく――。オフィスラブならではの緊張感と温かさ、そして心揺さぶるロマンティックな展開が詰まった、大人の純愛ストーリー。

【完】夫に売られて、売られた先の旦那様に溺愛されています。

112
恋愛
夫に売られた。他所に女を作り、売人から受け取った銀貨の入った小袋を懐に入れて、出ていった。呆気ない別れだった。  ローズ・クローは、元々公爵令嬢だった。夫、だった人物は男爵の三男。到底釣合うはずがなく、手に手を取って家を出た。いわゆる駆け落ち婚だった。  ローズは夫を信じ切っていた。金が尽き、宝石を差し出しても、夫は自分を愛していると信じて疑わなかった。 ※完結しました。ありがとうございました。

俺を信じろ〜財閥俺様御曹司とのニューヨークでの熱い夜

ラヴ KAZU
恋愛
二年間付き合った恋人に振られた亜紀は傷心旅行でニューヨークへ旅立つ。 そこで東條ホールディングス社長東條理樹にはじめてを捧げてしまう。結婚を約束するも日本に戻ると連絡を貰えず、会社へ乗り込むも、 理樹は亜紀の父親の会社を倒産に追い込んだ東條財閥東條理三郎の息子だった。 しかも理樹には婚約者がいたのである。 全てを捧げた相手の真実を知り翻弄される亜紀。 二人は結婚出来るのであろうか。

溺婚

明日葉
恋愛
 香月絢佳、37歳、独身。晩婚化が進んでいるとはいえ、さすがにもう、無理かなぁ、と残念には思うが焦る気にもならず。まあ、恋愛体質じゃないし、と。  以前階段落ちから助けてくれたイケメンに、馴染みの店で再会するものの、この状況では向こうの印象がよろしいはずもないしと期待もしなかったのだが。  イケメン、天羽疾矢はどうやら絢佳に惹かれてしまったようで。 「歳も歳だし、とりあえず試してみたら?こわいの?」と、挑発されればつい、売り言葉に買い言葉。  何がどうしてこうなった?  平凡に生きたい、でもま、老後に1人は嫌だなぁ、くらいに構えた恋愛偏差値最底辺の絢佳と、こう見えて仕事人間のイケメン疾矢。振り回しているのは果たしてどっちで、振り回されてるのは、果たしてどっち?

処理中です...